昨日観たこの映画、ぼくは素直に感動しました。リハーサルのシーンを繋いでいるだけで、作りはいたって簡単。MJのインタヴューがあるじゃなし。練習風景ですから、ドラマティックな展開もなければ、とんでもない問題が発生することもなし。ひたすらMJとキャストやスタッフが懸命になって、これまでに誰も観たことも聴いたこともないステージを作り出そうと努力する。その姿に胸が熱くなりました。
「どうして死んじゃったのよ~」
映画が始まって、すぐにそう思いました。世界中からオーディションを受けに集まったダンサーちの言葉で始まったこの映画。彼らに限らず、出演者もスタッフもMJと仕事ができる喜びを、体で、言葉で表しています。そして、どれほど多くのひとたちが彼から影響を受け、生きる喜びを教えられてきたか。その当の本人が死んでしまったとは。
MJとの共演に胸をわくわくさせていたキャストやスタッフは、その死に接してどんな思いがしたでしょうね。苦しいリハーサルに絶え、ようやく先が見えてきたときにすべてが消えてしまったのですから。その喪失感から立ち直るのは大変だと思います。
でも、ひたすらロンドン公演に向けてリハーサルを繰り返しているMJに死の影はまったく感じられません。創造の喜びに浸っていたんでしょう。引き締まった体から推測するに、かなりの精進をしていたに違いありません。でなければ、あんな動きはできないでしょう。それにしてもリハーサルでのMJは輝いていました。
何かを作り上げていくことの大変さ。あれだけ成功したMJが真剣にに音楽とダンスに向き合い、一切の妥協を許しません。それでいて周囲への気配りも怠らない優しさ。驕りや横柄なところはまったくありません。その姿を観ているだけで心が癒されました。周囲のひともMJを大切にし、尊敬しています。全員が信頼関係の上で成り立っていたリハーサル。
ここまで本気で一所懸命になって、しかも本格的な規模のリハーサルを重ねていたとは知りませんでした。ぼくは完成形のコンサートを観るより、このリハーサル映像が観れたことで、MJの真の姿が理解できました。ものごとに夢中になっている姿って、どんな場合もかっこいいですね。
あることないこと、さまざまなことが伝えられていたMJ。しかし、音楽の現場では本当の姿をさらしていたんでしょう。音楽に向かうときの、子供のように純粋でひたむきなMJの姿に目頭が熱くなりました。ぼくはそれほどMJに思い入れはありませんが、彼の音楽は昔も今も大好きです。
家に帰ってチェックしてみたら、ジャクソン5時代から最後のアルバムまで全部ありました。おまけにDVDやビデオも大半が残っていましたし、ボックス・セットとか別テイクの入ったシングルCDなんかもどさっと出てきたので、自分でもびっくりしています。そういえば、香港に行ったときは香港盤も買っていましたから、あのころはかなり好きだったんでしょう。
スキャンダルまみれになったことで、MJ熱が冷めたことを思い出しました。それでもとことん付き合うのが本当のファンですから、ぼくは彼らにまったくおよびません。そのぼくがこれだけ感動したということは、本当のMJファンの感動は言葉で言い表せないほど大きいんじゃないでしょうか。
何かクリエイティヴな仕事をしているひとには、この映画、いろいろな面で思うところがあるんじゃないでしょうか。ぼくはそんなにクリエイティヴな人間じゃありませんが、それでも強く触発されましたから。マイケル・ジャクソンというアーティストが同じ時代にいて、リアルタイムでその素晴らしさを何度か実際に体験できたことの幸せ。それをいましみじみと感じているところです。