ヤキソバは少年野球
解説 日本は美しい国かどうかはわからないけれど「麺の国」であるのは間違いない。どんな田舎に行ってもラーメン屋や日本蕎麦屋がある。都会には行列のできる店もいっぱいある。日本各地にはさまざまなご当地麺があってみんな「おらんとこが一番うまい!」と言ってあとに引かない。
ではどこの麺が本当に一番うまいのか、全国各地を実際に歩いて食って胃袋で考えてみよう。日本一の麺をそろそろここではっきりさせよう。そういう強い意志っつうか強い食い意地っつうか、まあそういう命題のもとに六人の「麺の甲子園審議団」が結成され、全国を十七エリアにわけ、一年半にわたって巡礼のように歩き、それぞれのブロックの優勝麺を決めてきた。
今回はいよいよその十七ブロックの各地区優勝麺によるグランド・チャンピオンを決める「麺の甲子園・優勝決定戦」ということになったのである。すべての麺に集まってもらうわけにもいかないので、取材にたちあった関係者全員が、銀座のわりと大衆的な日本蕎麦屋「よし田」の二階の二間を借り、まあ小説雑誌の連載でもあったので、いわゆるひとつの「文学賞選考会」のような気分で、その輝かしい優勝麺を決めよう、ということになった(グラビア参照)。
開会にさきだち来賓の挨拶はないが、まず一同起立して、大会の歌を高らかに歌うことになった。
麺の甲子園の歌
詞 椎名誠
風さやかなる行列に
耐えて希望の麺の海
いざ奮い立て若者よ
いや老人も
世界の平和を祈りつつ
かがやかなる箸さばき
つゆまで飲み干す熱情に
見よ雲がいく 汗に泣く
すすれ すすれ すすれ
麺の 麺の 甲子園
(くりかえす)
杉腹(司会)一同着席。ではこれより第三回・麺の甲子園の決勝大会を行います。
阿呆木(途中参加の若いカメラマン) 第一回、第二回なんてあったんですか?
癖ノ瀬 椎名さんの三年前の連載「全日本食えば食える図鑑」でいきなり第二回麺の甲子園が開かれてたの! その中で春の選抜がすでに行われていたことがハッキリ記述されているの! だから今回は三回目。
阿呆木 そのときはどこが優勝したんですか。
今泉三太夫(以下、三太夫) 香川県代表の「さぬきうどん」だった。山形県代表の「酒田ワンタンメン」との壮絶な決勝戦は今でも語りぐさだよ。
砂糖(専属カメラマン) 敗退した「酒田ワンタンメン」が泣きながら甲子園の砂を袋に入れていたのが感動的でした。
阿呆木 ワンタンメンがどうやって砂を袋に入れるんですか?
癖ノ瀬 誰だって負けたら甲子園の砂を袋に入れるのに決まっているだろう。場の空気の読めないやつだなあ。
杉腹 スペースが限られているのでもう総括に入ります。
三太夫 時間がないんだ青春は。
癖ノ瀬 そういうことを言ってるからさらにスペースがなくなる。
杉腹 ではまず北海道ブロックから。どこももうブロックの優勝は決まっているから決勝に臨むにあたってそれぞれ検証していく、という意味あいになります。優勝校じゃなかった優勝麺以外にも決勝トーナメントに出場させたい麺なども考慮してください。表にあるように北海道は高校野球に準じて二つのエリアにわけて大会が行われました。
砂糖 ここは前評判の高かった釧路の「仁」のタンメンが準決勝で落ちた。三太夫さんが絶対推していたのに。
三太夫 緊張があったのかあの日は調子がよくなかったよね。冬は断然強かったんだけど。肩がちょっと、というか塩がちょっと強すぎた……。
