
このカルテットで来日したピアニストのマーク・コープランドに誘われ、最終日の昨日、観てきました。
ジョン・アバークロンビーといえば、デイヴ・ホランド&ジャック・ディジョネットと組んだ『ゲイトウェイ』に胸が踊ったことを思い出します。あとはマーク・ジョンソン&ピーター・アースキンとのトリオもよかった。

あのころは勢いに任せての激しいプレイが持ち味でしたが、久しぶりに聴いたライヴでは繊細な響きの中にときおり顔をのぞかせる野生味が心地よく、これはこれで十分に魅力的なものでした。

ひとつひとつの音を確かめるようにしてフレーズを紡いでいく姿からはジム・ホールに通ずるものも感じます。その彼にぴったり寄り添うようにピアノを弾くマークもよかった。
20年以上も前にぼくが作った彼のアルバムでは、もっと大胆なところもあったけれど、いまのマークも相変わらず素敵なピアニストです。

ファースト・セットが終わったところでしばし旧交を暖めました。ぼくも大病をしたけれど、彼もいくつかの大きな病気を克服していまは元気いっぱい。
彼のレコーディングに参加してもらったデニス・チェンバースは夏にスペインで倒れ、現地のICUに運び込まれました。その話を向けると、「その後にメールで回復中であることを確認した」とのこと。一安心ですが、予断は許せません。
病気談義になってしまったのはお互いに歳を取ったせいでしょう。でもこうしてふたりして元気にそれぞれの活動ができて、「お互いに幸せだねぇ」ということで意見は一致。

そもそもアダム・ホルツマンのレコーディングにデニスを起用し、それで意気投合しデニスのリーダー作を作らせてもらいました。そのときに「俺は4ビートも得意だ」というので、「それならマークのレコーディングに参加してくれない?」、と頼んで実現したのが、『ストンピン・ウィズ・サヴォイ』という作品。
当時のデニスは再結成されたブレッカ・ブラザーズに参加していて、それならと一計を案じ、そのときのブレッカー・ブラザーズからランディ・ブレッカーとジェームス・ジーナス、そしてそのころのレコーディングに何度か起用し、彼らとも相性がいいことからサックスにはボブ・バーグに声をかけ、「フュージョン派が4ビート・ジャズを演奏する」というコンセプトで作ったのがこの作品。
ちなみにそのころ、ぼくはジョン・アバークロンビーも別のレコーディングに起用したことがあります。そちらはハーヴィー・シュワルツがリーダーで『アライヴァル』というアルバム。これは2ギター・カルテットで、もうひとりのギタリストがミック・グドリックでドラムスがマーヴィン・スミッティ・スミス。

その話をマークにしたら、「それじゃ楽屋でジョンに挨拶したら?」となりました。「たぶん覚えてないよ」といったんですが、「いいから、いいから」ということで楽屋に闖入。
マークがその話をすると、「どこかで見たことがあると思っていた」とジョン。しかもびっくりしたことに『アライヴァル』のレコーディングだと、記憶も明瞭。自分が作ったアルバムを、タイトルまで含めてきちんと覚えていてくれたことに感激です。食事中、邪魔してすいませんでした。

ぼくはあまり旧交を温めるタイプじゃないんですが、たまにはこういうのもいいですね。
【出演メンバー】
John Abercrombie (g)
Marc Copland (p)
Phil Donkin (b)
Anthony Pinciotti (ds)
2014年10月20日 「丸の内コットン・クラブ」 ファースト・セット