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カテゴリ:SMA症候群 闘病記( 12 )

闘病記②

2章 診断


胃カメラ、超音波、血液検査…、何の検査をしても「正常」という結果しか出ない。
医師は首を傾げるばかり。その一方で、痛みが起こる頻度は高くなっていく。
耐え切れず、痛み止めの点滴に通う日々が続いていた。


診断がつかない。


「神経性のものでは?」ナーバスになっている私に突き刺さる視線と言葉は、

「じゃあ、どんな神経なんだよ!」と心の中で吐き捨てるほど辛かったし、

痛みは、この世のものとは思えないほどだった。


その夜、またあの痛みに襲われた。

当直中の顔見知りのドクターが点滴をしてくれたものの、痛みは一向に治まらない。

結局、いつも診てもらっているドクターも心配して病院に戻ってきてくれた。

うめき声をあげる私を前に、2人のドクターが考え込む時間が続く。
初めて受診したときからずっと一緒に悩んでくれていた、信頼するドクターたちである。

「もしかして…」

点滴が終わるころ、ふたりが口にした病名は、
まったく聞いたことがなく、想像すらつかない名前だった。

                            

「ジョーチョーカンマクドーミャクショウコウグン???

天井をみつめる宙に漢字を思い浮かべてみたが、
変換されたのは「症候群」だけだった。


数日後、シャーカステンに私のCT画像が並べられていく。
「内臓脂肪が極端に少ないんです」
「食後45時間経過しているとは思えないほど、胃の残存量が多いんです」

ただ頷くしかない。


身体の中のイラストを描いて説明してくれるには、

「胃から食べものが消化されていくときに、
内臓脂肪がないために十二指腸が上腸間膜動脈という血管に挟まれてしまい、
よって十二指腸で通過障害を起こしている」ということであった。

私が把握している解剖図のレベルをはるかに超えているため、さっぱりイメージできない。


そして次の言葉に愕然とする。


「治療法がないんです。太って、内臓脂肪を付けるしか…」


本気で耳を疑った。

医療がこれだけ進歩し、様々な薬剤や医療機器が開発されているこの世の中で、
“太るしか治療法がない”という病気があるのだろうか?!

私は決して痩せたためにこの症状が現れた訳ではない。

体重も体型も変わらないある日突然に、痛みが始まったのだ。

そんな私に「太れ」といわれても、食べていないどころかよく食べているのだから、
これ以上体重を増やす方法など見つからない。

しかも、最近は食後のみぞおちの激痛が多くなり、痛くて食べられないことが多い。
食べられなければ痩せて、さらに内臓脂肪が減っていく…。

直感的に矛盾を感じたこの病気に、まさか半年以上も振り回されることになるとは、

このときは思いもしなかった。
医師の説明に何ひとつ納得できるものはなく、

はっきりしていることは、“痛みは確実にやってくる”、それだけだった。


by mori-mado | 2011-08-31 14:16 | SMA症候群 闘病記 | Comments(0)

闘病記①

プロローグ


6時。私の朝は病室の窓を開けることから始まる。

眼下には不忍池、顔を上げればすぐ向うは上野だ。


この大学病院にまさか1ヶ月以上も入院することになるとは思いもしなかった。

9月に入院したきり、気がつけば2ヶ月以上病室暮らしだ。

最初の病院では内科治療を、転院先のここでは手術を経験した。

外来に通い始めてからは半年以上、

病気になって生活は劇的に変わった。


私が経験したのは、主治医にも「めったにお目にかからない」と言われた、

「上腸間膜動脈症候群(SMA症候群)」という病気。


内臓脂肪が無いためになると言われ、

例えば摂食障害で急に体重が落ちた患者さんに稀に見られることがあるという。

しかし、体重も体型もこの10年ほとんど変化がない。

確かに胃が痛いことはこれまでも多くあったが、

ライフスタイルを振り返っても、

どちらかと言えば内臓脂肪が付くことを心配しなければならないような食生活。

夜中のお酒、焼肉、中華・・・、

「痩せているくせに、よく食べよく飲む」と褒められると同時に呆れられるほどでもあったのだ。





1章 はじまり


2005年4月、痛みは突然だった。


初めてそれを感じたとき、不気味ともいえるくらい、経験したことのない痛みだった。
みぞおちを強烈にパンチされたような痛みが断続的につづく。

横になっても、うずくまっても、治まることはなく、胃薬を飲んでもまったく効かない。

「これって、何?

経験のない痛みに怯えながらも、ひと時のことだろうと深く考えず、その日は過ぎた。


その後も、頻繁にやってきた。
夜中であったり、外出先であったり、シチュエーションにお構いなく、突然、みぞおちに激痛が走る。
胃薬が効かないため、消炎鎮痛剤をどのくらい飲んだかわからない。座薬も入れてみた。
温めたほうがいいのかとお風呂にも入ってみた。
唸りながら、眠れぬ一夜を明かすこともあった。

何をしても、お手上げだった。


その日もまた、突然きた。

外出先から帰る路上で、とうとう1歩も歩けなくなる。
遅ればせながら、さすがにただごとではないと感じ、

やっとの思いで、かかりつけの病院へ診療時間の問い合わせを入れた。


運がいい。その日の夜間診療はちょうど消化器内科のドクターで、面識もある。

タクシーに乗り、どんどん強くなる痛みをこらえて、赤坂の病院にたどり着くと、

話を聞いたドクターはすぐに痛み止めの注射をしてくれた。

さらに「心配だから、明日胃カメラをやりましょう」と言う。

「やはり胃潰瘍とか・・・、まさか胃がん?」大げさな不安が一瞬私の頭を過ぎったが、

出血もなく、胃痛とは質もちがうことぐらいはわかる。

「それは無いな」 むしろ、翌日の番組収録のほうが気になるくらい妙に冷静だった。

痛みは和らぎ、診察室を後にした。


ところが、

薬を待つ間にまたあの痛みが始まった。
あまりの痛さに呆然としたが、立っても座ってもうずくまっても、何をしても強くなるばかり。


「大丈夫ですか?
警備員さんや病院職員の顔が歪んで見える。
夜間診療時間ゆえに人もまばらなロビーで、私は抱きかかえられるように病室へ運ばれた。


1
滴ずつゆっくりと点滴が落ちていく。

もう、自分の身体が壊れかけていることを自覚せざるを得ない、

そんな思いで点滴を眺めていた。


by mori-mado | 2011-08-31 14:10 | SMA症候群 闘病記 | Comments(0)

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