杉腹 旭川は「蜂屋」が強かった。
癖ノ瀬 和寒の越冬キャベツなんか好感もてたけどねえ。北風の中で頬を真っ赤にしてよく戦ってた。
椎名 東北のソバモヤシと並んで野菜界からの出場というので地元では話題になった。細切りにするとたしかにやるな、と思ったけどなにしろすすりにくい。
杉腹 出場麺の大会規約は①長さ七センチ以上②口から垂れ下がること③すすれること――ですが、この「すすり」に弱かった。
砂糖 雪が多いので練習時間が少ないというハンデがありますね。
阿呆木 でも和寒のキャベツは雪がかぶさっているからうまいんですよね。
癖ノ瀬 だからここは甲子園だろ。場の空気の読めないやつだなあ。
三太夫 釧路ラーメン「まるひら」は朝からタクシーの運転手が並んでました。
杉腹 では北北海道ブロックは「まるひら」と「蜂屋」に決まりと。続いて南北海道。
癖ノ瀬 第二回に準決勝ベスト4に出た「味噌ラーメン」がやっぱり圧倒的だった。
砂糖 イカソーメンにもう少し頑張って欲しかった。
三太夫 思ったよりセンが細かったよな。
癖ノ瀬 むしろ太いんでしょ。あれではイカウドン。
杉腹 次は東北・日本海ブロックです。
阿呆木 もう東北ですか。
杉腹 こうして全国を概観するんだからね。忙しいんだよ。時間が読めないやつだなあお前は。ここは有望とみられた山形の「冷しラーメン」があっさり負けてます。
癖ノ瀬 強豪が多いからね。「稲庭うどん」「麦きり」「酒田のワンタンメン」。
砂糖 秋田の横手は「やきそば」を町ぐるみで売り出している。でも評価は低かったですね。
杉腹「やきそば」はほかにも太田市、富士宮市と町おこしの立役者です。
椎名 でもあのくらいの町に五十店ぐらい「やきそば屋」があって百人ぐらい入れる店があって、そういうひとつの店で百人みんなが「やきそば」食っているっての怖くないか。「やきそば」ってそんなにおいしい?
癖ノ瀬 めちゃくちゃおいしいのとまずいのとの差があまりないような。
三太夫 子供の頃屋台で食べた十五円ぐらいのが一番うまかったような。
椎名 今の意見にとどめをさすな。「やきそば」は少年野球なんだ。三角ベース。
阿呆木 何かみなさんの発言が怖いもの知らずですね。
行列という名の共同幻想
杉腹 東太平洋ブロックは優勝候補の声も高かった「盛岡冷麺」が思わぬ敗退。逆にキワモノかと思われた一本ネギで食べる「高遠蕎麦」や知名度のひくい「うーめん」が活躍しました。
癖ノ瀬 畑の真ん中にある「白河ラーメン」とかね。
杉腹 ひき続き新潟・北関東ブロックです。もう試合時間の三分の一にきちゃったから急がないと。
三太夫 ここは驚くべきことに「シラタキ糸コン姉妹」が優勝しちゃった。これはシラタキと糸コンニャクを持って出てきた姉妹に砂糖カメラマンがくらくらして票集めにカネをばらまいたという説がある。
椎名 シラタキ系こんにゃくにまけた麺が怒って熱い汁をばらまいた、という説もある。
癖ノ瀬 あのあと砂糖君は三色シラタキをさらに食いまくって気をひいたというか赤い糸をひいたという説もある。
三太夫 よく大会スキャンダルにならなかったなあという説もある。
阿呆木 なんか「説」ばっかしですねえ。ぼくその大会には行かなかったので何のはなしなんだかよくわからないんですが読者にはわかるんですか?
