五月・・・いろいろあります。  文:黒田昌郎

『五月病』という言葉がありますが、新入生や新入社員が四月の緊張が少し取れて、ほっとして疲れが出てしまうとか・・・。疲れが出てというくらいだと、まだ良いのですが、五月は毎年結構深刻な若者が私のところにやって来ます。

最近、私は大学、専門学校などで講義などをやっているのですが、
五月になると、少し顔色の悪い卒業生が学校に来ます。
「先生、お元気ですか?遊びに来ました!」
というものの、何やら物言いたげな…すぐれぬ笑顔を向けてきます。

暫く話すうちに、「実は今日辞表を出してきました」という言葉が出てきます。
一年前に就職した者、中には一ヶ月前就職したばかりの者。
夢を抱いて入った職場に幻滅を感じ、辞めてくるのです。

そんなとき、私がいつも感じるのは“MOTTAINAI”という気持ちです。

“もったいない!”という意味には二つあります。
ひとつめは、彼らが折角かかわりあった現場を放棄してしまうこと。
もうひとつは、雇った会社が新人がどんな素晴らしい素材なのかを見極める暇もなく手放してしまうこと。

理由は様々ですが、前者の場合、最も多いのは自分のイメージした職場と現実のギャップが大きかったこと。仕事の内容、上司を含む、職場内の人間関係が自分の考えていた、想像していたものと違っていたということです。

作家の重松清さんは、「会社を辞めたいな」と最初に思ったのが入社して2ヶ月目。そして11ヶ月目に辞められたそうです。
やはり人間関係が重たかった・・・「学生気分が抜けない」という言葉で表現されていますが、今の新人さんたちにも当てはまることだと思います。

同年代の者同士、学生時代に熱く語ったものと違う現実の仕事と、今まで付き合ったことのない年令の違う上司や同僚にとまどうことで、「ここは自分の住む世界じゃない」と飛び出してしまうケースが多いようです。
学生気分を抜け出して、新しい自分創りを試みるいいチャンスを逃してしまったと考えると、そんなに早くサヨナラするのは「もったいない」と思うのです。

一方で、会社的に考えると、私は或る時期、新しく立ち上げた会社で、
制作本部長なる肩書きでProduction Directorを任されて、
新人の入社試験などまでやらされたことがありました。

本来私のそれまでの仕事は演出なので、現場では殆んどがそれぞれの専門分野でのプロの人たち。
5を語れば、20を理解してくれる有難いスタッフが多い中での新人教育…。
「なんで、こんなに物判りの悪い、使い者にならない!」とぼやきながら、
「なんとか早く一人前にしなければ・・・」と指導したりしました。

会社は会社で新人の働きぶりに、期待とのギャップを感じて、失望するのです。考えてみれば、使う側も「もったいない」使い方をしていたのかもしれません。もしかしたら“金の卵を産む鳥”だったのかも知れません。

「学生気分の抜けない」新人の可能性を見極める時間もなく職場を放棄させてしまう「もったいなさ」を感じても良いのかな。

最近「学生気分のままの」学生を相手に、面白い作品が少ないのは、面白い新鮮な芽を大事に育てない現場にも責任があるのではないかと…思っていたら、先日、新聞でこんな記事を発見しました。

先日、某ラジオの編成部の女性プロデューサーの方の記事なのですが・・・
彼女は、音楽に携われると思ってラジオ局に入社したのに、最初の二年間は一日の放送進行表の打ち込みと録音テープの管理だったそうです。
イメージした作業とは程遠い仕事をしながら、コツコツと知識を蓄え、8年目で番組を任され、今あるそうです。

やはり新人諸君、チャンスを簡単に放棄するなかれ!
「もったいないぞ」!
   by mottainai-lab | 2007-06-25 21:02 | 黒田昌郎 | Comments(0)   

昭和の日本

文/黒田昌郎

前回で日本を舞台にした作品にこだわっていきたいと書きました。
最近の映画に「ALLWAYS三丁目の夕日」という作品がありました。
あれは昭和30年代、戦後の復興をめざして
日本の人が頑張る象徴として東京タワーが見える下町が舞台でした。
私が学生時代、丁度下町に住んでいた頃の町が再現されていました。
私の前作「雲の学校」の舞台は明治後期から大正時代の武蔵野でした。
その頃、私はまだ生まれていません。

私が生まれたのは昭和11年。
小学校入学と同時に戦争が激しくなり疎開などということで
親子が別れて暮らすという生活を余儀なくされました。
前二作の間の時代を幼少時代として過ごしました。
歳をとるにつれて、幼少の時代について気になり出しています。
終戦を境に日本がどう揺れ動いたのか、
幼いが故にまったく判らず過ごした幼少期、
周囲はどう動いていたのかが気になりだしています。

黒田昌郎
   by mottainai-lab | 2006-12-19 18:21 | 黒田昌郎 | Comments(0)   

MOTTAINAIで連想すること・・・

文/黒田昌郎

私は、アニメーションの監督の黒田昌郎(クロダヨシオ)といいます。
最近は、本業の作品制作を怠けて、若者の指導をしています。
MOTTAINAI Labの発足、楽しみです。

今つくりたいアニメーションがあります。
一昨年、私は「雲の学校」という一時間半の作品をつくりました。
埼玉県、東松山を舞台にした母と子の生活を描いた
打木村治氏の原作のアニメ化です。
明治後半の武蔵野の生活です。
そこには日本人の原風景があり、
日本人が育ってきた生活そのものがあります。
今世界中で環境汚染が起こっています。
環境の浄化とともに精神の浄化を考えたいと思います。
日本の風土の中で、
私たち日本人が育った精神的なもろもろを
作品に残していきたいと思っています。
四十年近く、世界名作劇場で世界を舞台の作品を作ってきました。
これからは、日本を、自分の子供時代の日本を若者へ送っていきたい、
こんなことを考えています。

黒田昌郎
   by mottainai-lab | 2006-11-08 11:35 | 黒田昌郎 | Comments(1)   

プロフィール

● 黒田 昌郎(クロダ ヨシオ)  アニメーション演出家

プロフィール_a0083222_1946055.jpg1936年、東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。「東映動画」を経て、「日本アニメーション」でTVアニメシリーズを監督・演出。主な監督作品に「フランダースの犬」「ふしぎな島のフローネ」などの世界名作劇場や劇場版『フランダースの犬』など。05年3月公開の『いぬのえいが』で「A Dog's Life:good side」&「A Dog's Life:bad side」を撮る。05年5月から、明治末期の埼玉県を舞台にしたアニメ『雲の学校』が国内各地で自主上映される。
   by mottainai-lab | 2006-10-31 12:06 | 黒田昌郎   

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