ぼくは本来取材する側なんですが、この1ヵ月くらいの間に3本の取材を受けました。ひとつは、少し前に紹介した『スイングジャーナル』誌の増刊号用のもので、これは取材といっても原稿は自分で書いているので、ちょっと意味合いが違うかもしれません。
その次が、共同通信社が11月30日に発売する『AUDIO BASIC』というMOOKのためのものです。
担当者から以下のメールをいただき、応じたものです。
弊社では11月30日にアナログ・レコード再生と真空管アンプを中心にしたMOOKを発売します。その中で、「アナログ・レコードの愉しみ」(仮題)という人物訪問のページがございます。アナログ・レコードで音楽を存分に楽しんでいらっしゃる方のインタビュー・ページです。
メールを差し上げたのは、小川さんにそこでご登場いただけないかと思ったからです。小川さんは著名なジャズ評論家であると同時に貴重なレコードのコレクターでもあるとお聞きしました。何枚か大事にされている盤を紹介していただき、アナログ盤への愛情を語っていただけないかというのが企画の趣旨です。
「著名なジャズ評論家」というところでずっこけましたが、これは社交辞令と受け取っておきましょう。それで、取材当日、インタヴューアーとカメラマンと、このメールを送ってくれた編集者がやってきました。
編集者のかたとは初めてお会いしましたが、インタヴューアーは昔からの知人ですし、カメラマンは『愛しのジャズメン 2』でも紹介した人物です。「マイルスに手袋をはめたまま握手をした失敬なヤツ」と書けば、わかるひとにはわかるでしょう。
そういうわけで、取材と称して、ぼくのレコードを引っ掻き回しにきたようなものです。写真はインタヴューのフリをしているものです。カメラマン氏はレコード・コレクターでもあるので、「珍しいものを見せろ」と撮影にかこつけていろいろ要求し、挙句の果てには結局、「これ売ってくれない?」みたいなことに終始しました。
でも、持つべきものは友です。彼らのようなひとたちにもぼくは支えられているんだなとつくづく思いました。
さて、もうひとつの取材は明日受けることになっています。これは平凡社新書で出した『マイルス・デイヴィスとは誰か』についての取材申し込みでした。日経新聞のメール・マガジン『NIKKEI NET』からの依頼で、このニュース・サイトは1日に1500万アクセスもあるといいます(本当かな?)。
ただし、ぼくのインタヴューが掲載されるのは、その中の『日経WagaMaga』という大人向けサイトだそうです。どうして平野さんじゃなくてぼく? と思った疑問がこれで解決しました。大人向けっていうのは、団塊の世代向けっていうことなんでしょう。となれば、ぼくの出番です。
内容は、本で紹介されている21人から5人のプレイヤーを選び
①そのプレイヤーとマイルスの関係、エピソード
②マイルスの音楽にどのような影響を与えたか
③そのひとにかかわりのある、マイルスのおすすめアルバムを語る
というものだそうです。
どんなインタヴューになるのか? この間のラジオやイヴェントみたいにひとりで話すのは苦手ですが、相手がいればいくらでも喋れます。話し過ぎないように注意しなければ、といったところでしょうか。
ぼくのことが雑誌に掲載されたり、本が出たりすると一番喜んでくれるのが母親です。年老いて、普段は生きる気力もないようなことを口にする母親ですが、それでもぼくのことが紹介された雑誌や本を見ると、数日間は元気になります。
取材をするのは得意でも、受けることに違和感を覚えるぼくですが、母親の喜ぶ顔が見たくて、せっかくのチャンスは有り難く受けることにしています。単行本を節操なく出し続けている一番の理由も同じです。極私的なことにつき合わされる読者のかたは迷惑でしょうが、母親あってのぼくなので、ご勘弁ください。
12月は、お陰で彼女の嬉しそうな顔が連続して見られることでしょう。楽しみはいろいろあるんですが、こういうのもぼくの中では結構大きいんですよ。