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今年もいろいろなお宿にうかがいました。 どこも魅力にあふれ、ゲストに心地よい滞在と楽しい思い出を作って帰ってもらうため一生懸命がんばるご主人たちがいる。 かけがえのない日本の財産です。 その中で今年、最も印象に残ったのがこちら。 青森県・八戸市にある新むつ旅館です。 東北初のダイニングトレイン、TOHOKU EMOTIONに乗車するのに伴い、八戸で一泊した際に選びました。 普通の住宅街を歩いていると、まるでタイムスリップしたかのようにそこだけ異空間があらわれます。 近所のニャンコが玄関番でお出迎え。 明治31(1898)年創業。 前身は「新陸奥楼」という遊郭です。 建物は登録有形文化財に指定され、現役の旅館としての存在は珍しいそう。 玄関を入るとこんな感じ。 いい感じに鄙びています。 たまらないです。 二階が座敷です。 かつてはここで華やかな宴会が毎夜、行われていたのかと思うと感慨深いです。 ちなみにこの日の宿泊はわたしだけ。 本当は断ろうかと思ったけど、夜に宴会があるのでごはん作るの一緒だしね、だからお客さん受けたのよ。と快活に笑う女将さん。 ラッキー。 数日前に電話で、「東京から女ひとりでの宿泊なのですが大丈夫ですか?」とたずねたときもこの女将さんでした。 「ああ、はいはい大丈夫ですよー」 そう、屈託なく答えてくれた応対がとても気持ちのいいものだったので、来る前からここはきっといい宿だと勝手に思っていました。で、やっぱり正解。 大広間には今日の宴会の席が設けられていました。 貸座敷というのですね。 当時の誘客名簿が広間に並べられています。 中身がすごいです。いつ、いくらというのはわかるのですが、人相、年齢、着ていた着物まで詳細に記録されています。 夜から翌日の午前中までというのが多く、遊興費は壱円が多いです。 当時の一円は約4000円とか。 意外にお安いかも。 でも、このあたりだともうちょっと高い感じでしょうか。 花街としての栄華を感じる写真も。 北国らしい色白の美人さんが多い。 顔立ちから見て10代ですね。もっと幼い子供たちの姿も。 これが私のために用意された客室。 トイレ、お風呂はもちろんなしです。 釘隠しに鶴などの金物の意匠が施され、随所にある凝った造りにかつての羽振りのよさがうかがえます。 夕食は厨房が見える居間のようなお食事スペースで。 もちろん、わたしひとり。 耳はまったく聞こえないけれどしゃきしゃきと働く90超えのおばあちゃんと女将さんが上で始まった宴会の料理を作っています。 わたしは瓶ビールをいただいて、料理をつまみに東奥日報を読みつつNHKニュースを。 ときおり女将さんと、「明日は雪かもしれないねぇ」などとおしゃべり。 外はしんと冷えてきたけれど、ストーブの暖と人のぬくもりで温かい。 これで1泊2食6825円。 観光客に人気の魚菜小売市場が近いので、そっちで朝食を食べるというと300円引いてくれます。 場所は八戸線「小中野駅」か、「陸奥湊駅」から徒歩10分ほど。 陸奥湊駅にはタクシーがいるのでそれを利用してもいいと思います。 勝手に旅館遺産に認定の、新むつ旅館。 TOHOKU EMOTIONとあわせて利用してみてもらいたい、愛すべき日本の宿です。
by naoko_terada
| 2013-12-30 16:05
| 東北応援!
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筆者のプロフィール
寺田直子(てらだなおこ)
トラベルジャーナリスト。旅歴30年。訪れた国は90ヶ国超え。女性誌、旅行サイト、新聞、週刊誌などで紀行文、旅情報などを執筆。独自の視点とトレンドを考えた斬新な切り口には定評あり。日本の観光活性化にも尽力。著書に「ホテルブランド物語」(角川書店)」、「泣くために旅に出よう」(実業之日本社)、「フランスの美しい村を歩く」(東海教育研究所)など。 問い合わせメール happytraveldays@aol.com インスタグラム Happy Travel Days 寺田直子 ツイッター ブログパーツ
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