『愛しのジャズメン 2』に続いて平凡社新書から平野啓一郎さんとの共著『マイルス・デイヴィスとは誰か──「ジャズの帝王」を巡る21人』が出版されます。こちらは9月11日ごろから書店に並ぶそうです。定価は税込み819円。新書なので単行本よりは安いですし、比較的あちこちの書店に並ぶと思いますので、見つけたらお手にとってご覧ください。
早いもので平野さんとの対談集『TALKIN' ジャズx文学』が出てから2年が過ぎようとしています。あのときに語り足りなかった思いもあって、今回は「マイルスを巡る21人」について、平野さんと分担執筆し、後半部分に対談を収録しました。
以下は出版社が作った【宣伝文】と【目次】です。
マイルス・デイヴィスは、常に新しいジャズを創造し、同時に多くのミュージシャンを育てた、まさに“ワン・アンド・オンリー”の存在である。
彼を通して、20世紀後半のアメリカの音楽状況、黒人の位置、そして創造者の条件が浮かび上がってくる。
パーカー、コルトレーン、ハンコック、ジミ・ヘンドリックス、マイケル・ジャクソンら、21人から迫る「帝王」の真実。
ジャズが大好きな若き作家とマイルスに8度インタヴューしたジャズ・ジャーナリストの画期的コラボレーション。
【目次】
第一部 マイルスと21人のアーティスト
1チャーリー・パーカー ──最初にして最大の“師”(小川隆夫)
2ディジー・ガレスピー──目標としたトランペッター(小川隆夫)
3ソニー・ロリンズ──グループに入れそこなったテナー奏者(小川隆夫)
4ジョン・コルトレーン───過剰なる“ビバップの亡霊”(平野啓一郎)
5シュガー・レイ・ロビンソン──パーカーに替わる兄貴分(平野啓一郎)
6テオ・マセロ──マイルスのテープにはさみを入れた男(小川隆夫)
7ビル・エヴァンス──クラシックとモード・ジャズの関係(小川隆夫)
8ハービー・ハンコック──“黄金のクインテット”の弁証法(平野啓一郎)
9トニー・ウィリアムス──リズムという名の魔物 (平野啓一郎)
10ウェイン・ショーター──こいつがいればオレは何もいらない(小川隆夫)
11ジミ・ヘンドリックス──ロック/ギター/黒人(平野啓一郎)
12キース・ジャレット──もう一度共演したかったピアニスト(小川隆夫)
13ジョン・マクラフリン──ロックのアクセス・ポイント(平野啓一郎)
14カルロス・サンタナ──マイルスをロックで演奏する(小川隆夫)
15カールハインツ・シュトックハウゼン──同時代の“クラシック”(平野啓一郎)
16ウイントン・マルサリス──可愛い造反分子(小川隆夫)
17マイケル・ジャクソン&クインシー・ジョーンズ──八〇年代アメリカで黒人であるということ(平野啓一郎)
18ジョー・ゲルバード──絵画における共同制作者(平野啓一郎)
19プリンス──帝王と貴公子の幻の共演(小川隆夫)
20マーカス・ミラー──プロデューサー時代からサンプリング時代へ(平野啓一郎)
第二部 マイルス・デイヴィス──「自由」の探求(対談:小川隆夫/平野啓一郎)
ワン・アンド・オンリーの存在/求めるものは常に自由/白人音楽にアプローチして、自分を変えていく/マイルスの黒人意識、ウイントンの黒人意識/シュトックハウゼン→ウェザー・リポート/ジャズとロックの橋=マクラフリン/クロスオーヴァーとバンドの解体/“黄金のクインテット”とは/若手との共同作業/なぜマイルス・バンドに入ると成長するのか/永遠の未完へ
この本を作って、平野さんが天才であることを改めて思い知りました。ぼくの文章や話していることに新鮮なものはほとんどないんですが、平野さんの文章と言葉はどれも刺激的です。おおいに触発されましたし、啓蒙されました。
自分の息子のような世代の平野さんに学ぶものが多かったということです。情けないしみっともないですが、恥を忍んで本音を言えば、そういうことです。でも、いつも平野さんと話したあとに感じるんですが、ぼくはとても嬉しいです。若いひとから学べるチャンスなんて、この年になるとそうそうあることじゃありません。
もう手遅れかもしれませんが、それでもぼくにだって残された時間でまだ何かできることがあるかもしれない――そんなことを考えさせてくれるひとと出会えたことに幸せを感じています。ぼくが書いた部分は飛ばしてもいいですから、ぜひ平野さんの文書と言葉をお読みください。それだけでも、この金額なら安いと思います。