先週の金曜日はNo Name Horses、土曜日は母校の「アメリカ民謡研究会」のコンサート、そして日曜日の昨日は日比谷の野音で山下洋輔トリオを堪能してきました。
「アメ民」のコンサートは40年以上前の雰囲気が再現されて、あのころ毎週のように観に行っていたフーテナニーやシングアウトが懐かしく思い出されました。そのうち、駒場の「ONGAKUゼミナール」でもフーテナニーの時代を特集しなくては。
それで昨日のコンサート。企画が発表されたときから行きたくて行きたくて、指折り数えてこの日が来るのを待っていました。初代の山下トリオが結成されて40周年。早いものです。
40年はこのところぼくのキーワードで、先日の「アメ民」でもステージに立ったいくつかのバンドがさかんに「40年ぶりのステージ」とかいっていましたし、この間紹介したサリナ・ジョーンズは40年ぶりの再会で思いを成就させました。ぼくも高校を卒業して40周年で、5月には「Happy 40」を記念した同窓会がありました。
あれから40年。当時の「新宿ピットイン」で何度山下トリオの演奏を聴いたことか。ぼくは「新宿ピットイン」に通いたくて新宿の大学を選んだ男ですから、結成時からこのトリオを観てきました。
学生運動が大きな盛り上がりを示していたころの新宿。あの時代の空気に山下トリオのフリー・ジャズはとてもよく似合っていました。そして、昨日のステージは日比谷の野外音楽堂。ここでも山下トリオはよく聴いた覚えがあります。ロック・バンドに混ざって登場してくる彼らには、まるで全員に真剣勝負を挑んでいる雰囲気がありました。ブーイングを受けたこともあれば、まったく反対で大喝采を浴びた日もあります。
そうした場面のひとこまひとこまが、彼らのステージを見ながらよみがえってきました。あのころの過激なプレイが、いまはなんと平和な響きを有していることか。そこに40年の隔たりを感じました。
フリー・ジャズは反逆の象徴だと、当時は思っていましたから。でも、反逆っていうのは裏を返せば平和への願いに通じます。日本はこの40年で大きな発展を遂げました。僕自身、考えも感じ方も変わったはずです。でも、山下トリオを聴いて胸騒ぎを覚えるのはいまも昔も同じです。
きっと、彼らの演奏は精神を開放してくれるんでしょう。フリー・ジャズとは自由なスピリットで演奏すること。こう教えてくれたのはキース・ジャレットです。山下トリオの演奏は、まさにその通りの内容です。
昨日は、これまた懐かしい相倉久人さんの司会でステージは進行しました。「新宿ピットイン」や野音で山下トリオを聴くときはいつも司会は相倉さん。今年で御年77歳。かくしゃくという言葉が逃げていくほどお若いいでたちと話し方にびっくりです。
40年前の相倉さんはほんとうにかっこよかった。そのかっこよさが、いまもまったく変質していません。ぼくは77まで生きられないでしょうが、これから彼のような年のとり方ができたら最高です。
コンサートは、いまに近い時代の山下トリオ(といっても1980年ごろのユニットですが)から初代トリオにさかのぼっていく形で行なわれました。オリジナル・メンバーの全員が伝説のミュージシャンといっていいひとたちです。その彼らの、以前にも増して奔放な演奏に圧倒されました。
メンバーと演奏した曲目は以下の通りです。菊地成孔さんも参加していますが、彼はオリジナル・メンバーで唯一物故した竹田和命さんの役割を演じてくれました。
【第4期】
山下洋輔+林栄一+小山彰太=林栄一のオリジナル(回想他)
山下洋輔+林栄一+小山彰太+菊地成孔=円周率
山下洋輔+菊地成孔+小山彰太+国仲勝男=ジェントル・ノヴェンバー
【第3期】
山下洋輔+坂田明+小山彰太=バンスリカーナ、ゴースト
【第2期】
山下洋輔+坂田明+森山威男=キアズマ、クレイ
【第1期】
山下洋輔+中村誠一+森山威男=木喰、ミナのセカンド・テーマ
【アンコール】
全員=グガン
6時半過ぎでしょうか、「キアズマ」が演奏されているときに空を見上げたら綺麗な虹が出ていました。写真ではわかりませんが、この上にもう1本虹がかかっていて、二重の虹が浮かんでいました。
この虹を眺めていて、そしてステージでは青春時代に熱い思いをたぎらせていたバンドが凄い演奏をしていて、おまけにオープンエアの会場を満たす空気とそよ風が心地よくて、最近のぼくは幸せな気分にいるんですが、そのことに拍車をかけるかのようにひとり最高の夕暮れを満喫していました。
今日は、もう少ししたら「ビルボード東京」でブライアン・ブレイドのライヴを観てきます。野音までは家から歩いて40分強、「ビルボード東京」なら30分というところでしょうか。水分補給に気をつけながら行ってきます。