





昨日は伊勢崎の石黒謙さんのお宅にお邪魔しました。石黒さんはオーディオ・ケーブルなどを扱うメーカーAcoustic Reviveのオーナー。Jazz Japanの104号でEQカーブの違いを取材させていただいた縁で、お宅に呼んでいただきました。EQカーブは奥が深くて、たいていのレコード・プレイヤーはRIAAカーブに適したEQでセッティングされています。
ところが1980年ごろまではレコード会社によって独自のEQカーブでレコードが制作されていたようです。コロムビアはコロムビア・カーブなので、コロムビア・カーブのEQセッティングで聴かないと本来のサウンドが出ません。
ところがぼくたちのほとんどはコロムビア・カーブで再生していなかったわけです。ですからどんなにコンディションのいいオリジナル盤を聴いても、それはレコード会社が理想とするサウンドではなかったことになります。
それでも「さすがオリジナル盤はいい音がする」と思っていたぼくは、昨日聴いた音に目からウロコでした。まさしく一目瞭然、いや一聴瞭然、明らかに音が違っていました。
ちなみに日本コロムビアやCBSソニーをはじめ、日本でプレスしていたレコードはRIAAカーブなので、その方が音がいいことになります。当時はソニーの社内で「アメリカ盤は音が悪い」という話もあったらしいです。
とはいえ、音は個人の好みなので、適正なEQカーブで聴こうが違うEQカーブで聴こうが、いいと思えばそれで一向に構わないと思いますが。
個人的な感想をいえば、モノラルよりステレオ録音の方が違いは明らかでした。
マイルスのコロムビア盤を中心に聴きましたが、『フォア&モア』のトニー・ウィリアムスにはびっくりです。
コロムビア・カーブのディスクをRIAAカーブのプレイヤー(大半のプレイヤー)で聴くと、中低域が下がって、高音域と低音域が強くなるようです。昔のアンプにトーン・コントロールがついていたのはそれを補正するためだったとのことです。
ジャニス・ジョプリンのヴォーカルがまったく違うことにもびっくり。ヴァーヴ盤はMGMカーブで、そのEQカーブ・セッティングで聴いた『ゲッツ=ジルベルト』も、ぼくが数え切れないほど聴いてきたレコードとはまったく別物でした。
石黒さん所有のハイエンド・オーディオで聴いたこともありますが、コルトレーンが目の前に現れた気がしたのはインパルスの『至上の愛』です。インパルスはMGMカーブに近いとのことで、それで再生したのですが、トレーンのブローもエルヴィンのドラミングも圧巻でした。