招待券をもらったので、先週ようやく観てきました。1作目がとても気に入ったので、早く観たかった映画のひとつです。これで気分が落ち着きました。ストーリーは最初から予測がつくものでしたが、1作目同様に引きずり込まれてしまいました。今回は、毎週一度は通る日本橋も出てきますし、前作以上に身近に感じられました。
舞台は、ぼくがリアルタイムで体験した時代の東京ですし、映画に登場する少年たちと世代もほとんど同じです。昔は、みんな着ているものが小汚かったです。ぼくは渋谷の道玄坂で育ちましたが、映画の舞台は、東京タワーが見える大通りの感じからして、三田3丁目あたりかな、と考えています。都電も通っていましたし、あのあたりには自動車の修理工場も結構あったように記憶しています。
いまはその近くに住んでいて、三田3丁目のある桜田通りは毎日のように歩いています。それも親しみを感じさせる要因のひとつです。映画は実在した街を再現しているわけじゃありません。でもこういう雰囲気というか空気感はあったよな、とさまざまな場面を観ながら懐かしい気持ちに浸りました。
この映画、時代考証は必ずしも正確じゃありませんが、当時のことを思い出させてくれた点でおおいに楽しめました。あのころの自動車もいろいろ登場してきますし。こういうのはあちこちのコレクターが提供してくれたみたいです。ひとつ気がついたのは、タクシーが少ないことです。乗用車のコレクターはいても、タクシーまでコレクションしているひとはあまりいないってことでしょう。
同じ時代の作品としては、この間の土曜と日曜に放送された『点と線』も堪能させてもらいました。ただし、こちらは「時代考証をきちんとした」と謳っていた割に、服装が駄目でした。高橋克典があまりにもばりっとしすぎています。あんなにかっこいいスーツなんて、あの時代にはありません。それが最初に気になったら、最後までそのことを引きずってしまいました。
とにかく登場人物、とくに男性の服装が昭和30年代のものとは思えません。細身のネクタイや高級そうなワイシャツ、スーツもそうですが、あの時代はもっと野暮ったかったです。デザインなどと呼べる代物じゃなかったですから。しかも、差別するわけじゃありませんが、給料がそんなにいいとは思えない刑事ですからね。おしゃれな刑事もいたでしょうが、センスがあまりにも現代的です。
こういうのは、列車や街並みや車に凝るより簡単なだけに、そこが残念でした。あの時代の男性は帽子をかぶっているひとが多かったですが、街中のシーンで帽子をかぶっているひとがほとんど出てきません。これはディテールに凝る以前のことでしょう。
話は飛びますが、ぼくが素晴らしいと思ったのは、映画の『ドリームガールズ』です。登場する人物が、みんな1960年代の黒人顔をしていましたから。ビヨンセだって、映画の中でスターになる以前の顔は、ほんと、1960年代の田舎に居たような娘顔をしています。
エディ・マーフィーがまったく60年代顔になっていたことにも驚かされましたし、ファッションはややいま風なところもありましたが、ぼくのイメージする時代がかなりそのままの感じで映し出されていました。あと、『Ray』もそうだっだですね。この間の『グッド・シェパード』も服装を見ているだけで、時代の推移がほぼわかるようになっていました。
『3丁目の夕日』は、その点でもあまり違和感を覚えませんでした。どうも子役に目が向かってしまうのですが、汚くて痩せていて、ぼくの周りにもああいう子供だらけでした。登場する大人にもそういうところがあって、貧しい時代を感じさせました。
ところが同じ貧しい時代を描いた『点と線』では、いくらセリフのはしばしでそういうことが語られても、登場人物からそのことがあまり伝ってこなかったですね。あと、女優さんたちの眉毛もいま風でした。もっと昔は不細工だったんですけど。
いまでもたくさんのひとが健在な時代の再現ドラマは作るのが大変だと思います。『点と線』ですが、重厚な作品という点では見ごたえがありました。西村京太郎をはじめ、日本のミステリーの原点がここにあるんでしょう。
それから、どちらの作品でも、まだ戦争を引きずっている時代だったことが描かれていました。しつこいですが、『点と線』ではそのことが強調されていたので、まるで著名なデザイナーがカッティングしたようなデザインで、生地もよさそうなスーツを着こなしていた高橋克典演じる刑事に違和感を覚えました。
ぼくは1960年代に興味があって、いつかその時代のことを本にしたいと思っています。そういう時代の社会現象をテーマにした映画やドラマがこれからもいろいろと出てきたら楽しいと思いませんか?