歯医者と浦島太郎
左上奥歯が浮いている感じがして、冷たいものを食べると歯がしみる。
今に始まったことではなく、かなり前から気づいていたのだが、「なかったこと」にしていた。
ところが最近この「なかったこと」がなかったことになっておらず、自己主張を激しく始めたので、腹をくくって、歯医者に行くことにした。
小学生の頃は学校で1年に1回必ず歯科検診があり、最終的にちゃんと完治したことを証明する歯医者さんの署名を学校に提出しなければならなかったので、半強制的に歯医者に通院させられていた。
歯医者がすごく嫌いだった。
身を削られるかのようなチェーンソーチックな機械音、歯茎に刺す麻酔の鈍痛、混ざった薬品の臭い、長時間口を開けっ放しにしていないとならない退屈さ、何をとっても好きになれない。
当時、私が通っていた歯医者は、もういい加減引退してもいいんじゃないかというようなおじいちゃん先生がやっている、いわゆる町のお医者さんだった。
腕は良かったが、設備も古く、院内全体も薄暗かった。
その薄暗い待合室で、自分の順番をひたすら待つ。
奥ではチェーンソーの音。薬品の臭い。
ホラー映画気分だった。
人生で通った歯医者はここだけだったので、こんな印象しかなかった。
大人になってまでこんな気分を味わうのは嫌だったので、今回歯医者に行くにあたって、患者評判の良い歯医者をネットで探しまくった。
たまたま新宿の会社近くに、割とネット上で評判の良い歯医者を見つけたので、そこに行ってみることにした。
15年ぶりに行った歯医者は、私の想像していた歯医者とまるで違っていた。
院内はとても明るく、水槽やら植木やらが飾られていた。
雑誌もあり、ミネラルウォーターやお茶も飲める。
ちょっとした美容室のような感じだった。
予約をしていたので、待つこともなくすぐに順番が来て、診察室に案内された。
歯医者の倒れる椅子(なんて言うんだろ、コレ)に座って、まず一番驚いたのが、目の前にあるテレビモニターだった。
歯科助手のお姉ちゃんが「リモコンはここにありますので、好きな番組を見てくださいね」と言う。
すげー。
口を開けて治療中、患者が退屈しないようにと、こんなサービスがあるのか。
しばらくして、30代の男の先生がやってきた。
これまた驚いたのだが、今後私の専属になるらしく、名刺を持ってきて、自己紹介をしてきた。
こんな丁寧な歯医者に申し訳なかったのだが、まず早速歯医者が大嫌いなことを告げ、15年ぶりに歯医者に来たことを言った。
すると、その先生は若干苦笑いをしながら、「では、また嫌われないように、極力痛くないような治療を心がけますね」と言った。
いつの間にか、なんて進歩しているんだ、歯医者は!すげー、すげー。
診察は先生の約束どおり、とても丁寧で、嫌いにならないような内容で行われた。
15年間メンテナンスを怠ってきた歯は、怠っていた割には丈夫だったが、若干ガタがきているところもあったので、一応レントゲンも撮って、細部を見ることになった。
このレントゲンで、また驚かされる。
「目の前のモニターを見てください」
なんと、テレビモニターが切り替わり、私の歯のレントゲンが映し出された。
超すげー。
そして、先生のレントゲン説明により、生まれて初めて、自分に「親知らず」があることを知った。
しかも、上下左右、全部で4本。
かの有名な「親知らず」が自分にもあるなんて・・・、ビックリ。
幸いにして、元気いっぱいしっかり生えきっていたので、親知らずが腫れて・・・ということで悩まされることはないそうだ。
この日は奥歯が浮いている原因を見つけてもらい、ちょっと歯を削って、治してもらった。
15年ぶりにやってきた浦島太郎に気を遣ってくれたのか、「いきなりいっぱいやると疲れるでしょうし・・・」と徐々に治療をしていくという説明をしてくれた。
もうしばらく通うことにはなりそうだが、痛くなかったし、歯医者嫌いにもならなかった(笑)。
ちなみに、「親知らず」は大半の人が持っているらしく、歯の上下左右の第8番目の歯を言うらしい。
第7番目の歯が10代前半に生え、第8番目の「親知らず」は20歳くらいに生えることから、親が知らないときに生える歯なので「親知らず」。
私のは「親知らず」でもあり、「本人知らず」でもあった。
■今日のカメ
パンはいいですねー。
ホント、ハマってます。
あぁ、楽しい!!
■ポテトマヨパン

■チーズベーコンパン

■味噌パン
