北海道・豊頃町「エレゾエスプリ」へ行く。
懇意にさせていただいてる日本を代表する食肉集団「ELEZO エレゾ」の本拠地・北海道豊頃町にあるオーベルジュ「ELEZO ESPRIT エレゾエスプリ」にお邪魔させていただいた。
「ELEZO エレゾ」は、狩猟から生肉処理、食肉加工まで一気通貫で行える生産管理体制を国内で唯一持っているジビエの専門家集団で、ハンターを日本で初めて正社員雇用した会社でも知られている。
「ELEZO エレゾ」の代表を務める佐々木さんとは、今は無き会員制&紹介制の「ELEZO」直営レストランであった渋谷・松濤の「ELEZO HOUSE エレゾハウス」からのお付き合いで、もう10年近くになる。
実は松濤にお店があった頃に佐々木さんから数年後に「命」への想いをちゃんと伝えられるオーベルジュを北海道に作ろうと思っているという話を聞いていた。
そこから数年間に渡るコロナ禍があったり、「ELEZO HOUSE エレゾハウス」が無くなり、虎ノ門ヒルズの誕生と共に新たに「ELEZO GATE エレゾゲート」が出来たり、少し時間は経ってしまったが、ようやくスケジュールを合わせて「ELEZO ESPRIT エレゾエスプリ」に行くこととなった。
北海道に行くのも久しぶりで、10年ぶりくらいになると思う。
最後に行ったのはコロナ前で、ゲーム関連のイベントの時だったかな。
今回は、魔王(=私)の旅にいつも笑顔で付き合ってくれる勇者と賢者と、懇意にさせていただいている3人共通の友人であるゴ・エ・ミヨ掲載京都イタリアン「fudo」のオーナーーシェフ入江さんと4人でお邪魔した。
新千歳空港からレンタカーで高速に乗り、一路東へ。
途中、私の中の「これぞ北海道!」というような景色を眺めながら、約4時間かけて「ELEZO ESPRIT エレゾエスプリ」がある北海道・豊頃町へ。
途中寄り道したり、迷ったりで、到着したのは夕方18:00過ぎ。すっかりあたりも暗くなっていた。
「ELEZO ESPRIT エレゾエスプリ」は、鮭漁で有名な漁港の近くの丘の上にあるレストランと宿泊施設があるオーベルジュだ。
周辺20キロ圏内にコンビニもないような「ELEZO ESPRIT エレゾエスプリ」だけがただ静かに存在しているような場所だ。
宿泊できる部屋は3棟あり、各棟2つのベッドがあって、2名まで宿泊が可能になっている。今回は3棟貸切させてもらった。
残念ながら宿泊施設の中はお見せ出来ないのだが、広くて、温かくて、とても快適だった。
「ELEZO エレゾ」がテーマとしている「命」と向き合ってもらうために、あえて客室にはテレビや時計、ホテル電話などを置いていないので、本当に静かでデジタルデトックスもできる空間だった。(WiFiはちゃんとある)
部屋には、「ELEZO エレゾ」にまつわる生き物や肉のカッコいい写真が飾られていたり、「ELEZO エレゾ」ブランドのワインなども揃っていたり、渋谷・松濤の「ELEZO HOUSE エレゾハウス」を知っている人であればお馴染みの2階にいた凛々しい牡鹿のハンティングトロフィーが飾られているので、ここで再会できる。
宿泊施設のすぐ隣に真っ白いレストラン棟がある。
そのレストラン棟の目の前に、スタッフと約束した時間に立つと、シャッターが開いて、中に入ることが出来る。
レストランの中の様子も残念ながらお見せ出来ないのだが、食事前に「ELEZO エレゾ」の歴史を見るような美術館のような場所を通過し、途中で「ELEZO エレゾ」や豊頃町の「命」にまつわる映像を見る場所があったり、まるでジビエのディズニーランドのアトラクションを体験しているような感覚だった。
料理がとても素晴らしく美味しいことは言うまでもないのだが、「命」に向き合うというか、オーナー佐々木さんやスタッフの皆さんから目の前で直接説明や想いを聞きながら、皆さんが狩猟して、加工した肉を、さらに目の前で調理していただく料理は格別だった。
「ELEZO ESPRIT エレゾエスプリ」だけのスタッフという方はおらず、あえて「ELEZO エレゾ」のシャルキュトリー部門だったり、枝肉熟成流通部門だったり、普段外に出ることのないスタッフの方が接客をしてくれる。
スタッフの皆さんにとっても自分たちのやっていることの感想をお客さんから直接聞く機会となり、逆に我々お客側も「命」に直面している方々から直接生の声を聞くことが出来る貴重な時間となる。
以下がこの日の「ELEZO ESPRIT エレゾエスプリ」のディナーメニュー。
写真はお見せ出来ないが、料理の概要だけでも伝えたいと思う。
■第1章-命の在り方
「命のスープ」
廃棄されることの多い蝦夷鹿の筋や骨に、香味野菜と水だけで作った、旨味強く、どこまでも透き通った美しいスープ。
■第2章-演舞
「シャルキュトリーオールスター」
鹿や豚が解体された時に、味ではなく、単に使いやすい、使いづらいという人間の都合で「高需要部位」と「低需要部位」に分けられてしまうとのこと。
「高需要部位」はレストランなどに出荷するが、残った「低需要部位」を丁寧に美味しく加工した「ELEZO エレゾ」の5種のシャルキュトリーの盛り合わせ。東京・虎ノ門の「ELEZO GATE エレゾゲート」では出していないようなシャルキュトリーもあった。
■第3章-海への感謝
「地場の魚介料理」
