9日の日曜日に「国際フォーラム」の「ホールA」で開催された上原ひろみさんの「Hiromi's Sonicbloom JAPAN TOUR 2007」と題されたコンサートに行ってきました。昨年は「ホールC」で観ましたが、そのときも相当なプラチナ・チケットだったため、今回は5000人収容の「ホールA」となりました。それでも発売直後にソールドアウトになったそうです。上原さんの人気にはいまや凄まじいものがあります。
デビュー直後に渋谷の「JZ Blat」で聴いたことを考えると、あっという間にここまで来た感じです。それもこれも、上原さんの傑出した音楽性がこの人気を呼び起こしたのでしょう。とにかく、40年以上ジャズを聴いてきたぼくが彼女のプレイにわくわくするんですから。
今回はこれまでのトリオから離れ、デビュー作の『アナザー・マインド』にも1曲参加していたギタリスト、デビッド・フュージンスキーを加えたカルテットでのステージとなりました。ずいぶん前の話ですが、フュージンスキーは、ぼくがプロデュースしたアダム・ホルツマンと組んでテレビの仕事をしていたり、そのころに覗いたレコーディング(『チャートバスターズ』)で本人に紹介されて、いつか彼のアルバムを作りたいなぁと思っていたギタリストです。
当時とはだいぶイメージが違っていましたが、ツイン・ネックのギターを持って超絶的なテクニックでばりばり弾きまくる姿からは、マハヴィシュヌ・オーケストラを率いていたジョン・マクラフリンの姿を思い浮かべました。
そしてこのギタリストが加わったことで、上原さんの音楽もさらにパワフルなものになっていました。今回のツアーは、同じメンバーでレコーディングされた最新作『タイム・コントロール』に合わせてのものです。何度もアルバムを聴いていたので、内容も予測はできていました。それでも実際にライヴで同じ曲を聴くと、上原さんの意図していたものがもっと明確に感じられてきます。そこがライヴの面白さでもあるんでしょう。
『タイム・コントロール』は、上原さんがギター・ミュージックをやってみたくて作ったもののように思えてきました。それくらいフュージンスキーのプレイが重視されていますし、ギターのこと、とくに彼のスタイルがわかっていないと作れないメロディ・ラインやサウンドのオン・パレードになっています。
ちなみに、手渡されたセット・リストはこんなものです。
『タイム・コントロール』以外の作品で発表された曲も演奏されていますが、それらもすべてフュージンスキーが加わったことで新しい魅力を獲得していました。いつものメンバーであるベースのトニー・グレイとドラムスのマーティン・ヴァリホラもパワーアップしていて、現代版のマハヴィシュヌ・オーケストラを観たような気になりました。
上原さんはフランク・ザッパが大好きだそうです。それだけに、ライヴはマザーズ・オブ・インヴェンションにもどことなく通じた音楽だったかもしれません。もちろん、上原さんがマハヴィシュヌ・オーケストラやマザーズ・オブ・インヴェンションを意識しているかどうかは知りません。ぼくにはそう聴けたというだけのことです。
彼女はぼくの娘と同じ年齢ですが、この世代の女性はいいですね。好きなことを好きなようにやれる世代といえばいいでしょうか? 旧世代のしがらみがなくて、それでいて旧世代が残したことにも新鮮な目を向けることができる。そんなことを、感じさせてくれるライヴでした。
ところで、1月には上原さんがチック・コリアと「ブルーノート東京」で共演したライヴ盤が早くも発売されます。ぼくもそのステージを観せてもらい、そのときの模様はこのブログで紹介しました。そんなことからライナーノーツを書くことになりましたが、この2枚組がまた最高に素晴らしい出来映えです。初回版にはライヴ映像を収録したDVDも特典でつくそうです。それにしても、毎月連続して新作をリリースしているチックの充実にもびっくりです。