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4月中旬、すっかり暗くなった気仙沼駅でわたしを待っていてくれたのは、前々日、石巻で知り合ったTさんでした。
※知り合ったいきさつは、祝 ピーチ 関空~仙台就航!桜を追って、仙台・宮城へ!④をご参照ください。 ![]() 駅でわたしをピックアップしてくれたTさん、暗くなった港のまわりを寄り道したあと、連れていってくれたのが、そう、一昨日に話題になった気仙沼を代表する居酒屋「福よし」さん。目印は、砕ける波に向かい合った「鯛の鯛」の暖簾。 カッコイイ! あ、「鯛の鯛」とは、鯛など硬骨魚に特有の骨の一部で、形が鯛に似ていることからこのように呼ばれています。江戸時代は「鯛中鯛(たいちゅうたい)」と呼ばれ、おめでたい鯛の中にある縁起ものとして喜ばれていたそうです。 ![]() 重厚さと温かみのある空間は、番屋のようにも見えます。4月の冷え込んだ気仙沼の夜気にあたった体を「いらっしゃい」の声が包み込みます。 ![]() カウンターは立派な無垢の一枚板。 奥には岩手県・江差の岩谷堂箪笥がどっしりと構えています。 ![]() まずは、こちら。 地元・気仙沼の「男山本店」の純米大吟醸。 「男山本店」も被災されましたが、いち早く再開し、気仙沼を盛り立てる蔵元です。 ![]() 最初に出てきたのがイカのわた焼き。 見た目はちょっと、ですが、わかる人にはわかる絶品の旨さ!クツクツと香ばしい匂いを漂わせながら出来上がるのを見守りつつ冷酒をチビリ。たまりません。。。 ![]() 次にこちら。 毛ガニ一杯ぶんをほぐしてカニみそであえたもの。お隣の卵焼きと共に、これも最高に美味しい。 ![]() 刺し盛りもみごとです!右手前は何だかわかりますか? サメの心臓。気仙沼ならではの珍味です。 ![]() こちらが、「福よし」のご主人。 胆力のあるいい顔をされていらっしゃいます。 ![]() そしてこちらがTさん。 「ええ、写真、いいよ撮らないで」。 でも、パチリ。 ピンクリボンのバッチがナイス。 いい笑顔です。 ![]() この夜のチョイスはすべてTさんとお店におまかせ。 わたしは「美味しいっ!!」と悶絶しつつ日本酒をいただくだけ。一番、楽しいお役目です。 Tさんは地元なので、もちろんご主人とも懇意。わたしを連れてきたいきさつを語りつつ一献。隣にいあわせた方との会話も始まり、カウンターはにぎやかで温かな雰囲気に。 ああ、いいなぁ。 お酒の酔いと人の情けに酔っていきます。 ![]() ところで「福よし」を一躍、伝説の店にしたのが常連客から「日本一」と称される焼き物。 この夜は、みごとなホッケと吉次(キンキ)をチョイス。 ![]() ![]() こちらが焼き場。 専任のスタッフがじっくりと「遠火・強火」という焼き魚のセオリーにそって完璧に焼き上げていきます。焼き具合によって、魚の位置を絶妙にずらしていくという丁寧さ。 ![]() 魚が焼きあがるのを待ちながら、もう1本。 今度も地元・気仙沼の蔵元「角星」の福宿り。 ![]() ![]() しばし待つこと。ドカンとカウンターに置かれたのがみごとに焼きあがった吉次とホッケ。 ハフハフと、こんがりと炭火で焼かれた皮にはしを入れて、湯気をたてる白身を口に。 パリッというよりは「サックリ」と表現したい絶妙な皮の焼きめと、脂ののった白身の甘味と弾力。塩加減も文句なし。ホッケも今まで食べていたものとはまったく異なる肉厚の旨みにビックリ! まさに、日本一の焼き魚です。 ![]() あ、こんなのも出てきました! 気仙沼といえばカキです。おおぶりなカキの炭火串焼きなんてさすがに初めてです。ひとくちほうばると、ジュワッと潮の香りのする滋味が口いっぱいにあふれます。うわぁ、これはたまらない。泣きたくなるほど美味しいです。 ![]() いやぁ、大変おいしくいただいた吉次さん。もうちょっとつつきたいところですが、「そのあたりで」と言われます。え、はしたないかしら? ![]() そんなわたしの前にゴトンと大きな丼ぶりいっぱいの透き通ったスープが。 ![]() そうなんです。 先ほどの吉次の食べおわった骨をエイッとばかりにザブリとスープの中へ。 漁師の方が命がけで捕ってきた魚を余すことなくすべて食べてもらいたい、そんなご主人の心が見える演出です。そして、当然のごとく美味しい!炭火焼きの香ばしさが最後まで余韻を残す一級の味わいです。 震災当日、Tさんも被災されました。 会社も被害にあい、みなさん2週間、お風呂に入ることもできなかったと話してくれました。 その後はお仕事柄、被災された方のお世話に奔放されたそうです。 港近くにあった福よしもすべてを流されました。 その中で、「もう一度」と、港沿いに新たに店を再建。地元はもちろん、日本中の福よしファンを歓喜させました。新しい店はなるべく前と同じように。そして、より港の近くに。気仙沼港を見渡す場所で、日本一の魚、料理を出す心意気です。 この夜、Tさんは「客人だから」といってご馳走してくれました。 仙台の友人から福よしさんのことは推薦されていたので、この晩、間違いなくわたしはここに来たはずです。でも、それは一見のひとり客という存在でしかなかった。 石巻での出会いがなければ、Tさんに連れてきてもらうこともなく、こうやってご主人と飲み交わすこともなかったと思うと、人の縁の不思議さとありがたさをただただ、感じ入ります。 美味しい酒と料理。 そして何よりも気仙沼で背骨のある仕事、暮らしをされる人たちに囲まれた時間を過ごさせてもらったことが何よりのご馳走。 Tさん、福よしのご主人。 とても楽しい夜でした。心から感謝いたします。 また、うかがいますね。 ありがとうございました! ![]()
by naoko_terada
| 2013-07-07 23:31
| 東北応援!
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筆者のプロフィール
寺田直子(てらだなおこ)
トラベルジャーナリスト。旅歴30年。訪れた国は90ヶ国超え。女性誌、旅行サイト、新聞、週刊誌などで紀行文、旅情報などを執筆。独自の視点とトレンドを考えた斬新な切り口には定評あり。日本の観光活性化にも尽力。著書に「ホテルブランド物語」(角川書店)」、「泣くために旅に出よう」(実業之日本社)、「フランスの美しい村を歩く」(東海教育研究所)など。 問い合わせメール happytraveldays@aol.com インスタグラム Happy Travel Days 寺田直子 ![]() ![]() ツイッター ブログパーツ
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