先週の土曜日(12月3日)に「国際フォーラム」のホールAで観てきました。これまではホールCでのコンサートでしたが、5000人収容のホールAも満席。現在、このクラスのホールを満員にできるジャズ・アーティストが何人いるでしょうか?
デビュー直後に渋谷の「JZ Brat」で聴いてから何年が過ぎたのかしら? あの時点で、すでに驚愕の演奏を聴かせてくれた上原さん。ジャズ・ピアノの概念をいとも簡単に破壊してしまったプレイとその個性に、新しい世代の到来を予感したものです。
その予感はその後に確信となり、先日のコンサートでも素晴らしいプレイに圧倒されました。フランク・ザッパ好きの上原さんですが、今回のトリオ演奏を聴きながらぼくはEL&Pのキース・エマーソンを連想していました。プログレなんです。それも70年代のプログレではなく21世紀のプログレ。
ベースのアンソニー・ジャクソンもドラムスのサイモン・フィリップスも、自分の子供のような世代の上原さんを相手に真剣、それも必死でプレイしていた姿が微笑ましいというか、改めて上原さんの凄さを実感したというか。
今回はこのトリオで発表した最新作『VOICE』にちなんだツアーです。3月から始まったツアーは世界中を回り、そしてこの日、東京に。3人の息もぴったりですが、上原さんが「毎回違った演奏ができる。今日はどんな演奏になるのか自分もわくわくしている」の言葉どおり、奔放で即興的。これがいまのジャズ(というより音楽)のひとつの理想的な姿かもしれない、なんて思いました。
15分ほどの休憩を挟み、7時から始まったコンサートが終わったのは10時近く。その間、濃密な音楽を存分に堪能することができました。充実したいい夜が過ごせた満足感を覚えながら、岐路についたことはいうまでもありません。