
今年の「東京JAZZ」はいつもと違った形で充実していました。コンサート・ホールでの開催ということから演奏に集中できましたし、音も一番よかったように思います。
客席で演奏が楽しめたのは初日(2日)だけです。翌日はラジオの中継があったためほとんど放送席に詰めていました。オーディエンスとして演奏を楽しむことはできませんでしたが、それはそれです。

簡単に振り返ってみると、一番よかったのが上原ひろみさんです。初日のトリオを聴いて、彼女がまったく規格外のピアニストであることを改めて実感しました。
27歳の上原さん。斬新で個性的で、自分の世界を最初から最後まで繰り広げてみせたところに鳥肌が立ちました。こんなピアニストが世界を股にかけて活躍しているんですね。彼女の姿を見ていて日本人として誇らしい気持ちになりました。
3日目のラスト、グレート・ジャズ・トリオにスペシャル・ゲストとして加わった渡辺貞夫さんも最高でした。40年近く彼のライヴは聴いてきましたが、こんなに嬉しそうな顔をしてアルト・サックスを吹いているサダオさんは知りません。ビバップの生き証人であるハンク・ジョーンズとの共演を心から楽しんでいる様子が、放送席にあったモニター映像からも伝ってきました。
この4人に、チック・コリア、上原ひろみ、オースチン・ペラルタが次々と加わって「サムデイ・マイ・プリンス・ウィル・カム」が演奏された「グランド・フィナーレ」もよかったです。こういうステージを見ると、ジャズは世代も人種も音楽性も超えられることがよくわかります。
あともうひとつ、グレート・ジャズ・トリオ+渡辺貞夫のセットの前に登場したチック・コリア&上原ひろみのデュオにも強い感銘を受けました。上原さんはプレッシャーと戦いながらもチックとの演奏を心から楽しんでいたんでしょう。モニターに映し出されるアップの表情が本当に豊かで、それを観ているだけでも演奏の素晴らしさ・楽しさが伝ってきます。

それで、昨日はこういう演奏をすべて客席2階・下手側の小部屋に特設された放送席で観ていました。NHK-FMが14時から22時55分まで実況中継したんですが、ぼくは解説者としてバンド・チェンジの間に住吉美紀アナウンサーのお相手を務める役回りです。バック・ステージにはルーシー・ケントさんがいて、演奏を終えたばかりのミュージシャンからコメントを聞くことになっています。番組はこの3人で進行していきました。
拘束時間11時間に対し実働時間は1時間半といったところでしょうか。実況中継なので舞台の進行に合わせて話をしていかなければなりません。途中でステージが始まる可能性もあります。そこで住吉さんとの会話は脱線しないようにセーヴしちゃいました。

住吉さんは自分でもジャズ・ヴォーカルをやったりドラムスを叩いたりするかたなので話はしやすかったですね。ルーシーさんはいつものように最高です。おふたりがいたので、ぼくはといえば聞かれるがまま、思ったままの話をしているうちに番組は無事終了しました。
住吉さん、ルーシーさんはもとよりスタッフのみなさんもジャズが大好きなんでしょう。びしっと仕事をしている合間にも、ライヴを楽しんでいる気配が伝ってきます。そんなひとたちと仕事ができてとても気分がよかったですね。

「東京JAZZ」は5回目を迎えました。主催のNHKエンタープライズによれば10回は続けたいとのことです。内容もよかったですし、「野外でジャズを堪能したい」という楽しみは奪われましたが、駅からのアクセスやサウンド面など、音楽とは別の点でもこれまでのうちで一番よかったんじゃないでしょうか。
ぼくも微力ながらこのプロジェクトにかかわれて誇らしい気持ちと嬉しさを味わっています。放送およびフェスティヴァルのスタッフのみなさん、ほんとうにご苦労さまでした。