しばらく前に報告した『Z』の取材ですが、本日発売の6月号(第4号)に掲載されています。最後のほうの「オシャレZ(ジー)ファイル」というページです。1ページで、写真が半分近くを占めているので、たいしたものじゃありません。ファッション雑誌ですから、それ用のインタヴューというか、ぼくのコメントが紹介されています。
こういう形で紹介されるのは複雑な気持ちです。自分の存在は知ってほしいけれど、目立ちたくない気持ちも同じくらいあります。ですから、嬉しいような恥ずかしいような、相反するふたつの思いが入り混じっています。
でもどんな形であれ、取り上げられるのは悪くないんじゃないかな、と思います。世の中で、ぼくを紹介したいひとなどまずいません。ジャズなんて、一般的に見たら超マイナーな世界です。ジャズ・ミュージシャンならいざしらず、裏方のひとりに過ぎないぼくですから、紹介してくれるひとがいるなら、こんなに嬉しいことはありません。
この『Z』、自分の年齢を改めて考えさせてくれた雑誌でもあります。取材に先立って送られてきた『第3号』をぱらぱらと眺めていたときです。相続に関するコラムが目につきました。「生前贈与についての知恵」みたいな内容です。
母親が高齢のため、ぼくも相続について考えるようになりました。それで読み始めたのですが、しばらく読んでいるうちに何かが違うことに気づきました。そこには「自分の子供に生前贈与するメリットとデメリット」が書かれていたのです。
ある意味、ショックでした。自分を相続する側としか考えていなかったからです。そりゃぁ、漠然と、自分が死んだらレコードやニューヨークのアパートはどうなるんだろう、いまのうちにきちんとしておかなくちゃ、なんていうことは考えていました。でも、まだ相続する側だとばかり思っていたんです。
「55歳以上限定」をうたい文句にしているのが『Z』です。ぼくはかろうじて資格があります。面白いのが表紙と目次です。登場する人物の年齢が名前のあとにクレジットされているからです。ぼくのところにもちゃんと年齢が書かれていました。
『Z』は、歳を取ったことを誇りにしている雑誌と受け止めました。歳を取ったからできることもあるし、楽しみもある。それを堂々と、むしろ自慢げに追求している姿勢は好ましく思います。これは、「この歳になったら自慢のひとつやふたつはなくちゃ」というぼくの考えとも一致します。
ページに使った写真はこれをトリミングしたものです
ところで『Z(ジー)』とは「お爺さん」に引っ掛けた駄洒落です。この雑誌によれば、自分の生き方をきちんと身につけている「お爺さん」を、尊敬の念を込めて「Z」と呼ぶそうです(たぶん、そんな趣旨だったと思います)。
それで、粋なお爺さんを『Z』では「粋Z」と呼びます。このネーミング、朝日新聞の日曜版に、どなたかが「ちょい悪おやじの二番煎じで、ちょっとあきれた」みたいなことを書いていました。ぼくも同感です。
昔のコマーシャルですが、インスタント・コーヒーのキャッチコピーに「違いがわかる男」というのがありました。覚えていますか? このコマーシャルを見るたび、ぼくは条件反射のように「違いがわかる男ならインスタント・コーヒーは飲まないよな」と思ったものです。それと同じで、「粋な爺さんはこういう雑誌を読むかなぁ」と疑問は感じています。
こんなことを書いてしまいましたが、『Z』の編集部ならびに編集者の皆さん、ごめんなさい。他意や悪気はまったくありませんから。インスタントコーヒーのことを書きたいがために、引き合いに出しただけです。一度でもぼくのことを取り上げてくれた雑誌は、生涯、応援し続けますから。そこらへんは義理堅いです。だって、これだけ『Z』とかけば、いい宣伝になったでしょ?