
11月下旬の3連休に、新潟県に行ってきました。上場企業の経営者やその家族らと一緒に、総勢15名程度の賑やかなグループで、3年に1回開催される「越後妻有アートトリエンナーレ」の視察です。2000年に第一回が開催されたこのアートの祭典は、当時から大変な反響を呼びました。「田んぼの真ん中に現代アートを展示する」。このアイデアはさることながら、周辺住民を粘り強く説得し、アートの展示やイベントの運営、継続的な支援などを実現させた「地域おこし」の成功例でもあったからです。
2015年に次回の開催を予定しているこの「越後妻有アートトリエンナーレ」は、実は私は過去3回参加したことがあります。2003年、2006年、2009年に、アートが大好きな女性の友人と2人で、車を借りてあちこちをまわりながらアート鑑賞をしたもので、まさか今回、仕事(になるといいな……なのですが)を兼ねて視察できたことに縁を感じずにはいられませんでした。
越後妻有地域は豪雪地帯です。冬になると、3メートルから4メートル近くの雪が積もるため、夏場までは働いて、冬場は男性は都会に出稼ぎをし、雪下ろしという重労働を女性が担うのが珍しくありません。そんな大変な場所なのですが、水は美味しく、山菜や魚沼産コシヒカリに代表する美味しい食材が豊富にあり、温泉も湧き出ていて、ゆっくり過ごすには素晴らしい場所だということも感じています。
まる1日という短い時間でしたが、「光のアーティスト」として知られるアメリカ人アーティスト・ジェームズタレルの「光の館」をはじめ、築100年以上の古民家を改装したゲストハウス、総合ディレクター北川フラムさんと地元の人たちを囲んだお茶会、冬支度である「雪囲い体験」など様々な催しものを企画してくれ、滞在を楽しむことができました。中でも感動したのは、絵本作家である田島征三さんによる美術館「絵本と木の実の美術館」です。
この美術館は「立体絵本」をコンセプトに、自分自身が絵本世界に入り込み、体験できるような仕掛けが随所にほどこされた美術館で、廃校になった小学校を改装したとても雰囲気のある場所。可愛らしいカフェが併設され、小学校だった頃の名残を感じさせる机や体育館や職員室などのプレート、黒板などが当時のそのままに残され、至るところに作品が展示されています。
実はこの作品はよくみると、廃材や落下した木の実などでつくられているのです! 普通なら見過ごして、通り過ぎてしまうような道ばたに落ちているこうしたものが材料となって、アーティストの手によって再び作品として生まれ変わる過程に感動をしました。これぞ、MOTTAINAIの精神に通じるもの。がらくたやゴミのように一見感じるものが、使い方によっては人を感動させるアートになる。その事例を見せてくれた気がします。ぜひ、訪れてみてください。