俺の実家には両親がずっと住んでいたんだけど、
今では親父もお袋も他界してしまって誰も住む者がなく、
一年以上も物置代わりのようになっている。
建物は昔のままの古い作りだし、3階建ての1階部分は元々、医院だったところで、
当時の自分たちに都合のいいようにしか設計されてないから、
他人に賃貸しできるような家でもないんだ。
それで、親族みんなで共有して使えるようなスペースにしようと思って、
リフォームをすることにした。
それで家中の荷物を一旦よそへ移さなければならないんだけど、いざ整理を始めたら、
これまた親父もお袋も80年間の人生で溜め込んできたものすごい量のモノがあって、
ちょっと目まいがしたよ。
まず大量の服。もうそれを誰かが着ることはないと分かっているんだけど、
なんだかもったいない気がして、そのまま捨てられないんだよね。
小さな貴金属やアクセサリーは結構あちこちでもらってくれるんだけど、
服はサイズの合う合わないもあるから、なかなか引き取ってもらえない。
どこかへ寄付するにしても、意外と「現在、衣類はお断りしています。」っていうところが多い。それならばと、思い切って片端からゴミ袋に放り込んでいこうとしても、これがなかなか強い決断力のいる作業。
ネクタイひとつにも「これ親父がいつも着けてたなぁ」なんてしんみりと思い出して、
その場でタバコに火をつけて缶ビールをプシュッと開けちゃう。
それから、これも大量の本。
中には当時かなり高価だったであろう学術書のようなものや、
有名な作品の初版本なんかがあったりして、どうしても一冊一冊そういうところに
目がいってしまう。本当にきりがない。
そこで日記なんか出てこようものなら、もう大変。
焼酎のボトルと氷を持ってきて、どっかり座り込んで一晩中読みふけっちゃうね。
親父が趣味でカメラをやっていたもんだから、写真も半端なじゃない量がある。
ほとんどはお袋とあちこち飛び歩いた旅行の写真なんだけど、昔の人の習慣なのか、
写真の裏に日付とかちょっとしたコメントが書いてあったりして、
そこからその当時の状況が読み取れて面白い。
やめておけばいいのに、これもひとつひとつ気になって見入っちゃう。
それでも、葬式や結婚式なんかの親戚一同が集まったイベントもの以外は、
一度目を通したら捨ててしまおうと決心して作業を進めていくんだけど、
古い写真が片付いてくると、その下の層から今度は自分が生まれた頃の写真が
発掘されてくる。そうすると女房呼んできて、
「これ、この赤ちゃん、俺。これ昔飼ってた犬。」なんて始まっちゃう。
もう女房はあきれて「私、先帰るね」って言って出て行っちゃうけどね。
そんなことやってると、捨てられないモノがどんどん増えていって、
捨てられるモノの方が少なくなっちゃう。
でも、こういう作業は他人には手が出せないものだし、
身内でも俺にしかできないことだから、しょうがない。やるしかない。
一日も早くリフォーム工事を始められるように、
そんな自分にむち打って作業を遂行しようと思います。






















