ニューヨークでは「Tribecca Film Festival」が開催中だったんですが、なぜかピンと来るものがひとつもありませんでした。滞在中に1本も映画を観なかったのは本当に久しぶりです。
トップの写真は、街中に設置されていた「Tribecca Film Festival」の宣伝用(?)のディレクターズ・チェアです。よく観ると、右の脚のところで何か作業しているひとがいます。それで大きさがわかるのじゃないでしょうか。
①フリーダム・ライターズ
行きはユナイテッドのワシントンD.C.直行便です。まずは、以前ニューヨークで見損なったこの映画を観ました。ヒラリー・スワンクが新任教師役を演じています。彼女の着任した高校が荒れていて、そこのまったくやる気がない生徒たちをどう導いていくかという物語です。
人種問題の根深さは、わかっているつもりでもここまで強烈な実体験がないため、改めて考えさせられます。というか、こういう状況はうんざりですね。日本の学校も酷いところは相当酷いと思います。そのことも含めて、ぼくなんかはまったく無力な人間であることを思いしらされました。
差別の気持ちはどんなひとの心の中にも多かれ少なかれあるでしょう。それが問題を難しくしているとは思うのですが、人間が存在する限り解決はされません。その中で自分はどうひとと接していくか。社会の問題ではありますが、結局はひとりひとりの心に委ねられていると思います。
②主人公は僕だった
他人の声が聞こえてきて、それによると自分が小説の主人公で、これまでその物語どおりに自分の人生が進んでいて、最後は死ぬことになっている、みたいな話です。ダスティン・ホフマンが出ているだけで選んだ映画ですが、ストーリー自体が面白くなかったです。荒唐無稽の話は世の中にいくらでもありますが、この荒唐無稽さには共感できません。
③ナイト・ミュージアム
ほかの映画を観ようと思っていたのですが、チャンネルを間違えて観始めたため、そのまま最後まで観た映画です。UAは番組の開始がOn Demandではなく、すべての映画が同時にスタートします。ですから途中で違うチャンネルに変えると、そちらも途中から観ることになります。この点、ANAはビデオと同じで、いつでも最初から観れますし、早送りや巻き戻しも可能です。
さて、この映画、つまらないだろうなと思っていましたが、結構面白くて最後まで観てしまいました。荒唐無稽もこういうのならOKです。
④デジャヴ
ここからは帰りで、ANAのニューヨーク/東京直行便を利用しました。デンゼル・ワシントンは好きな俳優のひとりです。このひとを見ると、いつもウエイン・ショーターの笑顔を思い出します。ウエインの顔を縦に引き伸ばすと、デンゼル・ワシントンの顔になる、と密かに思っているのですが。
これは面白かったですね。デンゼル・ワシントン演じる捜査官の頭の良さに最初から魅了されっぱなしでした。話は矛盾するところもある気がするのですが、そんなあら捜しは必要ありません。最初から最後まで、はらはらどきどきして観ました。ただし、結末はぼくの予想とまったく違います。
ポーラ・パットンという女優さんも魅力的ですね。でもこの映画、英語で観たら話がどこまで理解できたか自信ありません。
⑤ホリデイ
こういうラヴ・ストーリーも好きです。キャメロン・ディアスはかつてのメグ・ライアン的なポジションにいるんでしょうか。この映画でも輝いていました。そんなに美人じゃないですが、そこがまたいいですね。男優ではジュード・ロウよりジャック・ブラックに好感が持てました。キャラクターもよかったし、人相や風貌が実に好ましい感じす。
「ホーム・エクスチェンジ」は馴染みのないスタイルですが、実際、この夏休みに東京で家を交換してくれるひとを探しているニューヨーク大学のドクターがいます。そういうわけで、欧米ではわりとあることかもしれません。
ハッピーエンドで終わるふたつのカップルの話で、こういうふんわかした雰囲気にはもう少し浸っていたい気がします。この後はどうなるでしょう? 後日譚も知りたく思いました。
⑥ロッキー・ザ・ファイナル
中学のときにごく短期間ボクシング・ジムに通ったことがあるので、ボクシングは好きです。で、『ロッキー』も全部観ましたが、さすがに今回は無理が過ぎます。ですが、最後まで面白く観てしまいました。『インディ・ジョーンズ』や『ダイ・ハード』、あるいは『若大将』シリーズと同じで、展開はいつも同じです。でも今回は、試合をする必然性のお膳立てがちょっと弱かったかなと思いました。
それでも、『ロッキー』とはそういう映画ですから、これでいいんでしょう。実際、ぼくはその上映されている時間を楽しく過ごせたのですから。シルヴェスター・スタローンがやりたいことを好きにやった映画。彼の夢の実現におつき合いさせてもらった気分です。
⑦幸せのちから
行きの飛行機でも上映していたのですが、画像に酷いノイズが入るので観るのをあきらめた映画です。どんなときでも前向きな主人公は偉いと思います。でも、ぼくだったらすぐに挫折してしまうでしょう。これでもかこれでもかと窮地に立たされるたびに切り抜けるのですが、そういうのを見ていると辛くなってしまいます。
苦労の末、株式仲介の会社に就職するところで映画は終わりです。でも、その後のサクセス・ストーリーも描いてほしかったですね。しんどい生活を散々見せられ、最後は入社が決まって「はいおしまい」では、辛い気持ちだけが残ってしまいます。感動的な映画ではあったのですが。
⑧グッバイガール
これは1977年の映画です。主演はリチャード・ドレイファスとマーシャ・ネイソン。舞台はマンハッタンで、ひょんなことからアパートで同居することになった知らぬ同士の男女の物語です。ニール・サイモンの脚本ですから、小粋でユーモア・タップリのロマンティック・コメディになっています。
ドレイファスはこれでアカデミー主演男優賞を取りました。といっても大作ではなく。趣味のいい小品といった内容です。封切り時にも観た記憶がありますが、内容はまったく覚えていなかったので、新鮮な気持ちで観ることができました。ちなみに音楽はデイヴ・グルーシンが担当しています。
⑨ドリーム・ガールズ
年末にニューヨークで観ましたが、ここまで来たらいまさら寝るのも中途半端なので、ついでに観てしまいました。やはり歌うシーンは見事です。曲もいいですし、伴奏やコーラス・パートも含めてよくできた曲がどっさり含まれていますから。
劇中に「ペイオラ」という言葉が出てきます。これは、DJを買収してレコードをかけてもらうことです。この映画ではそういうシーンはありませんが、もうひとつのペイオラは、有力DJに作詞や作曲者のクレジットをあげることです。実際は曲作りに参加していないのですが、ヒットすれば印税がDJに転がり込んでくる仕組みです。それで、そのDJはせっせとそのレコードを流すことになります。
帰りの飛行時間は13時間半くらいでしたか。映画6本で12時間強です。その後も機内サーヴィスが終了するまで黒澤明の『天国と地獄』を観ていましたから、最初から最後までずっと映画のチャンネルをつけていたことになります。こんなに立て続けに映画を観たのは生まれて初めてのことでした。