昨日のことですが、「国際フォーラム」のホールCで上原ひろみさんのソロ・コンサートを聴いてきました。9月に出たソロ・アルバム『Place To Be』に合わせてのコンサートです。彼女のライヴを聴くのは「東京Jazz」以来ですが、相変わらず個性的な演奏に圧倒されました。
今回は、世界中を旅している上原さんが、印象に残った土地をテーマに書いたオリジナルが中心の構成です。アルバムも素晴らしかったですが、そのライヴ・ヴァージョンではさらなる音楽的な飛躍や冒険が認められ、「やはりライヴは格別」の思いを強くしました。しかも、一切のPAを使わない生音のコンサートです。それだけに表情豊かなピアノの音色も楽しむことができました。
毎回書いていることですが、彼女の演奏を聴いていると、いろいろな意味で触発されます。月並みですが、「がんばろう」とか「生きているって楽しい」とか「ジャズを聴いてきてよかった」とか、そんなことですが。平凡な発想しかないぼくでも、平凡なりに前向きになれます。
上原さんにはしばらく前にインタヴューをさせてもらいました。そのときの印象的だった言葉を紹介しておきましょう。
「ありがたいなぁって思ってますけど、常にまだまだだなとも思っています。とにかくこつこつ努力あるのみですから。評価は時代や運というものが生むものなので、いろんなことに付随することで変化します。ただし、実力っていうのは変化しないものですから。自分でこつこつやっていけば必ずステップアップしていく唯一の嘘をつかないものなので、そこだけに焦点を定めています。去年よりもいろんなものが表現できるように、こつこつとやっていけばいいと思っています」
これは世界中で高い評価を受けていることについて、「どんな気持ち?」って訊ねたときの言葉です。ぼくは上原さんのこういう謙虚さに心を打たれました。決して驕らず、「常に自分はまだまだ」と思う気持ち。たしか、以前どこかでマイケル・ジャクソンも似たような発言をしていたと思いますが、このふたりは言葉だけでなく、本当にその通りの日々を過ごしているんでしょう。だから言葉に説得力があるんですね。
インタヴューでは「自分がぐっときたものに、同じくぐっときてくれるひとを探す旅ですね」とも語っていました。ぼくも「ぐっとくる」ひとりでありたいと思いますし、昨日のコンサートではまさしくぐっときました。
そしてアンコールで聴いた「Place To Be」の無垢なるものの美しさ。こういう表現ができるひとはきっと純粋で無邪気で世俗に毒されていないんでしょう。世俗にまみれているぼくでも、少しは心が洗われた気持ちです。