1973.11.29 Charles Tolliver Music Inc. 郵便貯金ホール
Music Inc.の最終公演はすごい熱気に包まれた。初来日のチャールス・トリヴァー、スタンリー・カウエル、クリフォード・バーバロが激烈なプレイを披露。これが凄かった。このパンフレットは特大のポスターを折りたたんだもの。これもいい記念品。
『伝説のライヴ・イン・ジャパン 記憶と記録でひもとくジャズ史』よりhttps://amzn.asia/d/bVUdQzg

『チャールズ・トリヴァー・ミュージック・インク/ライヴ・イン・トーキョー』(LP)
トリオ・レコード/Trio PAP 7088
[Side One]
① ドロート(チャールズ・トリヴァー)12:18
② ストレッチ(チャールズ・トリヴァー)10:50
[Side Two]
③ トゥルース(チャールズ・トリヴァー)7:03
④ エヒ/ラウンド・アバウト・ミッドナイト(チャールズ・トリヴァー/バニー・ハニゲン、セロニアス・モンク&クーティ・ウィリアムス)19:31
チャールズ・トリヴァー・ミュージック・インク
チャールズ・トリヴァー(tp) スタンリー・カウエル(p) クリント・ヒューストン(b) クリフォード・バーバラ(ds)
1973年12月7日 東京・内幸町「イイノホール」で実況録音
1964年にジャッキー・マクリーン(as)のグループでデビューしたチャールズ・トリヴァー(1942年3月6日 - )が大きな脚光を浴びるようになったのは、69年にスタンリー・カウエルが彼のミュージック・インクに参加したことによる。パワフルで過激な演奏は時代の先端を行くもので、ポリドール、ストラタ・イースト、エンヤから発表した諸作が日本でも大きな話題を呼ぶ。メンバーは何度か交代したものの、人気絶頂の時代にミュージック・インクは来日する。
そのときの最終コンサートを収録したのがこの作品だ。お聴きになればわかるが、このころのトリヴァーは、音楽性、方向性、音質など、すべてが日野皓正に瓜ふたつだった。偶然の一致だろうが、それだけ、日野が世界的なレヴェルにあったことを意味している。
それはそれとして、このアルバムは痛快だ。自信を持ったミュージシャンがいかにすごい演奏をするかの典型が聴ける。張りのあるトリヴァーのトランペットにメンバーが触発される。カウエルの高揚感にもすさまじいものがある。
このグループ、スタート時点ではトリヴァーの単独リーダーだった。それが1年をすぎたころからカウエルとの双頭カルテットになり、来日の時点では再びトリヴァーひとりがリーダーになっている。カウエルが抜けた時期もあったが、グループにおける存在感と重要性は以前と変わらない。
曲は〈ラウンド・アバウト・ミッドナイト〉以外、すべてトリヴァーのオリジナルだ。それまではカウエルの曲も取り上げていたが、こういうところは実にはっきりしている。それでも、カウエルあってのトリヴァーだ。名義はどうあれ、この二人三脚がある限り、ミュージック・インクは健在である。そしてふたりを軸に、日本公演では全員が素晴らしいステージを聴かせてくれた。
といっても、これは想定外の産物だ。当初はピアニストにジョン・ヒックスが予定されていた。ところが入国管理局の許可が下りず、来日が不可能になる。パトリース・ラッシェンで一度は決まったが、最終的にカウエルで落ち着く。
ジャズは生き物だ。メンバーによっても内容は異なる。刻々と変化していくその瞬間を切り取ったのがこの作品だ。繰り返しになるが、ジャズの財産を後世に残す大仕事をしたのがトリオ・レコードである。これは世界レヴェルの業績だ。