
いやぁ、びっくりしました。嬉しい驚きです。思ってもいなかった演奏が聴けたりするのですから、ライヴはやっぱりやめられません。31日、横浜にある「Motion Blue」で聴いたKANKAWAさんのステージです。
KANKAWAさんといえば、その昔、ジミー・スミスに弟子入りもした日本を代表するオルガン・プレイヤーじゃないですか。寒川敏彦をKANKAWAに変えてからは、クラブ・ミュージックやファンクなども積極的に演奏するようになっていました。しかし31日のライヴは、これまでのそうしたものを超えていたというか、ぜんぜん違う内容で驚きました。
どんな演奏をしたかといえば、『アガルタ』や『パンゲア』に通じるマイルス的な音楽です。そのために、KANKAWAさんはいつものハモンドB-3以外に、当時のマイルスが使っていたヤマハYC-10をはじめ、ワーリッツァーなどのシンセサイザー、さらにはヴォコーダーやアコースティック・ピアノなど、10台以上のキーボードを持ち込む徹底ぶりでした。

今、一番気に入っている俺のレギュラートリオの初ライブレコーディングをします。
今までオルガンを弾いてきた30年の1つの区切りをつけます。
1/31,モーションブルー、ご招待しますので、お忙しいとは思いますが、もし御都合が良かったら是非ともその場の目撃者になってもらおうかな、と連絡しました。
本気モードで行きます。
KANKAWA
本人からこんなメールをもらったら行かずにはいられないでしょう。それで、この日は7時まで人形町で本業があったため、それから車をすっ飛ばして横浜まで行ってきました。店に着いたのはセカンド・セットが始まる10分前。すぐにライヴが始まりました。
ファースト・セットでは「チュニジアの夜」や「ラヴァー・マン」など、ジャズのスタンダードを中心に演奏したようです。それで今度はちょっと変わったことをやると、ステージではKANKAWAさんが話しています。トリオと思っていたら、そのほかにギタリストとパーカッション奏者も加わっていました。
そしてやおら、強烈なビートを共に演奏が始まりました。それから1時間半近く、バンドはほとんどノン・ストップで、さまざまなリズムやビートを駆使して奔放なパフォーマンスを繰り広げたのです。キーボードを変えるたびにKANKAWAさんが指示を出しているのだと思いますが、マイルスのように音楽が次々と変わっていきます。これがまた快感です。KANKAWAさんがアコースティック・ピアノを弾いたのも初めて観ましたし、ヴォコーダーやサンプリングを使った音楽もこれまでに聴いたことがありません。
ギターかオルガンかはわかりませんが、ワウワウのサウンドはマイルスに近いものです。このバンドにマイルスが入ってもまったく違和感はありません。ただし、KANKAWAさんはマイルスだけでなくサン・ラの音楽も意識していたようです。そして、このふたりならどちらかといえばサン・ラの音楽に近いようなことをいっていました。

それにしても、こんな音楽が聴けるとは。あまりにも感激したので、気持ちを伝えたくて、終了後に楽屋を訪ねました。最近はときどきこういう音楽もやっているよとはいいながらも、地方じゃこういう音楽をやったらお客さんは入ってくれないし、「Motion Blue」は好きなことをやらせてくれるのでありがたい、みたいなことをKANKAWAさんは話していました。やっぱり「オルガン・ジャズのKANKAWA」が看板なので、こういう音楽をいつもやるのは難しいのでしょう。

しかし、このセカンド・セットがアルバム化されるかどうかはわかりません。ファースト・セットで演奏したジャズ・ナンバーをまとめたものが6月ごろに出るとの話でした。でも、KANKAWAさんはファースト・セットとセカンド・セットを『赤盤』と『青盤』みたいにして出したいとも言っていたので、ぜひ実現させてくださいと頼んできました。
とにかくこの演奏、何らかの形でいろいろなひとに聴いてもらいたいですね。そのためならいくらでも協力するつもりです。