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翌日は快晴! フタバインさんの日の当たるダイニングで、美味しい朝食をいただき、 この日は石巻の街を桜を探しつつ、歩いてまわる予定。 まずは、フタバインから歩いてすぐの大嶋神社へ。 旧北上川に面した神社。 近くには「袖の渡り」と呼ばれ歌枕に出てくる名勝、「住吉公園」がありますが、わたしがうかがった4月中旬は津波の影響が残り、残念な姿。 それでも神社の脇の桜には、可憐なつぼみが。 旧北上川沿いをそのまま、てくてくと歩きます。 やがて、橋の向こうにそびえる建物が。 はい、そうです。 石ノ森萬画館です。 震災後、休館していましたが私が訪れたひと月前ほどに再開したばかり。 しかし、なんとこの日は休館日。 知らなかった。。。涙 萬画館の近くの「石巻まちなか復興マルシェ」も定休日で、ダブルパンチ。 みなさん、石巻に遊びに行くときは火曜は避けてくださいね。 ちなみに石巻駅からのびる駅前通り、立町商店街などにはご存知、仮面ライダー、009メンバーなど石ノ森ママンガのヒーロー&ヒロインたちの像があります。 懐かしい! ときおり地図を見ながら、町を歩く。 4月半ばの石巻の港周辺は、まだ震災の痕をクッキリと残していました。 その中で、営業を再開されている店がポツリ、ぽつりと。 ここもそのひとつ。 「壽屋酒店」さん。 こちらも津波の被害を受けましたが、再開された様子。 日本酒好きの父のために、地酒でも所望しようかと、中に入ると。 ご主人がひとりで。 「あら~、宅急便ぃ?東京に送るのぉ?う~ん、今、おかあちゃん留守で、おじさんわかんないのよ~」 お薦めでも聞いて東京に送りたい、と告げたわたしにおじさんは困り顔。 でも、その困り加減がなんともお茶目。 「じゃあ、これから桜を見に日和山まで行くので帰りに寄りますね」 そう告げて、後にする。 「そお、そうしてくれるぅ。ごめんねー。早く帰ってくればいいんだけんど。。」 さらにまゆげを下げて申し訳なさそうにするおじさん。 全然、大丈夫ですよ。 ところどころで、道を聞きながら目指すは日和山公園。 芭蕉も訪れたことのある日和山は、石巻市内を一望する公園で、桜やツツジの名所として愛されています。震災時には、多くの方の命を救った場所でもあります。 ゆっくりと歩いて上までのぼると、ぱっと視界が開けます。 青い空が大きく、みごとです。 まずは、市内をみわたす鹿島神社におまいり。 石巻で暮らすみなさん、東北のみなさんが早く、元気になりますように。 境内脇の1本の桜の木が、周辺よりもひとあし早く、開花。 やや薄墨色に思える花の可憐さが、けなげです。 公園全体も、もう間もなくといった開花具合。 わたしが東京に戻ったあと、一気に咲き出したようです。 ここから眼下に望む石巻は、まだ復興の途中です。 それでも、青空の中、ほころびかけた桜のつぼみは見る人たちの顔をやわらかく微笑ませてくれていました。 「今年も咲いてくれてありがとう」 誰もがきっとそう、思っていたことでしょう。 この日、日和山を訪れていた地元の方、県外のからの方たちは、もうまもなく満開となる桜の木々を愛おしそうに見上げていました。 展望エリアの脇に茶屋処が。 店内にはラーメンを食べる孫とおばあちゃんの姿。外には名物、石巻やきの文字が。あ、これ、食べるの忘れてました! ということで、軽く腹ごなしを。 食べるときに自分でソースをかけて味付けするのが石巻やきそばの特徴とのこと。卵焼きを乗せるそうですが、ここのは卵なし。見た目どおり、素朴な味のやきそば。 ごちそうさまでした。 桜を愛で、ご当地グルメも味わったので、再びゆっくりと坂道をおりて市内に戻ります。 「壽屋酒店」のおかあさん、戻ってきたかな。 と思いながら、酒屋のほうへ歩いていくと、もうひとつ目に飛び込んできたのがみごとな看板。 ぴちぴちと威勢のいい鯛が踊る看板は、「魚長」さんのもの。 金華山沖の旬の魚を料理人たちが仕入れにくる有名店。こちらも震災後、再開をして営業をされています。 昨晩の「汐だまり」さんでいただいたつまみを思いだし、おもむろにお買いものタイムモード! ウニ、シャコ、アワビ、タコに吉次(キンキ)を大人買い。これも、クール便で東京に送ってもらいます。東京にいる家族に石巻の旬を味わってもらいましょう。 再び、「壽屋酒店」さんの扉を開けたのは、お昼を過ぎたあたり。 「あら」 扉を開けたわたしを見たおじさんは、さっとまゆげを下げてにわかに困った表情に。 「まだねぇ、帰ってこないのよぉ」 なんとなくそうかも、と予想をしていたもののやはり。 「お茶でも飲んで待っててよ~」、というおじさんの言葉をありがたく受けながらも、この日は石巻から気仙沼線を使い、海岸線から気仙沼へ行こうと思っていたので、そろそろ出発しないとダメ。 「じゃあ、おとうさん、お酒を一緒に選んでもらえますか?そして住所を書きますから、申し訳ないですが請求書と一緒に送ってもらえますか。明日でもいいですから」 そう、お願いして選んだのはやはり「墨廼江(すみのえ)」のこの2本。 昨晩、飲んでおいしかったので、ぜひ父に味わってもらおう。 「ごめんなさいねぇ。帰ってきたらちゃんと送るからね。ありがとね~」 丁寧にわたしにおじぎをするおとうさん。 こちらこそ、本当は「がんばってくださいね」と言いたいけれど、あえてそれは封印。 「桜、咲き出してキレイでした。また、うかがいますね」 心からそう、伝える。 店の扉をあけて、外に出る。 おとうさんも一緒に出てきてくれて、「ありがとね。また、来てくださいねぇー」とほほ笑む。 お礼をして歩き出す。 ふと、後ろをふりむくと、おとうさんがこっちに向かって笑顔で大きく手をふってくれていた。
by naoko_terada
| 2013-06-24 22:01
| 東北応援!
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筆者のプロフィール
寺田直子(てらだなおこ)
トラベルジャーナリスト。旅歴30年。訪れた国は90ヶ国超え。女性誌、旅行サイト、新聞、週刊誌などで紀行文、旅情報などを執筆。独自の視点とトレンドを考えた斬新な切り口には定評あり。日本の観光活性化にも尽力。著書に「ホテルブランド物語」(角川書店)」、「泣くために旅に出よう」(実業之日本社)、「フランスの美しい村を歩く」(東海教育研究所)など。 問い合わせメール happytraveldays@aol.com インスタグラム Happy Travel Days 寺田直子 ツイッター ブログパーツ
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