椎名 わかんないだろうなあという説の方が多いね。
杉腹 じゃ次の飛騨高山・北陸ブロックです。有名な「ブラックラーメン」が一回戦敗退。本当にまっくろで辛くて。
三太夫 いきなり行った東京のものがこれを食べると全国区では通用しないとすぐわかるんだけど地方に根ざした、それなりに生い立ちの歴史や意味があるこういう麺をもっと深く掘り下げたかった。
椎名 三太夫としては信じられないくらいまともなことを言っているぞ。
三太夫 でも福井の「おろし蕎麦」を食ったらもう何も言えなくなった。
椎名 なんで。
三太夫 うまくて。
椎名 なんだ……。
杉腹 神奈川・山梨は「横浜」勢が意外に振るわなかった。どうしてですか。
椎名 この企画で横浜の「家系」という行列のできるラーメン屋にはじめて行ったけれど行列の意味がわからなかった。食い物屋に行列を作っているのを見たのは三十五年ぐらい前の日中国交回復して間もない頃の中国と二十年前のソ連。日本のラーメン屋では当たり前だけど、今回の取材でそのあといろいろ行った行列のできる都会のラーメン屋でうまいと思った店はどこもない。行列は「行列をつくる」という共同幻想の中の価値にすぎない。行列の好きな人にはうまい。それでいいんだと。
癖ノ瀬 このブロックでは山梨の「ほうとう」が活躍した。すごく甲子園っぽい。
三太夫 田舎の高校生カップルが汗だらけになってうまそうに食っている。いい風景だった。ああいう顔をした青少年男女がよく顔を真っ赤にして甲子園のアルプススタンドで応援している。
砂糖 吉田うどんにはまいりました。本当はあんなもんじゃない。あの店しかあいてなかったからあんなことになった。静岡生まれとしては泣いても泣ききれません(注・時間が遅く片手間でやっているようなものすごく汚くてまずい店に行ってしまった)。
杉腹 麺はぐにゃぐにゃ、汁は化学調味料満載でドーピング問題おこしそう。
椎名 まあめぐりあわせの運というものがあるよな。
杉腹 余裕がないのでこのまま東京にいきます。ここは全国の代表麺が集結しているブロックでもあるので大変でした。
癖ノ瀬 トーナメント表をみればわかるように非常にバラエティ豊かですね。
高箸ディスポーザー大(以下、高箸) 本郷「高田屋」、一本うどん、残念(注・この人は最初から出席していたが無口なのでずっと黙っていてここで急に発言。全員の残したものも全部食ってくれるのでこういうミドルネームがついた)。
一同 ん?
高箸 でかい、太い、うまい(注・高田屋の長さ一・五メートル。太さ二センチ四方。一本になったうどんのコトを言っている)。
杉腹 なるほどあれは東京ならではといえるうどんかも知れない。しかし早々に敗退してますね。万人向けではない。
高箸 強い、固い、重い。
三太夫 ねえ。もうすこしつながって話できないの。そういうの単語語法というんでしょう。
椎名 東京はなんでもありの印象だ。ラーメン界は醤油にトン骨を合わせたのが完全にストライクゾーン。ラーメンはそこにカツオ節、煮干し、ジャガイモ、卵の殻となんでも入れてしまう。日本蕎麦はそんなことできないものなあ。
癖ノ瀬 六本木ヒルズの「竹やぶ」の日本で一番高い「せいろそば」一二六○円が話題になりました。計算によるとあのそば一本が六三円になり、それ一本の値段でさぬきうどんのひやあつ一杯が食える。
三太夫 そんななかで荏原中延のラーメン「多賀野」が安定していていいなと思った。
杉腹 煮干し醤油ですね。ここはラーメン評論家の一押しでした。
椎名 東京で心残りだったのは【海苔/の/り】とホウレン草とナルトののった単純醤油系の純正東京ラーメンをもっと食べておきたかった。
癖ノ瀬 東京はいたるところに行列のできるラーメン屋があった。ちょうど梅雨どきで傘をさしてじっと三○分以上も並んでいる行列は異様でもあった。
三太夫 そんななかで神田の「まつや」、雷門の「並木」が東京のふたつの巨大ブロックを制した。言い方は厳しいけど伝統の蕎麦部門で六本木の成り上がり蕎麦に神田や浅草の「粋」が圧勝した。
高箸 東京、激戦区、参議院選。
一同 ん?
阿呆木 東京のタタカイはこのあいだの参議院選挙のようだったと言っているのです。つまり日本蕎麦は民主党のようである、と。
癖ノ瀬 なんでお前が解説できるの?
