少し先の話ですが、10月にThe Quartetの来日公演が行なわれます。メンバーはハービー・ハンコック、ウエイン・ショーター、ロン・カーター、そしてジャック・デジョネット。もうおわかりでしょうが、マイルス・デイヴィスのバンドにいた面々です。本来ならトニー・ウィリアムスを入れたいところですが、彼はこの世にいないため、デジョネットが参加することになりました。
photo by Martin Schoeller
このカルテット、ステージではマイルスにトリビュートする演奏を聴かせてくれることになっています。V.S.O.P.クインテットを連想させる今回のグループは、知る限りで初めての顔合わせです。4人による、ありそうでなかったグループが日本公演のためだけに結成されます。ぼくはこの企画を知らされて、胸が高鳴りました。
そして大変光栄なことですが、コンサートを企画しているJECから、イヴェントに関するアドヴァイザーになってほしいとの依頼を受けました。アドヴァイザーといっても、何をやったらいいのかわかりません。とりあえず、宣伝部長のようなものでしょうか? JECとしてはあちこちの媒体にコンサートの告知を露出したいわけですから、そのお手伝いをすることになるようです。
コンサートは先のことですし、チケットも先行発売はされていますが、一般発売は6月1日からです。それで、まずは知り合いの雑誌編集者やいくつかの媒体を紹介しました。小僧comにも話を持っていきました。小僧comもジャズ絡みのイヴェントをやりたい希望がありますから、うまく連動できればいいなぁという思惑からです。
そういうわけで、小僧comで企画が決まりました。最終日となる東京公演の2日目(10月19日)ですが、ぼくのレクチャーつきでコンサートを観よう、という内容です。コンサート前に会場近くで30分ほど、コンサートのことやメンバーのことをお話して、終了後はやはり近くの手ごろなお店でオフ会(任意・飲食代別)のようなことをします。
こちらは定員10名ほどを予定していて、すでに小僧comで募集中です。S席チケット(11000円)込みで16000円(税・送料含む)だそうです。それと小僧comでは一般チケットも取り扱っています。 もちろんJECでも先行発売しています。そちらは左側にあるTHE QUARTETのバナーをクリックすればリンクできるようになっています。
今日は宣伝部長ということで、目いっぱい宣伝させていただきました。今後も、コンサートまで、何度か最新情報などをアップしていこうと思っています。
以下は、ぼくが書いたプレス・リリースです。
■The Quartetプレス・リリース
1976年6月、ピアニストのハービー・ハンコックが中心となってたった1回のコンサートのためにグループが結成された。話題は、メンバー5人のうち4人までがかつてマイルス・デイヴィスのクインテットで活躍したミュージシャンだったことだ。その4人とは、ハービー・ハンコック(p)、ウエイン・ショーター(sax)、ロン・カーター(b)、トニー・ウィリアムス(ds)である。
彼らが久々にコンサートで顔を合わせるというのだから反響は大きかった。ここにマイルスが加われば、1960年代のマイルス・クインテットが再現される。実は当初、コンサートには彼も加わるはずだった。しかしこれは直前になってキャンセルされてしまう。代わってステージに登場したのは, マイルスと当時人気を二分していたフレディ・ハバード(tp)である。
5人によるライヴは、先に書いたとおり1回だけの予定だった。そのことから、グループは「Very Special One-time Performance」、すなわちV.S.O.P.クインテットと呼ばれるようになった。ところがこのときのライヴは世界的な話題を呼び、結局1977年と79年に同じメンバーでワールド・ツアーが敢行される。
1980年代にはウイントン・マルサリスを迎えたV.S.O.P.IIも結成された。そして1992年には、トランペッターをウォレス・ルーニーに代えてのV.S.O.P.クインテットが再編されている。前年にマイルスがこの世を去ったことから、このときは「トリビュート・トゥ・マイルス・デイヴィス」のサブ・タイトルがつけられていた。
1940年代から常にジャズ・シーンをリードし、ポピュラー音楽に多大な影響をおよぼしてきたマイルス。彼の存在は、とりわけV.S.O.P.クインテットの面々にとって大きなものだった。このクインテットがマイルスの音楽を出発点に結成されたことは明白だ。マイルスに育てられた4人は、その後いずれもがジャズ界の実力派スターに育っていく。そして現在、4人のうちトニー・ウィリアムスはすでにこの世にいない。
残された3人に、ウィリアムスの後任としてマイルスのクインテットに加わったジャック・デジョネットを迎え、今回日本でのみの特別コンサートが開催される。The Quartetと名乗るグループの面々は、いまや「生きる伝説」と呼ぶに相応しいミュージシャンになった。しかしこの「生きる伝説」は過去の栄光にすがっている類のひとたちとはまったく違う。いまも最前線にいて、もっとも新しいジャズをクリエイトしているからだ。
思えば、マイルスもこの世を去る直前まで誰もおよぶことができないほど高いクリエイティヴィティを発揮していた。そんな彼と同じポジションにいるのがThe Quartetの4人である。マイルスの遺伝子は彼らによってしっかりと受け継がれている。そして、2007年10月、日本で彼らがマイルスに捧げるコンサートを開く。ここから新しい伝説が始まることは間違いない。(小川隆夫:音楽ジャーナリスト)