「ELEZO ESPRIT エレゾエスプリ」がある豊頃町は鮭漁で栄えた町だそうで、ちょうど秋味と呼ばれる秋鮭が取れる時期。
今回は豊頃町の港であがった秋鮭に、冷たくした蝦夷鹿のコンソメと白人参のピューレの組み合わせ。
■第4章-山への感謝
「牛の表現」
北海道の畜産大学と共同研究をしている短角牛を使った美味しいビーフシチューをいただいた。
同じく近隣で採れたカブやズッキーニが入っていたが、これもものすごく甘くて美味しかった。
■第5章-尾崎松夫への感謝
「鹿の表現」
「ELEZO エレゾ」を長年支えてきた狩猟部門のハンター長である尾崎松夫さんは数年前に狩猟中の不慮の事故で命を落とされた。
その尾崎さんへの感謝を込めた「ELEZO エレゾ」スタッフによる渾身の蝦夷鹿の炭火焼きをいただいた。
この日いただいたものが、私の人生の中のNo.1の鹿肉となった。
これまで食べてきた料理やレストラン、食に関する思い出が私の中で走馬灯のように駆け巡り、色々と考えさえられるディナーだった。
日々狩猟をして、解体をして、加工をして、「命」に向き合っている「ELEZO エレゾ」の皆さんには到底及ばないが、その一端に触れさせてもらうことは出来たのかもしれない。
海の上に浮かぶ月が本当に綺麗で、ずっとこのまま考え事をしていたくなるような夜だった。
「ELEZO ESPRIT エレゾエスプリ」のすぐ近くに現役の灯台があって、食事をしてすぐに部屋に戻っても良かったのだが、みんなやっぱり色々と思うことがあったみたいで、少し余韻を感じるために灯台まで散歩することにした。
4人でこんな真っ暗な丘を灯台目指して歩くなんて、まるで映画の世界のようだが、想い出に残る時間だった。
朝の部屋のベランダからの眺め。
夜は真っ暗でよく分からなかったが、すぐ裏が海だった。
途中の道の駅で買っておいたヨーグルトを飲む。私なりに大自然を感じたひと時。
朝、オーナー佐々木さんのご厚意で、通常のお客様は行けない「ELEZO LABORATORY エレゾラボラトリー」を見学させてもらえることとなった。
「ELEZO LABORATORY エレゾラボラトリー」は狩猟した蝦夷鹿や家畜の解体、熟成、加工などの全てを行う「ELEZO エレゾ」の心臓部で、真っ白い大きな建物と、その周りには200匹以上の放牧豚と軍鶏が飼育されている。
本当に特別に解体場や加工場、枝肉の熟成庫やハム・サラミなどの冷蔵庫まで見せていただいた。
私がいただいていた「ELEZO エレゾ」の美味しいシャルキュトリーやお肉がどういう場所で、どういう大変な作業を経て作られているのかを知ることができた。
昨日の夜の余韻が残ったまま、朝もとても素晴らしい経験をさせてもらえて、感謝しかない。
レストラン棟に戻り、先ほど見てきた「ELEZO LABORATORY エレゾラボラトリー」で作られている放牧豚のテリーヌのサンドウィッチと、秋鮭のスープドポワソンをいただく。
放牧豚のテリーヌのサンドウィッチは、「ELEZO エレゾ」のジビエに合わせて、ジビエが一番美味しく食べれるように、地元の老舗パン屋さんと試行錯誤して作り上げた軽くて香ばしいパンに、放牧豚のテリーヌと、北海道ミルクのチーズと、自家製のピクルスと、自家製マヨネーズソースが挟まっている。
目が覚めるくらいめちゃくちゃ美味しい。今まで食べたパン朝食のNo.1だった。
正直、ジビエで朝食ってどうなるのだろう?と思っていたのだが、ジビエの朝食の最高峰というか、答えがここにあった。
色んなものを見て、聞いて、食べて、インプットが多いから、気持ちが充実していて、随分時間が経っているような長さも感じつつ、あっと言う間に帰る時間になってしまったような気もする不思議な感覚だった。
1回でのインプット量が多いので、1泊2日で良かったのかもしれない。
変な意味ではなく、何日もいたら考えることが多すぎて処理できなくなりそうだった。
また絶対季節が変わったら「ELEZO ESPRIT エレゾエスプリ」にお邪魔したいと思う。
1回に何泊もして詰め込むのではなく、こんな1泊2日を何回も繰り返したいと思うような場所だった。
佐々木さん、スタッフの皆さん、本当に貴重な体験と美味しいお料理と、心地よい時間をありがとうございました!
後日談として、「ELEZO ESPRIT エレゾエスプリ」から帰ってきた数日後に、現地にて買わせていただいたシャルキュトリーが届いた。
「ELEZO エレゾ」では基本作り置きのような商品はなく、発注が入ってから製造をして、一番新鮮な状態で届けてくれる。
蝦夷鹿のテリーヌと放牧豚のテリーヌ。
放牧豚のロースハムと蝦夷鹿のモルタデッラ。
蝦夷鹿サラミと、放牧豚フェンネルサラミと、放牧豚の農夫風サラミ。
これらのシャルキュトリーは私が「ELEZO ESPRIT エレゾエスプリ」の余韻を感じながらいただくのもありつつ、半分は私がぜひ「ELEZO エレゾ」を知って欲しい、伝えたいと思うシェフや友人へのお土産話と共にお渡ししたいと思っている。
■「ELEZO エレゾ」
■「ELEZO ESPRIT エレゾエスプリ」
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by meshi-quest
| 2024-11-08 08:08
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