ほんの一昔前まで、電車の中にいる人がみんな、
小さな画面を見ながら親指動かす時代がくるなんて、想像もしなかったよ。
今日、若い女の子たちの会話を聞いて、気になることがあったんじゃ。
「約束あるんだけど…、そっちの方がおもしろそう!」
と話してた子が、連れの子に「いいじゃん、メールしとけば」
と言われて、そっちに行くことにしたらしい。
親指をぴぴっと動かして、会う約束をしていた相手に、
「ごめん、行けなくなった」とメールを送り、ふたりではしゃぎながら去っていった。
メール送ったからいいじゃん、というのは、自分を正当化しているだけのことで、
相手のことを考えているわけではない。
その友だちはとっても楽しみにしていたかもしれない。
だから、すごく悲しんでいるかもしれない。
でもメールではわからないかもしれない……
もっと楽しいことをみつける度にころころ気が変わっていたら、
うわべだけの言葉が忙しくとびかって、うすくて軽いつきあい方しかできなくなるよ。
人と人とのつきあいはもっと大事なものなのに。
携帯電話がなかった頃は、約束をして行けなくなったら、
相手に待ちぼうけを食わせるしかなかった。
だから、約束にはもっと重みがあった。
いつでもどこでも、すぐに連絡がとれるのは便利だけど、
せっかく出会った人と人、心のこもったつきあいができないのはもったいない。
