少し前ですが、この映画を観てきました。クリント・イーストウッドは役者より監督のほうが才能ありますね。今回の映画にも感心させられました。
この作品がほとんどアカデミー賞で話題にならなかったのが不思議です。「臨死体験」や「死者との対話」を扱った内容はいつものイーストウッド作品と毛色が違います。ですが、心に残るいい映画でした。
このところの「チェンジ・リング」にしても、この作品にしても、イーストウッドが扱うテーマは実に興味深く、観ていて共感を覚えます。ぼくはこれまでに、「これで死ぬのかな?」と思った体験が3度あるんですが(なんと悪運の強いことか)、そんなときの思いが映画を観ていて甦りました。
この映画で初めて知ったことがひとつ。外国にも、日本で言うところの「三途の川」みたいなものがあるんですね。あれは日本人特有の死生観かと思っていました。でもぼくの場合、これまでの人生が走馬灯のように頭の中を巡ったことはあっても、「三途の川」は見たことありません。
それはそれとして、いつものことですが音楽もよかったです。イーストウッドの映画音楽といえばレニー・ニーハウスが有名ですが、最近ではそこに本人と息子さんのカイル・イーストウッドも作品によっては名を連ねるようになりました。
それで今回は誰が担当しているのかとエンドロールに目を凝らしていたら、出てきた名前はクリント・イーストウッドひとりだけ。映画同様、心に染み入るメロディが印象的で、映画館を出たあともしばしその余韻に浸っていました。
「アカデミー賞視覚効果部門」の候補になった津波のシーンはさすがに凄かったです。そのシーンも含めて、こんなヒューマン・ドラマを作り上げたクリント・イーストウッド、80歳、この創造性には頭が下がります。