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川隆夫の JAZZ BLOG
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©Kozocom (photo by Shuichi Kasahara)
職業:JAZZジャーナリスト、整形外科医、DJ

ニューヨーク大学の大学院在学中にアート・ブレーキーやマルサリス兄弟など数多くのミュージシャンと知り合う。帰国後、JAZZを中心に約3000本のライナーノーツを手がけると共にJAZZ関連の著書を多数出版。ブルーノートの完全コレクターとしても有名。その他、マイルス・デイヴィスやブルーノートの創始者アルフレッド・ライオンの来日時の主治医を勤めるなど、現役の整形外科医としても第一線で活躍中。

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2006-02-09 ぼくが選ぶ優しいジャズ・ミュージシャン(その2)
 ぼくが接したミュージシャンの中で、本当におひとよしだったのがギル・エヴァンスです。
 「こんなにいいひとが、どうしてこれまで無事にニューヨークで暮らしてこれたんだろうね」
 友人と大分以前にこんな話をしたことがあります。熾烈な競争社会に身を置きながら、ギルは飄々とした生き方をしていました。そんな彼が、ある日、こんなことを言っていました。
 「もしわたしがきちんとギャラとか印税とかを貰っていたら、裕福な生活ができたと思うよ。でも、お金にうるさいことを言っていい生活ができても、いまの幸せは得られていないだろうね」
 50年代から60年代にかけてのことですが、ギルのおひとよしにつけ込んで、ギャラを踏み倒すプロモーターやプロデューサーもいたそうです。たまにレコーディングをしても、レコード会社が倒産したりして、ギャラがもらえなかったなんていう話もしていました。

 こんな話をしてくれたころのギルは(82年)、日本で言えば生活保護みたいなものを受けていました。なにしろ、ほとんど仕事をしていなかったのですから。
 おひとよしではありますが、ギルには完璧主義者のところがあって、自分が納得できない仕事は引き受けません。それでいろいろとコンサートのオファーが来ても、滅多に腰を上げようとしなかったんですね。そんなこんなで、ぼくがニューヨークに住んでいたときに開かれたコンサートは、「パブリック・シアター」での1回だけです。
 その後、ぼくが帰国する3ヵ月前の83年4月から「スウィート・ベイジル」でのマンデイ・ナイト・ライヴが始まって、晩年のギルはようやく才能に見合う収入を得るようになりました。

2006-02-09 ぼくが選ぶ優しいジャズ・ミュージシャン(その2)_e0021965_2315511.jpg その準備に忙しいギルを陣中見舞いに行ったときです。支援者のひとりが提供してくれたワン・ルームのアパートで、床一杯に広げた譜面と彼は格闘していました。ギルの趣味は譜面を書くことと、書き直すことなんですね。このときも、あと1週間で「スウィート・ベイジル」の1回目が始まるのに、まだほどんど準備はできていませんでした。
 それで、いよいよ当日。「スウィート・ベイジル」でのリハーサルに顔を出すと、譜面が用意されておらず、オーケストラの面々を前に、ギルはまだ手直しをしているところでした。
 仕方がないので、オーケストラのバンマス的存在だったルー・ソロフが、ギルの横からいくつかの譜面を取り出して、それでサウンドチェックだけは始めました。これじゃあリハーサルになりません。
 しかも、その音を聴いていたギルが、今度は各メンバーの譜面台を覗きながら、鉛筆でなにやら音符を書き加えていきます。ギルの面目躍如たる姿を目の当たりにした光景でした。
 結局、初日のステージ開始までに、ギルは納得の行く譜面を完成させることができませんでした。休憩時間にも一所懸命になって手直しをしています。そのお陰で、最初のセットと2回目のセットではほぼ同じ曲が演奏されました。
 しろうとのぼくには、どこがどう違うのか、その差がよくわかりません。終わったあとにトランペットで参加していたマーヴィン・ピーターソンに聞いたところ、アンサンブルがかなり違うものになっていたとのことでした。
 このマンデイ・ナイト・ライヴには、飛び入りのミュージシャンが多かったことでもぼくは注目していました。よく登場したのはデヴィッド・サンボーンで、途中から彼はほぼレギュラー・メンバーとなって、最初から席が与えられるようになりました。サンボーンがレギュラー・メンバーとしてギルのオーケストラでもらえるギャラは50ドルです。
 「ほかで仕事をすればひと晩で何百ドルかになる。でもギルのバンドは勉強になるし、彼と一緒にいると気持ちがおおらかになれるんで、お金は関係ない」
 サンボーンはこう言いながら、いつも嬉しそうに演奏していました。

