
東京もそうですが、ニューヨークも各種のフリー・ペーパーがあちこちで入手できます。日本語のフリー・ペーパーにしても、日刊と週刊を合わせれば10種類はくだらないでしょう。もちろん、ネットでもテレビでも日本のニュースや番組は見ることができます。25年前の留学時代に比べると、ずいぶん便利になったものです。
ジャズの情報にしても、当時は週間新聞の『VILLAGE VOICE』の広告を手がかりにしていただけです。帰国するしばらく前から『HOT HOUSE』という月刊の小冊子が刊行されるようになって、ぐっと便利になりましたが。
最近ではこれら2誌に加えて、新聞タイプの『all about jazz』と雑誌タイプの『NEW YORK JAZZ GUIDE』も発刊されています。ニューヨークを旅行をするひとも多いですし、その間にジャズを楽しもうというひともいるでしょう。限られた時間内で最大限にジャズを楽しむためには、取り合えず情報を仕入れることです。そのためには、こうした無料の情報誌が役立つでしょう。

ぼくの場合、ニューヨークに着いたらまず『VILLAGE VOICE』を手に入れます。水曜日に発刊される週間新聞で、ご存知の方も多いと思いますが、これは音楽情報誌ではなく、一種のカルチャー・マガジンです。
この『VILLAGE VOICE』、ぼくが住んでいたころは一部75セントでした。その後1ドル50セントまで値上がりしましたが、現在は無料です。街を歩けば、あちこちに写真のような赤いボックスが設置されています。あとは書店やレコード店をはじめ、さまざまなショップでも入手可能です。そういうわけで、ニューヨークに着いたらとりあえず『VILAGGE VOICE』をチェック、ですね。
『VILLAGE VOICE』は60年代のヒッピー文化から生まれたアングラ週刊誌が出発点です。それがいまでは政治・経済の論評から幅広い文化の紹介まで、若者を中心にした読者向けの、ある意味でラジカルな情報誌・論評誌としての評価を獲得するまでになりました。
音楽以外にも、映画・書籍・美術・ダンス・演劇・ミュージカルなどの紹介、さらにはレストラン・ガイドからあらゆる催しの総合的な情報までを知ることができます。とくに後半に掲載されているライヴ・ハウスの広告が、ジャズに限らず音楽ファンには情報源として愛用されています。

「The BIBLE of Jazz in New York For 25 Years!」の文字が表紙を飾っているとおり、『HOT HOUSE』は今年で創刊25周年を迎えました。こちらはマンハッタンだけでなく、ニュージャージーやクイーンズなど、ニューヨーク周辺にあるジャズ・クラブのスケジュールまで網羅してます。
この雑誌は、「UPPER MANHATTAN(70丁目周辺)」、「MID-TOWN(35丁目から69丁目)」、「LOWER MANHATTAN(34丁目以南)」、「BROOKLYN/QUEENS」といった具合に、地域別にジャズ・クラブのリストとスケジュールを掲載しています。これはホテルに宿泊しているひとにとって、自分が行きやすいクラブを探すのに便利でしょう。

新聞タイプの『all about jazz』は、ライヴ情報も網羅していますが、それよりジャズ雑誌的な内容で、インタヴューやアーティスト紹介、新譜のレヴューなどが中心です。この5月号では、リチャード・エイブラムスのインタヴューが表紙と巻頭を飾っていました。こんなところもマニアックで、嬉しい限りです。
末尾にかなり小さな店までを含めたジャズ・クラブのリストがついていますから、マニアはこういうところをチェックして、知らないお店に行くこともできます。ただし毎日ライヴをやっているかどうかはわかりませんから、電話で確認したほうが無難ですね。

『NEW YOROK JAZZ GUIDE』は、『DOWNBEAT』誌と同じサイズで同じくらいの厚さのジャズ雑誌で、これが無料というのは驚きです。「The Ultimate Directory of NY Area Jazz Club, Concert & Event Listings」という文字が表紙に書かれています。こちらも、一般的なジャズ雑誌と同じようなコンテンツで、ジャズについての情報をライヴだけでなく多角的な形で得ることができます。
『all about jazz』がマニア志向なら、こちらの 『NEW YOROK JAZZ GUIDE』はメジャー志向です。ちゃーんと住み分けができているところも憎いですね。
問題は、これらの雑誌がどこで手に入るかです。『VILLAGE VOICE』は、先に書いたとおり簡単入手できます。残り3誌は、まとめてここ、という場所はないように思います。有名ジャズ・クラブに行けば『HOT HOUSE』はまず置いてあるでしょう。残りの2誌は置いてあるところもあれば、置いてないところもあります。ジャズを扱っているレコード店にも、雑誌によって置いてあるところがあります。
これもある種の出会いということで、ジャズ好きのひとならどうせあちこちに行くでしょうから、どこかでお目にかかれるに違いありません。それにしても、これだけの情報を毎月無料で配っているのですから、やっぱりニューヨークはジャズの街なんですね。
それで、来月にならないときちんと紹介はできないのですが、10月初旬にぼくがガイド役を務める「ニューヨーク・ジャズ・ツアー」の開催が決定しました。レコーディング見学、ミュージシャンの家でのティー・パーティ、バスでめぐるマンハッタン・ジャズ・ツアー(名所めぐり)などを考えています。6月10日前後には募集要項や内容がブログでお知らせできると思います。その時期にニューヨークに行こうと考えているかたは、このツアーもチェックしたらいかがでしょうか。