【お知らせ】
18日(土)ですが、『サントリー・サタデイ・ウエイティング・バー AVANTI』(東京FM他全国37局ネット 17:00~17:55)に出演します。出ずっぱりではなく、どこかのコーナーに出る予定です。お時間があればぜひお聴きください。
ジャズ・ファンならトロンボーン奏者の中川英二郎さんをご存知だと思います。16歳でCDデビューをしたのが15年前のことです。その『中川英二郎&FUNK'55』には正直いってびっくりしました。アメリカでは10代の天才的なジャズ・ミュージシャンが何人かデビューしていたんですが、日本にもこんなに凄い少年がいたのかとあっけにとられたことを思い出します。
その中川さんが、今回はニューヨークで結成されたスーパー・トロンボーンのメンバーとなってレコーディングに参加しました。これは9月からスタートする日本の新レーベル、BYRDS RECORDSの第二弾として10月に発売されます。題して『スーパー・トロンボーン/A列車で行こう~プレイズ・エリントン』。
そのアルバムのライナーノーツを頼まれたので、それならせっかくだから中川さんにお話をうかがって原稿を書こうと思い立ち、おとといお会いしてきました。
スーパー・トロンボーンは、日本でもアメリカでも過小評価されているトロンボーン奏者のジム・ピューが中心になって、日本のレコード会社の企画で1995年に結成されました。今回が6作目です。トロンボーンは4人で、ジム・ピューと中川さん以外は、デイヴ・バージェロンとデイヴ・テイラーです。
デイヴ・バージェロンはギル・エヴァンスのオーケストラや、ハワード・ジョンソン(といっても知らないひとが多いと思いますが)が結成したグラヴィティ(これを知っていたらエライ!)のメンバーだったので、留学時代に知り合いました。
そんなことはどうでもいいんですが、中川さん、いつの間にか立派な大人になっていました。当然ですよね。ぼくが観たのはデビュー直後のライヴで、その後も何度かお見受けはしたのですが、インタヴューをするのは今回が初めてでした。
15年前はぽっちゃりした高校生でした。その中川さんが、いまでは体が引き締まり、まるで歌舞伎役者のようにきりりとした顔立ちになっていました。
スーパー・トロンボーンはレコーディングのために結成されているようなもので、ほとんど実態はありません。それでも新メンバーに中川さんが入れば、来日コンサートの可能性も見えてきます。トロンボーンはジャズの楽器として、トランペットやサックスより層が薄いし、注目度も低いのが現実です。しかし素晴らしいプレイヤーはたくさんいます。中川さんもそのひとりです。
インタヴューをして初めて知ったのですが、中川さんは数年前にグリーン・カードを取得して、ニューヨークのミュージシャン・ユニオンに加入し、向こうでもスタジオ・ミュージシャンとして活動しているんですね。これって凄いことです。いまは引き払ってしまったそうですが、西57丁目にアパートを借りていた時期もあったそうです。
このレコーディングのときも、終わったあとジム・ピューに頼まれて、トニー賞(ブロードウェイのアカデミー賞みたいなもの、知ってますよね?)の表彰式で流すミュージカルなんかの音楽のダイジェスト版を演奏したそうです。
日本とアメリカを行ったりきたりしながら仕事をする。そういうひともいまでは珍しくありません。それでも、ジャズの世界では、本当の意味できちんとお金になる仕事が日米でできているひとはほとんどいません。ビザの問題もありますし、言葉の壁もあります。
ぼくもアメリカでプロデューサーをやっていたので、その苦労が大変なことはわかっているつもりです。でも、中川さんなら苦もなくスマートにこなしていることでしょう。そういうひとたちがジャズの世界でもっとたくさん出てきたらいいなぁと思ったおとといの午後でした。