高箸 ラーメン、自民、乱立自滅。
癖ノ瀬 なるほど。今のお前の解説でいいんだ。
ダーティ味噌煮込みうどん
杉腹 では名古屋です。ここは非常に個性豊かというか、トリッキーな麺がいろいろあって大いに沸かせました。
阿呆木 抹茶小倉スパゲティ対クラゲなんてのがあるんですね。クラゲも麺ですか。
杉腹 七センチ以上あるし、すすれる。
阿呆木 スパゲティがそのクラゲに一回戦で負けてるんですね。
三太夫 名古屋だからねえ。
癖ノ瀬 台湾ラーメンが活躍してました。台湾にはない日本にしかない台湾ラーメン。もの凄く辛いのでそれをマイルドにしたアメリカンというのがある。日本にしかない台湾のアメリカン。
阿呆木 名古屋だからねえ。
杉腹 名古屋も台湾もアメリカもお前にヒトコトでそんなふうに言われたくないだろうなあ。
椎名 伊勢うどんが健闘したね。当初は面妖なるうどんの日本代表かと思っていたけれど、意外に奥が深くておいしいし、何よりも格調というか貫禄というか。
阿呆木 品格というか。
杉腹 伊勢うどんはお前にそう言われても嬉しくないだろうなあ。
三太夫 このブロックだけでしょう。ハルサメがあがってきたのは。
癖ノ瀬 ハルサメの出場はさわやかな風を感じたね。味噌煮込みうどんには常にダーティなイメージがあるからねえ。
三太夫 なぜだろう。
砂糖 まずうどんとしては値段が高いですよね。それから名前がよく似ているというかまぎらわしい「山本屋本店」と「山本屋総本家」の二大勢力のけっこう辛辣なタタカイ。強烈に癖のある沸騰する八丁味噌。
杉腹 でも結局ここが予想どおり勝ちあがって甲子園に出てきた。もうこの「麺の甲子園」では常連です。
高箸 ナイター、金網、栄養。
癖ノ瀬 阿呆木、この意味を説明しろ。
阿呆木 よく金持ちの私立高校でナイター設備があって練習量が半端じゃない甲子園常連校があるでしょう。アレを言ってんじゃないすかね。栄養っていうのは味噌煮込みうどんの栄養じゃなくて「栄養費」ってやつじゃないすかね。
一同 なるほど。
杉腹 関西ブロックも激戦でした。
癖ノ瀬 ここはとにかく難波の「肉吸いうどん」が凄かった。いや強かった。ぼくはあのあと個人的に二回行ったもの。
三太夫 しかし同時に食べる卵かけごはんが強烈にバックアップしてるのは大会規定に影響してこないのかな。
杉腹 和歌山の「井出商店」の一口寿司とか久留米の「沖食堂」のグリーンピースおにぎりとかほかにもいろいろあるからねえ。
砂糖 大阪ではチリトリ鍋のうどんも捨てがたかった。
貧しさがつよい
椎名 にしん蕎麦の奥深さにも驚いたけれどなあ。京都ラーメンも意外にくどいトン骨醤油系で強烈だったんだよね。
杉腹 このブロックは「くずきり」が出場辞退しました。
三太夫 あんな下品なもんに出れへんどすえーっていうわけだろうなあ。結局は「肉吸い」が圧勝だったものね。砂糖君なんかは「肉吸い」という名称を聞いただけですでにくらくらしてたもの。
杉腹 次は四国です。ここは特殊地帯で「讃岐」は独立したブロック。それを囲むかたちで四国ブロックが開催された。
三太夫 讃岐というエリアそのものがシードされているってコトですかね。
椎名 ここは「徳島ラーメン」できまりだね。それより問題は強豪揃いの讃岐だなあ。
杉腹 椎名大会委員長が日本縦断全日程を通じて讃岐の「山越」の「釜あげ」を我を忘れておかわりしていた。
三太夫 卵、山芋とろろのひやあつうどん「かまたまやま」ですね。実はあれはワタシも……。
癖ノ瀬 なみいる強豪のルツボならではというブロックでしたがぼくはもう一麺「るみばあちゃんの池上製麺所」を推したい。
