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しばし、ウブド王宮内の撮影をさせていただき、静かに退出。 手招きをして中に入ることを許してくれた、古老はもうそこにはいませんでした。 あの老人はもしかすると、スヤサ氏だったのでは? そんなことを考えつつ、外へ。 時刻は朝の5時。 そのまま王宮横の通りを進んでいくと、 今回、共に火葬される68人の村人たちがまつられる一角があり、 昨晩からずっと寝ずに付き添う家族たちの姿が。 しばらくすると、僧侶の祈りにあわせ儀式が始まりました。 祈りの言葉と共に、家族は一斉に故人の遺影に向かって静かに合掌をくり返す。 その後、彼らは飾っていた供え物を抱え、村の火葬場へと一斉に移動を始めました。 実は、68人の遺体はすでに一度、土葬から掘り起こされ火葬にされています。 この日、正式な儀式を受けることによって無事、天界へと旅立つことができるのです。 数百人はいたでしょうか。 ガムランの演奏もなく、無言で夜明け前のウブドを火葬場に向かって進む人々の行進は胸を打つものがあります。 彼らの後ろをそっとついて行きます。 ウブド村の火葬場は、王宮からラヤ・ウブド通りをチャンプアン橋のほうに歩いて10分ほどの坂の上にありました。 これから行われるのは、ニュカッ・カランNyukat Karangと呼ばれる儀式。 火葬を行う位置を決めるための白線をひく行為です。 合図のもと、真っ白な一本のひもが手渡され、それを「サトゥ、ドゥア、ティガ(1、2、3)」のかけ声にあわせて地上にパンと打ちつける。 昼から行われる火葬はすべてこの中で行われるようです。 まるで、現世とを分ける結界(けっかい)のよう。 それが終わると、しばし僧侶の祈りがあり、儀式は終了。 供え物はすべて置き去り、家族はいったんウブドへと戻ります。 再び王宮前に着いた頃は、朝の7時頃。 周囲は明るく、バイクや人の往来も激しくなってきています。 いつものウブドの風景ですが、 スヤサ氏のバデが驚くほどの高さでそびえています。 やっぱりこうやって見ると、圧倒的な大きさです。 王宮横では、道路脇の街路樹の切り倒しが行われている最中。 今までにない巨大なバデとランブーが王家の火葬場まで練り歩くため、邪魔な木を切り倒しているのです。 その後、電線もカットされ、ウブド一帯は葬儀終了まで停電に。 こういうところがバリはすごいですね。 なによりも宗教儀式が優先されるのですから。 次の儀式は10時頃からなので、わたしも一度、ホテルに戻ることに。 火葬場にいた数時間でかなり、重い気分になっていたのでリフレッシュが必要です。 明るくなったモンキー・フォレスト通りを歩いていると、 途中、サッカー場の広場で村人のためのランブーとバデの準備が。 カーストによってランブーは牛ではない場合もあるそうで、さまざまな姿のランブーが出番を待っています。 どれもすべて村人の手作り。 それもあと数時間で一瞬のうちに焼き尽くされます。 ホテルへ戻り、まずはスタッフに頼んで浄めの塩をもらう。 肩、足元に、さらにカメラと三脚にも塩をひとふり。 これで少し、気持ちがスッキリしてきたよう。 シャワーを浴び、 気持ちを切り替えて、いよいよこれからが葬儀のハイライトです。
by naoko_terada
| 2008-08-09 04:37
| トラベル
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Comments(2)
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carambola at 2008-08-10 11:42
今回は渡バれなかったけど,naokoさんのレポートを見ていると
まるで一緒にその場にいたような気分になれます. やっぱり,人が一人この世から消えるというのは 膨大な量のエネルギーが必要なんだなぁ…って改めて思います. この世の中に存在していた時間,そしてその中身が濃いほど エネルギーの大きさも比例していくような… 最近多く起こる悲惨な事件の数々. 命の重さは本来量れるものではないけど, こういった儀式一つ見るだけでも その重さを感じることが出来ると鯔は思っています.
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naoko_terada at 2008-08-17 06:05
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筆者のプロフィール
寺田直子(てらだなおこ)
トラベルジャーナリスト。旅歴30年。訪れた国は90ヶ国超え。女性誌、旅行サイト、新聞、週刊誌などで紀行文、旅情報などを執筆。独自の視点とトレンドを考えた斬新な切り口には定評あり。日本の観光活性化にも尽力。著書に「ホテルブランド物語」(角川書店)」、「泣くために旅に出よう」(実業之日本社)、「フランスの美しい村を歩く」(東海教育研究所)など。 問い合わせメール happytraveldays@aol.com インスタグラム Happy Travel Days 寺田直子 ツイッター ブログパーツ
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