スポーツは音楽と同じで、往々にして大きな感動を与えてくれることがあります。今回のWBCがそれでした。ここ数年、野球熱が醒めかかっていたのですが、WBCは強化試合や壮行試合のときから、時間が許す限りテレビで観戦していました。
ぼくもそうですが、ほとんどの日本人は二次予選で韓国に敗れたときにこれまでかと思ったことでしょう。ところが不死鳥のように甦り、ついには優勝してしまったんですから、筋書きのないドラマでした。
今日の決勝戦も最初に大量得点したものの、スポーツに関してネガティヴ・シンキングのぼくは、いつ逆転されるのかとはらはらどきどきでした。そのはらはらどきどきは最後まで続きましたが、結果としてそれだけスリリングで面白いゲームだったということです。
喜怒哀楽を素直に出していたイチローの態度も、いつもの彼からは考えらません。自分でも発言していたように、それだけこの大会には思い入れが強かったのでしょう。そんなゲーム以外の人間ドラマも楽しめた大会でした。
でも韓国に2回も負けて、それでも優勝ができしてしまうシステムはちょっとね、と思います。1次予選と2次予選を合わせて3勝3敗でもセミ・ファイナルに出れてしまうシステムも不思議です。韓国と3回も試合する組み合わせもどうなんでしょう? もっとほかの国との試合が観られる組み合わせにどうしてしないのか、そのあたりの考えがよくわかりません。
日本が優勝したことは文句なしに嬉しいのですが、理不尽と感じている国の選手やファンのことも頭をよぎります。一番面白くないと思ったのが主催したアメリカの大リーグ機構でしょうね。思惑違いの結果で、次回開催に力を入れるんでしょうか? まあ、いつもアメリカの思惑どおりには行きませんよ、ということのいい例にはなりましたが。
それはそれとして、面白い試合が観られた3週間弱でした。今日の優勝劇には、素直に感動しました。「諦めなければいいことがあるよ」ということを教えられた大会でもありましたね。それで、今年は久しぶりにペナントレースに注目しようかなと思っています。

その後は高揚感に浸りながら六本木まで歩きました。「サテンドール」で松永貴志さんのライヴを観るためです。1月に発売された『無機質オレンジ』の発売記念ツアーの一環で、そのライナーノーツを書かせていただいたこともあって、ライヴも見届けなくてはと出かけたわけです。
エリック・ハーランドのスケジュールが合わなくて、今回はオーティス・ブラウンというドラマーが参加していました。松永さんが昨年ニューヨークに行って、エリックが推薦してくれた何人かの中からみずからが選んだドラマーだそうです。
このトリオも、エリック入りのトリオと同じで、リズミックな演奏に持ち味があります。松永さんのプレイはスピード感とリズミックなところが命です。その上で奔放な展開をするため、共演者には瞬時に反応できる瞬発力が要求されます。ベースのウゴナ・オケグォはこの点に秀でていて、それが松永さんから自在なプレイを引き出していたようです。
ただし1曲目の「星影のステラ」を聴いたときは、「あれれ、松永さんも普通のジャズ・ピアニストになってしまったか」とちょっと焦りました。しかし、すぐにいつもの彼に戻ってがんがんピアノを弾き始めたのでひと安心です。あとは「チャイルド・イズ・ボーン」、「魚の涙」、「ダン・ダン・ダン」、「無機質オレンジ」など怒涛の勢いでした。松永さんらしいなと思ったのは、今朝書いた曲を早速披露してみせたところでしょう。これもリズミックな面白い内容でした。
はたちになったばかりの松永さんです。そうそう、現在は自動車の仮免まで行って、

もうすぐ免許が取れるところまできたと教えてくれました。ぼくの車が欲しいとねだられましたが、こればかりはちょっとね。
それはそれとして、若者らしい屈託のないプレイには聴いていてすがすがしさを感じます。これからもっといろいろなことを体験し、年齢を重ねていけば、プレイにもさらなる変化が出てくることでしょう。その成長していく姿を一緒にたどっていける楽しさ。そんなことを夢想しながら、ウォーキングで家まで戻りました。
すっかり春めいてきて、ちょっと涼しい空気が、WBCでの優勝 明りが不足のためのっぺらぼうみたいです
や松永さんの演奏を聴いて興奮し
た気持ちを鎮めてくれました。今週はストーンズのライヴもありますし、それが終わってからは青山の「VAL」で開かれているHi-FiのDJイヴェントにも出る予定です。
楽しいことがいろいろある1週間。いい季節にもなってきましたし、仕事は忙しいのですが毎日をエンジョイしながら過ごしていけそうです。