 心優しいギルですが、金銭的には生涯を通して大変だったと思います。割り切って仕事をすれば裕福な生活も可能だったでしょう。しかし、彼は清貧を貫いたのです。ギルは多くのミュージシャンから尊敬されていました。金銭では買えない尊いもの──。ぼくにそれを身を持って示してくれたのがギルです。
 こんなエピソードも話してくれました。あるとき、ギルは生活のためにピアノを手放してしまったのです。するとそれを耳にしたマイルス・デイヴィスが、黙ってピアノをプレゼントしてくれたそうです。それもスタインウェイのグランド・ピアノで、添えられたカードにはこうか書かれていました。
 「これを売ったら承知しないぞ」
by jazz_ogawa | 2006-02-09 23:22 | 愛しのJazz Man | Trackback | Comments(11)
Commented by forcek at 2006-02-10 13:25 x
小川さんこれまたギルの話もホントいい話ですねー、俺も彼とはスケールこそ違いますが似たようなところもあるのでよくわかります(笑)、「マーヴィン・ピーターソンに聞いたところ」のマーヴィン・ピーターソンはハンニバルのことですよねーじゃビリー・ハーパーもいたころですかね、しかし最後のマイルスの話はたまんないですねー(ちょっと泣けました)マイルスはギルを信頼してましたもんねー、昔みた映像でよく憶えてるのはマイルスが「ギルのスコアは最高にクールなんだ」と言ってたのを思い出しました。
Commented by カーラ at 2006-02-10 22:33 x
小川さん初めまして。全盛期のスウィート・ベイジルは憧れでした。ギル・エバンスオーケストラがバックだとサンボーンもジョージ・アダムスも迎合せず個性出しまくってますよね、
特にサンボーンって、例の調子でこんなにロングなソロを受け持てるんだ!って(当たり前?)驚いたもんです。
Commented by jazz_ogawa at 2006-02-10 23:47
forcekさん、そうです、ハンニバルのことです。
次回はマイルスの話で行きましょうか。
Commented by jazz_ogawa at 2006-02-10 23:51
カーラさん、はじめまして。本当に当時の「スウィート・ベイジツ」はよかったですよね。これからもよろしく。
Commented by NetHero at 2006-02-12 03:13 x
小川さん、こんにちわ。
California 在住の私から見れば、Sweet Basil は知らぬ間に出来て知らぬ間に閉店されたと云う印象です。
私は93年6月に一度だけ行ったことがあります。(すみません。いつも古い話が多くって。)
日野てるまさのクインテットが出演していました。
約10年ぶりに仕事で訪れた New York でしたので Jazz を一杯聞こうと思い village Voice で予習し(今ならインターネットですが。)、6月の暑い土曜日の夜、 宿泊先の New Jersey から車で約1時間。
車のパーキングを探すのにまた一苦労。もうそれだけで汗だくです。
で、当時、出来立てホヤホヤとかの Small (本当に small な店でした。)で、ハロルドメーバンがサイドで出ているなんとか言う名前の(名前失念)トランペッターの演奏を2セット。
結局、お目当ての日野グループの演奏には遅刻してしまいました。日野の演奏が終わって夜中の1時、近所の Village Vanguard のラストセットに間に合ったのですが、さすがにフラフラ状態でホテルに戻りました。でもその時出ていた Don Cherryは、その後すぐに亡くなったんですね。
今思えば聴いておくべきでした。(泣)
Commented by jazz_ogawa at 2006-02-12 11:55
NetHeroさん、ジャズ好きの気持ちが伝ってくるコメントありがとうございました。「ジャズはライヴが一番」という思いがありますので、なるべく観に行くようにしています。でも最近は体力的にきつくなりました。これが情けないところですが。
Commented by tokunaga at 2006-02-15 14:41 x
さりげなく書かれておられますが、パブリックシアターのライブといえば
これ↓ですかね?
http://www.pjl.jp/discography/trio/MTCJ2530.html
大学生の頃友人に借りて初めて聴いたギルのCDです。そんな状況の中でのライブだったとは!
Commented by tokunaga at 2006-02-15 14:42 x
おっと自分のURL入れ忘れましたので念のため。
Commented by jazz_ogawa at 2006-02-15 23:10
tokunagaさん、残念ながらそのライヴとは違います。このとき、ぼくはバンドボーイとして働かさせてもらい、それがきっかっけで「スウィート・ベイジル」のマンデイ・ナイト・オーケストラでもギルのお手伝いをさせてもらいました。
Commented at 2009-05-23 09:55 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by jazz_ogawa at 2009-05-23 10:35
非公開コメントのギル・エヴァンス・ファンの方。とりあえず『ギル・エヴァンスの個性と発展』やマイルス・デイヴィスの『スケッチ・オブ・スペイン』あたりをお聴きになったらいかがでしょうか?
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