MHR。何のことだかわからないでしょう。マイ・ヘヴィー・ローテション。誰も知らないのは当たり前。だって勝手に考えた言葉だから。これは毎日のように聴いている、お気に入りのCDやレコードのこと。で、ブログ初のMHRはアル・クーパーの『ブラック・コーヒー』。
これが実にいい。何がいいって、アル・クーパーの枯れ具合が。アル・クーパーと言えば、ぼくらの世代にとってはボブ・ディランの「ライク・ア・ローリング・ストーン」で弾いたオルガンが有名かなぁ?
あとはブルース・プロジェクト。それからBS&Tを作った人物として。たった一枚で自分は脱退してしまったけれど、BS&Tの『子供は人類の父である』は、ジャケットも含めてぼくには革命的なアルバムでした。あれを聴いて、さっそく仲間とブラス・ロックのグループを作ったけれど、結局難しくてものにならなかった苦い思い出もあります。
それから『スーパー・セッション』も画期的なアルバムでした。あれで、今度は仲間内でセッションが流行ったことも懐かしい。それにしてもミーハーですね。すぐに真似するんだから。
その後はソロ・アルバムを何枚も出して、70年代のロック・シーンをリードしたのがアル・クーパー。ロックだけでなく、ジャズやブルースからも影響を受けた音楽は、ぼくのテイストにぴたりとはまるものでした。ソロ・アルバムの『アイ・スタンド・アローン』。自由の女神をパロディにしたジャケットもよかった、よかった。
82年には『チャンピオンシップ・レスリング』というアルバムを久々に発表して、そのサポート・ライヴがニューヨークの「ボトムライン」で開かれました。留学時代にそれが観れたのもラッキーです。だって、その後は長いこと沈黙してしまうのだから。94年にも「ボトムライン」でブルース・プロジェクトのリユニオン・ライヴを観たけれど、これはしょぼくて愕然とした記憶があります。
だから、『チャンピオンシップ・レスリング』以来の本格的なスタジオ録音アルバムとなる『ブラック・コーヒー』にはそれほど期待はしていませんでした。しかし、ぼくの予想は軽く覆されました。白人ブルースマン的なヴォーカルに特徴のあった彼が、まるでレオン・ラッセルみたいなかすれた声とこぶしを利かせた節回しで、ソウルフルな歌を淡々と聴かせてくれるのですから。
冒頭の「マイ・ハンズ・アー・タイド」の深い味わいは60を過ぎた男にしか歌えないものでしょう。ブッカーTも真っ青の「グリーン・オニオン」、レア・アースの「ゲット・レディ」といったカヴァーもオリジナルよりいい感じです。
こんなアルバムが聴けるのだから、音楽が好きなことに幸せを感じずにはいられません。よくぞアルバムを出してくれました。そして、ぼくもこの年までロックを聴き続けてきてよかったと思います。一昨年に続く10月の来日も期待大です。