
昨日は、マンハッタン・トランスファーが東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団をバックに渋谷文化村の「オーチャード・ホール」で行なった「一夜限りのプレミア・コンサート」を聴いてきました。
これまで何度も彼らのライヴは聴いています。ニューヨークの「ブルーノート」で開いた初のクラヴ・ギグも観ていますし、東京の「ブルーノート」でも一番最近は昨年のライヴを観させてもらいました。いつもはコンサート・ホールでしか観られなかったマンハッタン・トランスファーのライヴがジャズ・クラブで観られる。これも贅沢なことですが、昨日のシンフォニー・コンサートは贅沢度でいうならそれ以上でしょう。
ステージにはどのくらいのミュージシャンがいたんでしょう? ストリング・オーケストラが両脇にいて、後方にブラス・セクション、その前にマンハッタン・トランスファーのバック・バンドが位置しています。50人以上はいたんじゃないでしょうか?

コンサートは「ルート66」から始まりました。曲によっては、いつものバンドだけが伴奏に回るものもありましたが、生で聴く弦の響きはいいですね。シンセサイザーでストリングスの音を出すのとは大違い。深みもあれば厚みもあります。4人のメンバーも心からそのサウンドを楽しんでいる様子で、こちらもいつにない贅沢な時間が過ごせました。

マンハッタン・トランスファーは、昨年『ザ・シンフォニー・セッションズ』というアルバムを出しました。これが現在のところ彼らの最新作です。そちらはプラハのシンフォニーとの共演でした。プラハはクラシックの街ですから、いいストリングスが多いそうです。ピアニストの木住野佳子さんも『プラハ』で同地のストリングスとレコーディングしていますが、そのコーディネーションをしたプラハ出身のベーシスト、ジョージ・ムラツがそう教えてくれたことがあります。
マンハッタン・トランスファーを初めて聴いたのは20年くらい前でしょうか? 1969年に結成されたときは5人組で、キャピトルから1枚アルバムを出しましたが、これはまったく受けずに終わっています。それで翌年解散し、リーダーのティム・ハウザーはニューヨークでタクシーの運転手をしながらチャンスを待ちます。
その後にローレル・マッセイ、ジャニス・シーガル、そしてアラン・ポールを順にスカウトして、現在のスタイルが完成しました。レコード・デビューは1974年で、79年にはローレルが抜け、いまのメンバーであるシェリル・ベンティーンが参加してきます。
そういえば、シェリルがコロムビアからソロ・アルバムを出したときに、ニューヨークの超モダンなホテルのバーでインタヴューしたことがあります。ジャニスにも何度かインタヴューしていますし、4人纏めてインタヴューしたときは、ぼくの前でアカペラ(あたり前ですが)で「ルート66」を歌ってくれました。

4人に囲まれて幸福そうな顔をしているのは、その歌を聴いたあとに写してもらったからです。その「ルート66」からコンサートが始まったので、ぼくは最初からノックアウトされてしまいました。それにしてもなんとゴージャスなコンサートだったことか。しかもアンコールはぼくが大好きなビートルズの「グッド・ナイト」。本当に最後までいい気持ちにさせてくれました。

アンコールはこの1曲だけです。ぼくはへそ曲がりのせいか、気持ちのいいコンサートでアンコールは何曲も聴きたくありません。1曲で十分。それでいい気持ちで家に帰れます。3曲も4曲もアンコールをするのは、昨日のようなコンサートでは野暮というものです。ストーンズじゃないんですから。
しかも、コンサートはアンコールも含めて、途中の休憩なしで1時間半。実にスマートじゃありませんか。こういうのが大人のコンサートだと思います。長ければいいってものじゃないんです。おいしい物だってお腹がいっぱいになるまで食べたら飽きてしまいます。余韻を残して終わる。ステージ同様、最後まで粋なマンハッタン・トランスファーでした。