ここ2週間ほどでいちばんよく聴いているのがこのアルバムです。

フォー・フレッシュメンといえばジャズ・コーラスの最高峰です。ところが、この作品はまっとうな彼らのファンやジャズ・ヴォーカルのファンからはほとんど相手にされてきませんでした。
実際、今回が世界初CD化ですし、アナログLP時代にも日本で発売されたかどうか怪しいものです。それも仕方がありません。取り上げているのが、このアルバムを録音した1968年当時のポップ・ヒットを中心にしていたからです。そのため、真面目なファンからはそっぽを向かれていたんですね。
ところが、ぼくはこういうコマーシャル臭がぷんぷん漂う作品や音楽が昔から大好きでした。ジャズの名盤と呼ばれている作品も好きですが、こういうある意味で日陰者(この場合は日陰物?)がすこぶる気になってしかたありません。
ここしばらくクラブ・ジャズが流行って、そういうひとたちの間では、シリアスなジャズ・ファンが相手にしなかったミュージシャンや作品が高く評価されるようになりました。いいことです。
ただし、誰もが「右にならえ」で同じ作品やアーティストを異常に高く評価したり持て囃したりしているさまにはちょっとした怖さも感じます。「もう少し自分の意見を持ったら」と思うのは、ぼくが親父になった証拠でしょう。いやですね。
でもそのお陰で、このアルバムも日本で発売されたようです。ジャズ・ファンに売るのではなく、違うファン層を期待してのリリースだと思われます。
それはそれとして、このアルバムです。フォー・フレッシュメンが歌うのはラヴィン・スプーンフルの「デイドリーム」、ジ・アソシエーションの「チェリッシュ」と「ウィンディ」のメドレー、バート・バカラックの「ウォーク・オン・バイ」、ビートルズの「レディ・マドンナ」、フランク・シナトラの「カム・フライ・ウィズ・ミー」とフィフス・ディメンションの「アップ・アップ&アウェイ」のメドレー(このセンス最高!)、それから隠れた名曲にしてフォー・フレッシュメンの隠れた名唱にもなっている「ホエン・スクール・イズ・アウト・ディス・イヤー」などなど、どれもジャズ・ファンなら顔をしかめる曲ばかりです。
チープなアレンジですし、フォー・フレッシュメンのハーモニーにも全盛期の美しさは認められません。しかし好きなものは好きということで、このアルバム、ぼくにとっては彼らの最高傑作『ファイヴ・トロンボーンズ』より愛聴していました。
それでようやくCDが出たので、もうアナログ盤は聴かなくてもいいかなと思っています。これまでに、このアナログ盤は3枚買いました。そのうち1枚は聴き潰し、2枚目を聴いているところでした。どうして3枚持っているかといえば、CD化が期待薄だったため、いずれ2枚目も溝が磨り減ると思い、買いだめしておいたのです。ただし、このレコードは未開封だったので、これはこれで永久保存版として、もう1枚探さなくちゃと思っていました。
アメリカの中古盤店ではときどき見かけますし、あれば3ドルとか5ドルで買えます。アメリカでもくず盤です。でも、そういうレコードがいとおしくてたまりません。だから、部屋にレコードがどんどん増えて身動きが取れなくなってしまったのですが。
それともうひとつ、ぼくはジャケット・デザインにも魅かれています。この作品はリバティから出たものです。リバティといえば、この時期、ブルーノートも傘下におさめていました。それで似たようなデザインのジャケットがブルーノートにもいろいろあります。
ブルーノートではフランシス・ウルフの写真にリード・マイルスのデザインが定番です。ところが、1960年代末の一時期はこのアルバムをデザインしたウッディ・ウッドワードも起用していました。例えばルー・ドナルドソンの『アリゲイター・ブーガルー』なんかで彼のデザインが楽しめます。

なお、今回同時に発売された、デイヴ・ペル・シンガーズ、スー・レイニー、ブロッサム・ディアリー、マーティン・デニーの作品もぼくのフェイヴァリットですし、このシリーズ(Sound Picnic紙ジャケット・シリーズ)では3月にもフォー・キング・カズンズ、ラヴ・ジェネレーション、ジャッキー・デシャノンなど5枚が出ます。いずれもLPで散々聴きまくった作品なので、発売されたらすぐにiPODに入れてウォーキングをしながら楽しもうと思っています。