
20日の全世界一斉発売を首を長くして待っていたのはぼくだけでないでしょう。というわけで、前日にレコファンやディスク・ユニオンなら入荷しているのでは? と考えて渋谷まで行きました。無駄足でしたが。他の作品なら発売日の前日にたいていは店頭に出ますが、さすがビートルズ、このあたりの規制もしっかりしています。
音楽の内容は予測がついていましたから、そんなに急がなくてもいいんです。でも、出るとなればやっぱり一刻も早く聴いてみたい。いつものせっかちな性格が顔を出すんですね。今回は5.1チャンネルのミックスが「スペシャル・エディション」の2枚組についてくるので、とにかく聴きたいと。
レコード会社は「ザ・ビートルズ最新作」と謳っていますが、これはレコード会社ならではの誇張です。最新作でないことはビートルズのファンじゃなくたって知っているでしょう。まあレコード会社のご愛嬌ということで、それほど目くじらを立てる必要もありません。

ところでこの『LOVE』は、シルク・ドゥ・ソレイユがラスヴェガスで公演しているパフォーマンスのサウンドトラックみたいなものです。そのうち日本にも来るかもしれませんが、いまのところはヴェガスのミラージュ・ホテルで上演されているだけです。これもそのうち観にいきたいと思っています。
多くの曲は、他の曲の音源の一部をダビングしたコラージュ風の作りになっています。未発表録音もあるといわれていましたが、実際はジョンのデモ・テープの一部(「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」が使われているくらいで、これもどうって内容ではありません。
『アンソロジー』や『レット・イット・ビー:ネイキッド』もそうでしたが、このアルバムはマニア向けと考えたほうがいいでしょう。まずはオリジナル・アルバムをしっかり聴くことです。その上でこの作品を聴くと、実に楽しめます。とにかくあちこちにいろいろな音が使われているんですから。
たとえば「ゲット・バック」では、オープニングに「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」のオーケストラ・パートが出てきます。そのあとに「ア・ハード・デイズ・ナイト」のオープニング・ギターが登場し、「ゲット・バック」「サージェント・ペパーズ~」の歓声なんかも聴こえます。
びっくりしたのは「GNIK NUS」と題された曲です。タイトルをさかさまに読めば曲名がわかります。その曲を逆回転させたヴァージョンがこれなんですが、荘厳な響きを伴う印象的なメロディになっています。「SUN KING」よりいいかもしれないなんて、ぼくは思っているほどです。逆回転もビートルズの得意技ですし、それを使ってこのような曲にしてみせる手腕に舌を巻きました。
プロデューサーのジョージ・マーティンと息子のジャイルが、ビートルズの音源を使って自由に遊んでみましたっていう内容です。こういう曲が次から次に出てきますから、その謎解きの面白さに、はまるひとははまるでしょう。ぼくもそのひとりです。収録されたのは26曲ですが、そのために120曲以上のビートルズの楽曲の断片が使用されているとのことです。
プロデューサーのジャイルズ・マーティンみずからが「モナ・リザに口ひげを描き加えるような気分」といっているように、「トゥモロウ・ネヴァー・ノウズ」のベースとドラムスをジョージの「ウィズイン・ユー、ウィズアウト・ユー」にミックスするなど、いってみればやりたい放題です。
それゆえ、「ビートルズに対する冒涜」というひともいます。その気持ちもよーくわかりますが、よーくわかった上で、個人的にはこういう試みも面白いと思いました。だって原曲を否定しているわけでもなければ、この作品が出たことで原曲がなくなるわけでもないんですから。つまり、もう1枚アルバムが増えたことをぼくは単純に喜んでいます。根が単純なもので。
それでこの作品、とくに5.1チャンネルで聴くと、あちこちからいろいろな音が出てきて楽しいですね。ぼくはサラウンド・フェチでもありますから、こういう作品が出ると嬉しくて仕方ありません。
ただし、サラウンドの度合いがちょっと弱い感じもします。多くの5.1チャンネル・リミックスに共通している不満が、リア・スピーカーの音量がフロント・スピーカーより低いことです。うしろからもがんがん音が出てくると楽しめるんですが。
これまでに聴いたサラウンドで一番よかったのはピンク・フロイドの『狂気』です。あと、ニール・ヤングの『ハーヴェスト』もグッドでした。居間にあるDVDプレイヤーはリア・スピーカーの音量が調節できません。寝室にも格安の装置があって、こちらは5つのスピーカーのすべてが音量調節可能です。ちゃちな装置なので音質的には落ちますが、こちらでリア・スピーカーの音を上げてきくと、『LOVE』も相当楽しめました。

ちなみに寝室のサラウンド・システムは総額で2万円もしません。この安さ、とても自慢です。テレビは捨てられそうになったものを使っていますし、ホーム・シアターのシステムはアマゾンでランク1位か2位だったもので、9000円台でした。これがばかにできない音です。DVDプレイヤーはKakaku.comで見つけたリージョン・フリーの中国製で6800円。総額1万5千円くらいで、寝室がホーム・シアター化しました。しかも世界中のDVDが観れます。いい時代になりました。
それで『LOVE』ですが、今回もEU盤、アメリカ盤、国内盤を買います。それぞれ通常盤とスペシャル・エディション盤がありますから全部で6種類。ただし、国内盤のスペシャル・エディションはEU盤に解説書をつけたものなので、EU盤のスペシャル・エディションは買いません。
というわけで5種類を購入することになりますが、いまのところアメリカ盤のスペシャル・エディションがどこにも入荷していないようで、これはニューヨークにいったときに買うかなと思っています。アメリカ盤の通常盤も、HMVでは通常出荷になっていますが、アマゾンではなぜか12月に入ってからの出荷です。
とてもせこいのですが、ほんの少しだけアマゾンのほうが安いのでそちらでオーダーしています。ですから、現在手元にあるのは国内盤の2種類とEU盤の通常盤だけです。アメリカ盤の2種類をゲットすればコンプリートは達成です。今回はアナログ盤が発売されないようで、そこが残念です。
この秋はビートルズ関連の作品がいろいろ出て、コレクションを増やすことができました。ジョージの『リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド』、ポールのクラシック・アルバム、ジョンのサントラ盤、ポールのアメリカ・ツアーのDVD、そして締めが『ラヴ』です。リンゴ関連のみありませんでしたが、そのうちまたオールスターズ物が出ることでしょう。

そうそう数日前に、イギリスの出版社Genesisからまた豪華本発刊の知らせが届きました。今回はジョージ・マーティン著の『SUMMER OF LOVE~THE MAKING OF SGT. PEPPER』です。Genesisはこれまでにもジョージやリンゴの豪華本を何冊も出しています。限定2000部くらいで、本人の直筆サイン入りです。
今回も2000部限定でジョージ・マーティンのサインがつきます。価格は予約オーダーなら250ポンド、1月2日以降はレギュラー・プライスの295ポンドになりす。送料を入れれば6万円強でしょうか。
迷っているところですが、迷っているときは買ってしまうのがぼくですから、多分オーダーするでしょうね。自分へのクリスマス・プレゼントかな? もうエクスキューズまで考えているんですから、困った性格です。
だらだら書いて申し訳ありませんが、あさっての土曜は銀座でトーク・イヴェントをします。定員一杯になっているようですが、キャンセルが出る場合もありますので、興味があるかたはイベント運営委員会matc@wind.sannet.ne.jp(HKO商会)までご連絡ください。詳細は11月の「Works & Information」をご覧ください。