昨日ですが、オープンしたばかりの「よみうり大手町ホール」に行ってきました。手ごろな大きさで、チック・コリアのソロ・ピアノを聴くにはぴったりです。
毎年のようにチックのライヴを観ているので混乱していますが、たしかソロは久しぶりのはず。
本業があったため、最初のパートを見逃しました。会場に入ったときは、チックがニューヨークに出てきたときの話で、当時聴いた、エリントン、モンク、パウエルの曲を演奏するパートから聴きました。
その後はスティーヴィー・ワンダー(!)の『キー・オブ・ライフ』で発表された「楽園の彼方へ」と、アレキサンダー・スクリアビン(!!)の「エチュード第4番」を弾いて前半は終了。
後半はさらにヴァラエティに富んだ構成で、さきごろこの世を去ったパコ・デ・ルシアに捧げる「イエロー・ニンブス」からスタート。
続いてはゲイルをステージに呼び、自作の「エヴリシング」と、マイルスやディズニーに捧げるといって「いつか王子様が」をデュオで聴かせてくれました。
そしてここからがさらなる展開です。
「自宅の居間の雰囲気でミュージック・ポエトリーをやってみましょう」とアナウンスをして、客席から希望者をひとりずつ募り、ピアノの横に用意された椅子にすわらせ、短い即興演奏を聴かせる趣向です。
まずは男性が、そして次もステージにあがったのは男性で、最後は「バランスを取ろう」ということから女性がチックの斜め前の椅子に座り、彼が相手の顔をみながら即興演奏するという、この3人には一生の思い出になるようなコーナーでした。
それが終わると、今度は「誰かと連弾しましょう」と呼びかけ、客席から有志を募ります。チックに選ばれた若者は知り合いのようで、チック的なフレーズを駆使する息もピッタリの連弾になりました。これはちょっとできすぎかな。
そして最後のパート。「チルドレンズ・ソング」から1、4、9、10、11、12番が演奏されました。
当然のことながらアンコールです。ここでサプライズ・ゲストが登場。チックの呼びかけで客席から登場したのは歌手の平原綾香さん。数年前に彼女が歌っている「スペイン」を聴き、その才能にビックリしたそうです。打ち合わせなしでジャム・セッションのようにやろうといって始まったのは当然のことながら「スペイン」。
彼女のことはテレビでしか見たことがありませんが、そのイメージとはかなり異なり、スキャットで大胆な即興をしたり、チックがソロを弾いているときはヴォイス・パーカッションでリズムを取り続けるなど、終始彼女がリードする形で、素晴らしい共演を聴かせてくれました。
鳴り止まぬ拍手はもう1曲のアンコールに繋がります。今度はゲイルも交えての「サマータイム」。こちらもふたりの個性派シンガーがお馴染みの曲を縦横無尽に歌ってみせました。
チックにはさまざまな引き出しがあります。グループでの活動も積極的で、それも常にこちらが興味を覚えるメンバーや編成での演奏を聴かせてくれます。その原点がソロ・ピアノ・パフォーマンスにある。昨日のコンサートでいまさらながらに感じたのがこのことでした。
チック・コリア ピアノ・ソロ・コンサート
【出演メンバー】
チック・コリア(p)
ゲスト:ゲイル・モラン(vo)
平原綾香(vo)
2014年6月18日 「よみうり大手町ホール」