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川隆夫の JAZZ BLOG
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©Kozocom (photo by Shuichi Kasahara)
職業:JAZZジャーナリスト、整形外科医、DJ

ニューヨーク大学の大学院在学中にアート・ブレーキーやマルサリス兄弟など数多くのミュージシャンと知り合う。帰国後、JAZZを中心に約3000本のライナーノーツを手がけると共にJAZZ関連の著書を多数出版。ブルーノートの完全コレクターとしても有名。その他、マイルス・デイヴィスやブルーノートの創始者アルフレッド・ライオンの来日時の主治医を勤めるなど、現役の整形外科医としても第一線で活躍中。

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「証言で綴る日本のジャズ」

「ジャケ裏の真実
ジャズ・ジャイアンツ編」
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小川隆夫ONGAKUゼミナール
@銀座le sept
3.19:ジャズメン、ジャズを聴く!


■TALK EVENT■
民音音楽博物館
「3月文化講演会」@神戸
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TEL: 078-265-6595

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2023-07-05 Mal Waldron + Kimiko Kasai
Mal Waldron + Kimiko Kasai 1972.7.5 東京・郵便貯金ホール

71年に続く2度目の日本ツアー。今回は、前回録音した笠井紀美子との『ワン・フォー・レディ』を引っ提げての全国公演。笠井は1か月前にギル・エヴァンスとの共演作を残しており(この時点で未発売)、国際派シンガーとして注目を集めていた。

『伝説のライヴ・イン・ジャパン 記憶と記録でひもとくジャズ史』よりhttps://amzn.asia/d/bVUdQzg

『笠井紀美子+マル・ウォルドロン/ワン・フォー・レディ』(LP)
日本ビクター/World Group SMJX 10119

[Side One]
① ドント・エクスプレイン(ビリー・ホリデイ、アーサー・ハーツウォグ)4:44
② マイ・マン(チャニング・ポラック、モーリス・イヴェイン)4:45
③ サム・アザー・デイ(マル・ウォルドロン)3:19
④ ウィロー・ウィープ・フォー・ミー(アン・ロンネル)4:50
[Side Two]
⑤ イエスタデイズ(オットー・ハーバック、ジェローム・カーン)4:19
⑥ ラヴァー・マン(ラム・ラミレス&ジェームス・シャーマン、ジミー・デイヴィス)5:30
⑦ ユーアー・マイ・スリル(ジェイ・ゴメイ、シドニー・クレア)4:45
⑧ レフト・アローン(ビリー・ホリデイ、マル・ウォルドロン)5:28
笠井紀美子(vo) マル・ウォルドロン(p) 鈴木良雄(b) 村上寛(ds)
1971年2月13日 東京・青山「日本ビクター・スタジオ」で録音

 マル・ウォルドロンが日本での初コンサートをするため羽田空港に降り立ったのは1971年のこと。2月8日の福岡から始まったツアーは、3月6日の根室まで続けられた。まさに国内縦断である。そして、合間の2月13日に設定されたのが笠井紀美子(1945年12月15日 - )とのレコーディングだ。前年に観光旅行で来たとき、マルは笠井の歌を聴き、興味を持ったという。
 マルはビリー・ホリデイ(vo)最後の伴奏者として知られている。彼女が書いた歌詞にメロディをつけた〈レフト・アローン〉はマルの代表曲である。ところが、ホリデイは〈レフト・アローン〉を一度も録音することなくこの世を去ってしまった。笠井とのレコーディングには、この曲を取り上げることへの期待があった。
 マルと共演するのは鈴木良雄と村上寛。ツアーの多くも彼らがバックを務めている。この時期は、鈴木が渡辺貞夫カルテット、村上が菊地雅章セクステットのメンバーだった。忙しいスケジュールの合間には、ふたりでさまざまなグループに参加し、切磋琢磨していた仲である。笠井のバックも頻繁に務めていたことから、適任のメンバーといえる(笠井と村上は1年後に結婚する)。
 彼女にとっては外国人アーティストと行なう初レコーディングだ。しかも、相手はジャズ・ジャイアンツのひとり、マル・ウォルドロンである。この録音には関係者やファンも注目していた。
 笠井は日本のジャズ・ヴォーカル界におけるライジング・スターで、70年度の『スイングジャーナル』誌「読者人気投票・ヴォーカル部門」(発表は毎年5月号)では、弘田三枝子、マーサ三宅に続く3位、本作を吹き込んだ71年には1位に輝いている。ちなみに鈴木は「ベース部門」で稲葉國光に次ぐ2位、村上が「ドラムス部門」の5位だった。いわば若手のホープ3人がマルを迎える企画だ。そこで、笠井がどれだけ超個性派のマルの伴奏で自身のヴォーカルを聴かせることができるか、興味はこれに尽きる。
 マルが笠井のために作詞・作曲した〈サム・アザー・デイ〉を除き、この作品ではビリー・ホリデイの愛唱曲が歌われる。彼を中心にしたトリオの伴奏も素晴らしいが、笠井が見事な主役ぶりで歌う姿に胸が熱くなる。独創的なマルに、彼女は一歩も譲らず個性を発揮する。
 マルとホリデイ――この大きな壁に対し、笠井は臆することなく日ごろから培ってきた曲への解釈や表現をぶつけていく。マルを自分のサイドに引き寄せ、笠井の世界が描かれる。それに対し、マルもベストのプレイで応じる。日本人シンガーでここまでジャジーに、かつ奔放に歌えるひとはいなかった。
 ラストに収められた〈レフト・アローン〉は、笠井にとって運命の曲との出会いだ。お手本となる本家の歌は残されていない。解釈と実力の見せどころだ。マルもそのことはわかっている。彼にとっても大切な曲である。ジャッキー・マクリーン(as)をソロイストに迎えて吹き込んだ『レフト・アローン』(ベツレヘム)よりややテンポを落とし、ふたりがじっくりと曲に向き合う。
 のちにさまざまなシンガーがこの曲を取り上げるが、これほど胸に迫る歌は少ない。笠井の覚悟と、この曲を演奏するマルへ寄せる思慕の念。そうしたものがひとつになって、笠井の〈レフト・アローン〉は生まれた。彼女はこれを糧に、以後多くの外国人プレイヤーと共演を重ねていく。
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by jazz_ogawa | 2023-07-05 00:05 | ライヴは天国 | Trackback | Comments(0)
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