「ONGAKUゼミナール」も早いもので2年目に入りました。最初はジャズを中心にテーマを決めていたんですが、段々本心が顔を覗かせるようになって、前回はジョン・レノン、そして今回は来月の来日を控えてストーンズ特集としました。
選曲をしていてすぐに気がついたのが、ストーンズのキャリアがもうすぐ45年になることでした。これじゃあ1回で全部を辿るのは到底無理と諦め、今回はデッカ時代、つまり1960年代で纏めることにしました。それでも、ヒット曲を繋ぎ合わせていくだけでタイムアップという感じです。なるべく話を少なくしようと思っていたのですが、どうも脱線しやすい性格なので、中途半端な感じになってしまったかもしれません。お集まりのみなさん、申し訳ない。
ビートルズの後塵を拝していた感の否めないストーンズです。常に一歩遅れていましたが、ワイルドな点とシンプルなロックンロールを追い続けたことで独自性が保てたのは、いまにして思えば非常に尊いと思います。
ストーンズの凄いところがここにあります。デビュー時のレコードと最新の『ア・ビガー・バン』を比べても、シンプルな点ではあまり変わっていません。何しろ音がすかすかです。このすかすかさ加減がストーンのストーンズたるゆえんだと思います。
ぼくもプロデューサーをやっていたからわかるのですが、音楽の作り手としては、どうも隙間を残したくないという思いが強くなりがちです。ダビングを駆使して一部の隙もない完璧な音を作りたい──これがミュージシャンの特性でしょう。みんながみんなそうではありませんが。
ところがストーンズのサウンドは隙だらけです。ライヴとほとんど音的に変わりがありません。シンプルなロックンロールをいまだに嬉々としてやっている姿に、ぼくは微笑ましいものを感じます。そして当節、これが一番とは言わないにしても、かなりかっこよく聴こえます。
それともうひとつ、彼らのレコードは4分とか、長くても5分くらいの尺で終わります。これまた昔と変わっていないんですね。この変わらない姿勢を45年近く続けていて、しかもいまだに世界で最高のロックンロール・バンドであるところがストーンズの凄いところです。
同時代のバンドはほとんど解散し、解散していなくても多くが「昔の名前で出ています」的な活動しかしていない現状にあって、ストーンズは凡百のバンドが束になっても到底かなわない観客動員力を誇っています。
最初は音楽好きの不良の集まりでした。そのとんでもない不良たちが、やがて好きな道を本気で追求したくなり、それを何より優先させる生活に入ります。しかし、不良性は忘れていません。それが原点だからです。
その不良性を、音楽の中やステージ上で爆発させるようになってから、ストーンズの魅力は本物になりました。一番の不良だったミックは、いまやストーンズのビジネスを引き受け、契約からツアーの仕切りまですべてをハンドリングしています。ビッグ・ビジネスのリーダーでもあるんですね。ただの不良にこれだけのビジネスはできません。
ここまできたなら、彼らにはよぼよぼになるまでやってほしいと思います。腰が曲がり、ギターも椅子にすわらなくては弾けない年齢になっても、すかすかのロックンロールを聴かせてもらいたいものです。彼らが若かったころ、ぼくを含めて当時のロック少年は誰ひとりとして今日のスートンズの姿など想像していませんでした。
生きていると、いろいろなことが体験できるものです。この先も、楽しいことが一杯あるでしょう。未来のストーンズを観ずして死ぬわけにはいきません。
ところで、昨日は予想外にいろいろな方がいらしてくださいました。このブログでコメントを寄せてくださっているかたや仲間たち。有難いことです。ばたばたして、あまりお話もできずに終わってしまった方には申し訳ありませんでした。それでも懲りずにまたいらしていただけたら嬉しいです。