2ヵ月に1回、駒場東大前の「Orchard Bar」で細々とやっている「ONGAKU」ゼミナールも今回で4回目。これはDJ仲間を中心に、ジャズには興味があるけれど何を聴いたらいいのかわからないひと向けのレクチャー。レクチャーと言っても、ちっともエラそうではなくて、みなさんが聴いてみたい、興味があるといった音楽をかけながら、適当に思いついた話をするといった、気楽な集まりなんですね。
そんな集まりですから、ぼくの服装も思いっきりだらけています。堅苦しい集まりではないので、こんなものでいいでしょう。
で、今回のテーマは「エレクトリック・マイルス」。それも前編です。68年の『イン・ザ・スカイ』から一時引退する75年の『パンゲア』まで。
改めてじっくり聴いて思ったのは、この時代のマイルスはリズムに凄く関心を寄せていたこと。どうしたら複雑なビートが生み出せるのか。マイルスは、晩年になってもそんなことをしばしば口にしていましたが、この時期もそうだったことがわかります。キーボード奏者を3人集めて、ベース奏者もふたり、ドラムスとパーカッション奏者を合わせて4人とか、常識では考えられない編成で演奏していたのが60年代の終わりから70年代はじめにかけてです。
それぞれが違うビートを提示することで生み出される混沌としたリズム。そこに身を委ねながら、マイルスはまるでピカソの前衛画のように、奔放で自在なフレーズを積み重ねていきます。
ぼくは話をする立場にいながら、何度もその音楽に心を揺さぶられ、マイルスの尽きぬ創造性に思いを馳せていました。
やはりマイルスは凄い。反面、言葉でその凄さが伝えられないもどかしさにじくじたる気持ちにもなっていたんですが。まあ、百聞は一見にしかずというところでしょうか。100万語の言葉より、実際の演奏に耳を傾けることです。
でもこう言ってしまうと、文章を書くという自分の仕事を否定することになりますが、事実は事実、仕方のないことです。物書きには物書きの使命があるんでしょうが、音楽は読むものではなく聴くものですから。というわけで、今日は自己矛盾を抱えながら筆を置きます。
そうそう、この日は誕生日の前日だったので、居合わせた仲間が祝ってくれました。この年になると、誕生日なんて何とも思わなくなっていましたが、祝ってもらえばやはり嬉しい。ということで、感謝の気持ちを込めて、写真を掲載しておきます。
ところで、集まってくれたひとはみんな楽しんでくれたのかしら?