昨日観てきたんですが、こういうライヴは理屈なしに楽しいですね。ぼくが一番好きなギタリストはスティーヴ・クロッパー。高校のときに出会い、大学のときにはバイトで貯めたお金で彼が使っているギターとアンプ、同じものを買いました。でも同じ音は出なかったですけど。
いまだ、スタックスやアトランティック系のR&Bには心が躍ります。「音楽ゼミナール」でも何度かテーマにしていますし。
そのスティーヴ・クロッパーとドナルド・ダック・ダンのふたりを中心したカルテット、つまり仮想ブッカーT&ジ・MGズによる演奏が前半、そして後半にエディ・フロイドが登場。
髪の毛が真っ白なエディ・フロイドはいくつになったのでしょうか? でも声はいまだよく出ています。サム・ムーアにしてもそうですが、シャウト系のソウル・シンガーがいまも元気にシャウトしている姿が観られるのは嬉しい限り。
エディ・フロイドはいいひとなんでしょうね。当時ライヴァルだった仲間たちのヒット曲、「ソウル・マン」「634-5789」「ドック・オブ・ベイ・ザ・ベイ」をなんのてらいもなく堂々と歌ってくれました。そして最後はもちろん大ヒットした「ノック・オン・ウッド」。
エディ・フロイドはソングライターとしてもスタックスに大きな貢献を果たしていて、「ノック・オン・ウッド」は当然として、ウィルソン・ピケットの「634-5789」も彼とスティーヴ・クロッパーの共作です。
そしてスティーヴ・クロッパーは、それ以上に多くのヒット曲を提供している優秀なスタッフ・ライターでもありました。とくにオーティスの曲は、多くが彼とクロッパーの手によって書かれています。「ドック・オブ・ザ・ベイ」もしかり。
当時は、黒人音楽、それも真っ黒けなソウル・ミュージックを書き、演奏までしていたのがスティーヴ・クロッパーだったことを知ってびっくりしたものです。てっきり黒人だとばかり思っていたからです。
そんなことを思い出しつつ、「こういう音はいつまで聴けるんだろう?」なんてことも昨日は考えていました。ハモンドB-3だってそのうち使えるものはほとんどなくなってしまうかもしれず、レズリーの回転スピーカーだって現存するものはいくつぐらいあるんだろう、なんてことに思いがいたりました。
似たような音の再現はいまのテクノロジーがあれば可能でも、そもそもみんな歳を取ってきましたから、60年代に聴いたリアルなソウル・ミュージックが聴けるのもあと数年のことかもしれません。
元気なエディ・フロイドの姿を見てそんな不吉なことを考えてしまうぼくにも困ったものですが、それは反面、こういう音楽がいまも聴けることの喜びに通じています。それにしても昨日は文句なしに楽しめた一夜でした。