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長友啓典
Keisuke Nagatomo -------------------- 1939年大阪生まれ。1964年桑沢デザイン研究所卒業。日本デザインセンター入社。1969年黒田征太郎とK2設立。 エディトリアル、各種広告、企業CI、及びイベント会場構成のアートディレクションを手がけるほか、多数の小説に挿絵、エッセイ連載など、現在に至る。 日本工学院専門学校グラフィックデザイン科顧問 、東京造形大学客員教授 ![]() ![]() Translation to English -------------------- 装丁問答イッキ読み -------------------- ![]() 「PIKADON」 衣食住をテーマにイノチのことを考えます。 お友達ブログ 山村幸広さん 南川三治郎さん 勝手にロワイヤル!! 宮澤正明さん 貫場幸英さん お友達ホームページ 新正卓さん 以前の記事
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![]() 装丁問答.24 数は質を凌駕する 小説の装丁を依頼されてまずする事は、原稿なりゲラを読み、大雑把なイメージを創る事から始める。その原稿が書き下ろしのものなのか、雑誌などに連載されていたものなのか? はたまた十年以上も前に習作として書かれたものなのかを思い巡らす。伊集院静さんに聞いたものだが、デビューする前に百編あまりの小説を書き溜めていたと言う。編集者の人が故郷の実家を訪ねたら、柳行李いっぱいの生原稿が出て来たそうだ。歌手の井上陽水さんもそんな話をされているのを何かで読んだ。若い頃は一日十曲ぐらいは平気で泉のごとく涌いてくる楽曲を書きとめていたら、千曲あまりがデビュー前に溜まっていたとあった。絵の場合も展覧会をして華々しくデビューをしたものの肝心の作品がなければ話にならない。枚数を描いてどれだけ溜め込むかが重要なところだと思う。 常々自論なんだけど〝数は質を凌駕する〟と信じている。表現者にとっては鍛錬、訓練で勝ち取る作品の数が勝負なんだから。作家がストーリーのイメージを創り、型にする迄の時間はワインなどで言われる熟成の時だと思う。この溜め込んだ作品群はさしずめ、ビン、樽に詰めて蔵に寝かせるのと同じ事だ。書き下ろしと云えども作家の中で熟成の時間は計り知れないものがある。その依頼された作品の大雑把なイメージを読み直し、熟成されたヒダをときほぐしてイメージを修正していく作業は装丁するものにとって醍醐味だ。ここのところが楽しい時間帯となっている。作家が持っている装丁のイメージを、読者がこの本を読んだ時のヴィジュアルなイメージを、どれだけ心地よく裏切れるか、ここが腕の見せどころ、イメージが想定内のものでなく「アレッ」と思わせるものにするかの標準を定める。 ![]() 僕は釣りというものをした事がないのだが、可成り興味があってTVの釣り番組は見る事が多い。素人が思わぬ大物を釣り上げる時もあるが、おおむね名人と言われる人達が確実に釣果を上げている。それは何と呼ぶのか知らないが、海の底までが何メートル、何百メートルだとすれば、この魚のえさは何メートル近辺まで伸ばし、これだと海面の近いところなのでえさは何々が良く疑似餌だとこういうものが良しと、入念なチェックをした後で仕事にとりかかる。これが釣果を上げている要因だと思う。ブックデザインと共通するところがある。今は魚群探知機などと便利なものがあるが、漁師さんの永年のカンで穴場はここと探りあてていたはずだ。さしずめ、これはマーケティング、市場調査というところか。ターゲットは男か女か若いのか年輩なのか、の的をしぼりデザインにとりかかるのと同じく、釣りの場合はえさ、針の位置をその魚によって先程の話じゃないが、名人が経験則とカンで決めていく。えさの部分は表紙のヴィジュアルと見た、写真にするか、イラストでいくか、色の感じはどうか。紙の質は文字は手書きか、いずれのフォントにするか、の検討は釣りの準備段階の時の充実感、疑似餌を造っている時の恍惚感と通じるところがあるのではなかろうか? ![]() 今回紹介する二冊の本は僕のデザインになるものだ。と言うのはこの二人のイラストレーターを前から注目していた。いずれ何かの時に、ここぞと言う時に、使用する為常日頃から沢山のイラストレーションを描いてもらい、僕のイメージの引出しにしまっておいた。作品群のなかからピックアップしたものである。釣りで言えば、次なる大物を釣り上げるイメージで、ああでもない、こうでもないと思案しつつ、疑似餌をつくり箱にしまっておいて「いざ出陣」と言うのに似ているような気がする。なにはともあれこの二冊の出来栄えの良さはこの二人のイラストレーター「下田昌克」「伊原薫」による力が90パーセントしめている。
by k2-d
| 2007-04-20 23:45
| 装丁問答
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