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闘病記⑨

9章 足踏み


痛みが少しずつ治まっていくと同時に、
導尿カテーテル、硬膜外麻酔、ドレーン…と、

身体の中へ入れた管が1本ずつ抜かれていく。
まだまだ苦しいものの、トンネルの出口がちらちらと見えた感じだ。


いよいよ最後の「胃管」だけ。手術直前に病室で入れられた、あの苦しいチューブである。

ゴム製の、うどんの麺よりははるかに太いチューブが、

鼻から喉を通り胃まで届いていることを思えば、
どんなに不快かは想像に難くない。

24時間、毎日喉を塞がれているのだ。


最初の説明では、「術後34日」で抜けるとのことだった。

イライラしながら1週間が経過し、待ち望んだ「バッキョ(抜去)」の台詞が主治医の口から出た。
その嬉しさといったら、退院許可のときより嬉しかったくらいだ。絶大な喜びである。

午前、研修医のドクターが、入れたときと同じように病室へ現れ、
そして、晴れて私の身体から点滴以外の管がなくなった。


しかし、

数時間後に異変は起きた。

どうしようもなく、気持ち悪くて、吐きたくて、吐きたくても吐けないという苦しみが始まったのだ。


吐き気止めの薬はまったく効かない。

この吐き気はなんなのだろう。

涙を流しながら苦しんでいたところ、突然こみ上げてくるものがあった。


ほんとうに一瞬。一瞬に吹き上げた。
私と私の寝ていたベッドは、真緑色に染まったのである。

喜びは束の間。あまりにあっけなかった。

消化液のすべてを吹き上げた。

ドクターの顔が青くなり、周囲はバタバタと慌てだす。
また鼻から胃管を入れられることになり、抜けたときの喜びの100倍は落胆した。
が、半分は諦め気分。この吐き気を止めてくれるのであればやむなしと、自分でも納得していた。


すぐにチューブから消化液の吸引がはじまると、

注射器を何度引いても、真緑の液体が引けてしまい、
終いにはゴミ袋大のビニール袋がいっぱいになってしまった。その量にドクターのほうが焦る。
数時間おきの吸引がナースに指示され、造影剤の検査が私に指示された。

回復している実感は、見事に吹っ飛んだ。


要するに、
胃の動きが止まっているために消化管の流れが悪く、流れていかない。

手術では胃にはまったく触れていないのに。
「手術の影響で消化管を動かす神経の働きが弱くなる」という、
「膵臓の手術などでたまに見られる現象と同じ」という説明だった。


「経過観察で、様子を見るしかないんです。通常は23週間で動くと思うのですが・・・」

こうしてまた私は暗く長いトンネルに入った。


by mori-mado | 2011-08-31 14:35 | SMA症候群 闘病記 | Comments(0)

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