昨日は、銀座にあるバー「le sept」で「ONGAKUゼミナール」をやってきました。今回のテーマは「シネ・ジャズ」。映画に使われたジャズ特集です。ご来場のみなさん、どうもありがとうございました。いつもと同じで、出たとこ勝負のいきあたりばったり。口から出まかせのいい加減な話で、どうもすいませんでした。
それでシネ・ジャズですが、ぼくの場合、一番最初にイメージされるのはマイルス・デイヴィスの『死刑台のエレヴェーター』です。
そういうわけで、この映画を最初のほうに持ってきて、その時代のフランス映画、いわゆるヌーヴェルバーグの作品で使われたジャズをいくつか紹介しました。1950年代後半のフランス映画では、『死刑台のエレヴェーター』のルイ・マルをはじめ、ロジェ・ヴァディム、エドゥアール・モリナロなど、才気に溢れる監督がたくさんいました。彼らが好んで自分の映画音楽にジャズ・ミュージシャンを起用したのは、日本と同じで、この時期の文化人と呼ばれるフランスのひとたちが、ジャズの面白さや奥深さに目覚めたからです。
フランスでモダンジャズが大ブームになるのは、1958年にジャズ・メッセンジャーズが渡欧し、吹き込んだばかりの「モーニン」他を演奏したのがきっかけといわれています。ぼくはその場に居たわけじゃないからわかりませんが、同じ現象は1961年のジャズ・メッセンジャーズ来日でも起こったようです。
そのモダン・ジャズのブームに至る前兆のひとつとして、映画でマイルスやジャズ・メッセンジャーズやモダン・ジャズ・カルテットたちの演奏が使われていた事実は見逃せません。フランス映画におけるシネ・ジャズは一種のファッションでしたが、それがモダン・ジャズ・ブームに結びついたと考えるのは私論です。(少なくとも日本では)誰もそのことをきちんとした形で紹介していないので、いずれじっくりと調べてみたいと思っています。
それで、こんな曲をみなさんと聴きました。
1. 『大運河』(フランス、1957年) 監督:ロジャ・ヴァディム
音楽:ジョン・ルイス:スリー・ウィンドウズ(モダン・ジャズ・カルテット)
2. 『死刑台のエレヴェーター』(フランス、1958年) 監督・ルイ・マル
音楽:マイルス・デイヴィス:モーテル
3. 『殺られる』(フランス、1959年) 監督:エドゥアール・モリナロ
音楽:アート・ブレイキー&ベニー・ゴルソン:マルセルのブルース(アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ)
4. 『危険な関係』(フランス、1960年) 監督:ロジェ・ヴァディム
音楽:デューク・ジョーダン:危険な関係のブルース#1
5. 『夜の豹』(アメリカ、1958年) 監督:ジョージ・シドニー
音楽:リチャード・ロジャース:マイ・ファニー・ヴァレンタイン(フランク・シナトラ)
6. 『マンハッタンの哀愁』(フランス、1965年) 監督:マルセル・カルネ
音楽:マル・ウォルドロン:オール・アローン
7. 『アルフィー』(イギリス、1966年) 監督:ルイス・ギルバート
音楽:ソニー・ロリンズ、バート・バカラック(主題歌):アルフィーのテーマII/ソニー・ロリンズ
8. 『華麗なる賭け』(アメリカ、1968年) 監督:ノーマン・ジュイソン
音楽:ミシェル・ルグラン:風のささやき
9. 『夜の大捜査線』(アメリカ、1968年) 監督:ノーマン・ジュイソン
音楽:クインシー・ジョーンズ:真夜中のバラード(レイ・チャールズ)
10. 『ビリー・ホリデイ物語』(アメリカ、1972年) 監督:シドニー・J・フューリー
グッドモーニング・ハートエイク(ダイアナ・ロス)
11. 『ラウンド・ミッドナイト』(フランス、1985年)監督:ベルトラン・タベルニエ
音楽:ハービー・ハンコック:身も心も(デクスター・ゴードン)
12. 『ラジオタウンで恋をして』(1990年、アメリカ)監督:ジョン・アミエル
音楽:ウイントン・マルサリス:ビッグ・トラブル・イン・ジ・イージー
13. 『モ・ベター・ブルース』(1990年、アメリカ) 監督:スパイク・リー
音楽:ビル・リー:セイ・ヘイ(ブランフォード・マルサリス+テレンス・ブランチャード)
14. 『恋のゆくえ~ファビュラス・ベイカー・ボーイズ』(1989年、アメリカ) 監督:シドニー・ポラック
音楽:デイヴ・グルーシン:メイキン・ウーピー(ミシェル・ファイファー)
15. 『ゴッド・ファーザー・パート3』(アメリカ、1990年) 監督:フランシス・フォード・コッポラ
音楽:ニノ・ロータ、カーマイン・コッポラ:ゴッド・ファーザー・パート3 愛のテーマ(プロミス・ミー・ユール・リメンバー)(ハリー・コニック・ジュニア)
16. 『フォー・ザ・ボーイズ』(1991年、アメリカ) 監督:マーク・ライデル
音楽:デイヴ・グルーシン:ベイビー、外は寒いよ(ベット・ミドラー+ジェームス・カーン)
現在ジャズの世界でスタンダードと呼ばれている大半の曲は、映画やミュージカルのために書かれた曲です。昨日は、それとはちょっと違って、ジャズ・ミュージシャンが書き下ろしたオリジナルを中心に聴いてもらいました。
次回は、2008年の2月を予定しています。バレンタイン・デイのあとですが、「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」など、バラードの名演・名唱を集めた特集にしようかと考えています。