大人になったなぁ。
バリやらベトナムやら韓国やら中国やら、アジア各地を旅しているくせに、実は辛いものがかなり苦手である。
一般的に、若い女の子はスパイシーなものが好むようだ。
レストランの食事メニューでも、【ピリ辛】とか唐辛子マークが付いているようなメニューをよく頼む。
が、私はその流れに逆行するかのように、辛いものを避ける。
なので、私と食事に行くと、みんなが遠慮して韓国料理やタイ料理の店を避けてくれており、毎度実に申し訳ないなぁと思っている。
私とうってかわって、母は辛いものが大好きだった。
成沢家でカレーの時は、2人しかいないのに、いつも鍋が2つあった。
1つは私専用のバーモントカレー(中辛)、もう1つは母用のインド風激辛カレーだった。
鍋はいつも一目でどちらのカレーかが分かるようになっていた。
私の鍋の中は中辛カレーにさらに牛乳も足しているので、小学校の給食のような色をしており、母のカレーはハッキリ言って黒に近い色をしていた。
私は、中辛は中辛でもバーモントカレーの「りんごとハチミツいっぱいです!」中辛じゃないとダメだった。
辛いもの好きには分からないと思うが、同じ表示が中辛でも微妙に辛さの度合いが異なっており、私が受け付けられるカレーの辛さは「バーモントカレーの中辛」が限界だった。
それほど、辛さには弱かった。
ところが、最近になって、ふと【辛さ】というものと面と向かって語り合ってみようと思うようになった。
すごい心境の変化だ。
きっかけは、近所にある「とらの子」というラーメン屋で食べた豚キムチ。
もちろん私が注文したものではないが、ちょっと食べさせてもらったところ、ピリ辛ではあったが「美味いかも・・」と思ったのだ。
その後、家で初めてキムチ鍋を作ってみた。
元々、キムチの匂いも好きではなく、おまけに辛いので、一生縁のない食べ物かと思っていたが、作ってみると、意外にイケることが分かった。
こうして、豚キムチとキムチ鍋を足掛かりに、辛美味(からウマ)への階段を一段上ることになった。
そんなある日、昼飯時に「中本へ行こう」という誘いが来た。
【中本】とは、うちの男性社員たちが大好きでこぞって通っている劇辛美味ラーメンを出すラーメン屋である。
以前にも何度か誘われたが、その度に断っていた。
話を聞くに、想像を絶する辛さらしく、そんな場所に、辛さ若葉マークの私が行けるはずがないからだ。事故ることが目に見えている運転はできん。
が、今回は、キムチ鍋の件もあり、非常に興味がそそられ、一緒について行くことにした。
中本は新宿の小滝橋通り沿いにある。
着いたのはもう1時を過ぎており、昼飯ラッシュ時は終わっていたはずなのだが、地下に降りる階段前にずらーっと人が並んでいた。
常連であるみんなは、食事前に牛乳を買い込んで飲んだり、すでに注文も決定しており、準備万端だった。
ちなみに、食前に牛乳を飲むのは、辛さで胃がやられないように、事前に膜を張るためらしい。
大げさだなぁ・・と思われるかもしれないが、これが大げさでないことは、「今日のカメ」でじっくり見ていただきたい。
さて、待つこと20分、ようやく席に案内された。
常連たちは、こぞって激辛系ラーメンを注文していた。
ちなみに、私は初心者なので、メニューにも「初心者向き」と控えめな唐辛子マークが描かれている「味噌タンメン」を注文した。
店内は唐辛子の辛い匂いでいっぱいだ。待つこと10分。
味噌タンメンがやってきた。
自ら注文をして辛いラーメンを食べるのは、生まれて初めてである。
味は、舌にピリッと来る辛さはあるが、確かにお店が言っているように「辛さの中に美味さ」があった。うん、美味い。
ふと、隣をみると、血のように真っ赤なスープに麺をつけて、美味しそうにすすっているうちの社員。
冬なのに、額からは汗がダラダラ出ている。
そして、嬉しそうで、満足げだ。
私にとっては、調子に乗ってこれ以上辛さランクをあげると、撃沈するのでやめておくが、辛いものが好きな人は色々な辛さに挑戦してみるといい。
辛いのが弱い人も、私が食べた味噌タンメンならいけると思う。
辛いものを美味いと言うなんて、あぁ、あたしも大人になったもんだなぁ・・・。
しかも、辛いものをテーマにコラムを書く日が来るなんて。
今までずっとサビ抜きの寿司を食っていた子供が、ふとサビ入りを食べたとき、「あ・・・、美味いかも・・・」と今までとは違う感触にとまどいながらも、扉の奥から射すまばゆい光に目を細めながら大人への階段を一歩上った時のような、あぁプチ感動。
そんな一日でした。
■今日のカメ。
◆蒙古タンメン【中本】

◆混んでます。

◆常連はまず牛乳

◆メニュー

◆味噌タンメン

野菜がしっとり炒められていて、美味しかったです。あと、麺がモチモチしていて美味しかったです。
◆常連軍が注文した冷やし味噌

これじゃ、食べる前に準備が必要です。ちょっとスープを舐めてみたんですが、マジでエライことになってました。エライコッチャ。
◆味噌タンメン+マーボー豆腐+ご飯

マーボーをご飯にかけるのですが、マーボーはかなり辛かったです。
あ、でも、辛さ若葉マークの感想なので、辛いもの好きには平気なのかも。