毎年夏になると独特の歌声を聴かせに来てくれるジョイス。今年も「ブルーノート東京」で観てきました。
キャッチコピーの「サウダージ感覚溢れる歌声」っていうのがどいうものかわかりませんが、かなり難しい歌をさらりと聴かせてしまうところがこのひとの魅力です。それが心地の良さに繋がっているっていうか。
ジョイスのヴォーカルには彼女にしか出せない世界観があるっていえばいいでしょうか。ボサノヴァ特有ののんびりした雰囲気とは異なります。
ボサノヴァっていえばけだるいムードとかギターを爪弾くみたいなイメージがあります。ところがジョイスの歌は力強いですし、ギターもバチーダだけでなくストロークも用いてかき鳴らします。
中村善郎さんもそうですが、最近のボサノヴァは力強いヴォーカルとギター・プレイが主流かな? なんて思ってしまうほど以前のボサノヴァとは異なっています。
とはいっても、聴き流しているだけではそのことに気がつかないかもしれません。ロックのように明快な形でシャウトはしませんが、ジョイスも中村さんも実はかなり力強いヴォーカルとギター・プレイを聴かせてくれます。
それと、ジョイスのヴォーカルとギターはフレージングや音のずらし方が相当にアヴァンギャルドです。オリジナル以外に「3月の水」や「ジンジ」といったお馴染みのボサノヴァ・チューンも聴かせてくれましたが、こういう曲を聴くと彼女の解釈がどれほど独創的かがよくわかります。
以前からジョイスはこういうスタイルを示していましたが、今回はそれがとてもいい形で表現されていたように思います。これまでに何度もライヴに接してきましたが、今回が一番よかったです。
そしてステージ前にはインタヴューもさせてもらいました。
ぼくよりふたつ年上だったんですね。もう少し若いかと思っていました。
今回はいつものサイレント・ギターではなく、1969年に作られたアコースティック・ギターを初めて持ってきたとのこと。ステージでもいい音がしていました。
ギターはブラジルのDi Giorgio製。このギターを作ったひとは亡くなったそうですが、お店はまだあるとのこと。
【出演メンバー】
Joyce(vo, g)
Helio Alves(p)
Rodolfo Stroeter(b)
Tutti Moreno(ds)
2013年8月2日 「南青山 ブルーノート東京」 ファースト・セット