椎名 あそこもおいしいけれどあまりにも貧しさを演出しすぎていないかい。テーブルは中古のスチール製の、不燃ゴミ捨て場にあるようなやつだし椅子はブロックを積んで板を渡してある。あれじゃ戦後間もなくの風景だよ。行列のできる店なんだから何もあそこまで。
杉腹 でも安いんですよ。
癖ノ瀬 あそこの麺が空港なんかでパック入りで売り出された。一パック一二○円だけど店で食うと七○円。
三太夫 例の六本木の「竹やぶ」のせいろそば一本でこの店のドンブリ一杯ぶん。
砂糖 貧しさが負けた。
阿呆木 いいえ、世間が支持してます。
高箸 畑、ネギ、うどん御殿。
三太夫 説明して。
阿呆木 さぬきうどんは畑の中のトタン小屋でとか、道端でウンコずわりして食うとか、ネギは自分で畑から抜いてくるとか貧しさがひとつの人気のキーワードになってます。でもそのむこうにその店の御殿のような立派な母屋が見えていたりしている、ということですね。
杉腹 それでいいの。
高箸(うなずく)
杉腹 では広島・北九州ブロックです。ここは久留米の「沖食堂」が優勝してますが広島の「小鳥系ラーメン」も強敵だった。
椎名 小鳥系の「すずめ」にはオレそのあともう一度行ってしまった。
三太夫 ここもトン骨醤油系だけれどあっさりしていて量も軽い。的確にコンコン打って守備もそつないってかんじですな。
癖ノ瀬「沖食堂」の「支那うどん」には感動したなあ。あそこのグリーンピースのおにぎりを食って卒業していった隣りの明善高校の生徒諸君が羨ましい。
阿呆木 わが高校の裏にあんな食堂があったらなあ。
砂糖 男女共学だし。
三太夫 放課後、沖食堂であおう。なるべく隅のほうでな――なんていうメモを。
杉腹 続いて西九州ブロック。
癖ノ瀬 急に展開が早くなった。
杉腹 ちょっと試合時間の変更のサインが入ったの。今回で決勝までいくんじゃなくて今月と来月の二回にわけて決勝の記事を載せることになった。
椎名 早く言ってよ。
三太夫 ここは五島列島まで渡ったのに、長崎の「皿うどん」が優勝なんだ。しかも五島の「椿うどん」は優勝候補の一角になっていたのに。
椎名 そう。おれんち年に何回か取り寄せているもの。
癖ノ瀬 ぼくは熊本ラーメンの「黒亭」ですね。ニーチェの言葉が店内に貼ってある。
椎名 しかし優勝は「皿うどん」で意外性はあったけど筋はとおっている。努力もしてるし地域住民の応援も大きかった。
杉腹 本命と言われた「長崎ちゃんぽん」はどうしちゃったんだろう。
高箸 イカに野菜、夕焼け。
杉腹 阿呆木君。いまの高箸のコトバの意味を説明して。
阿呆木 もともと長崎ちゃんぽんはイカとか野菜とか余ったものを投入しておいしく食べようと努力して生まれた。そういう貧しい夕焼け野球少年時代のハングリー精神を失ってしまって今は観光客のための観光麺になってしまった、ということですね。
癖ノ瀬 えー? いま、そんな複雑なこと言ってたの?
阿呆木 まあそうですね。いまはチャンポンビルまで作ってしまったし。
杉腹 次は南九州と和歌山という苦し紛れの変則ブロックです。「黒潮逆流リーグ」などと強引な名がついていた。
三太夫 シリーズも最後のほうになると地域の消化試合みたいになってくる。
砂糖 でも内容は豊富なんですよ。なんといっても強豪中の強豪、テレビチャンピオンにもなったことのある和歌山の「井出商店」が一回戦で敗退しちゃった。
癖ノ瀬 もう大変なことがおきたわけだよなあ。新聞にも出たもんね。
阿呆木 えっ? どの新聞ですか。
杉腹 どこの新聞でもいいの。まったく空気が読めない奴だなあ。
三太夫 結局このブロックは同じ体質というか、同じ戦法の「くろいわ」と「こむらさき」の激突になった。豪速球、豪打でどっちが優勝してもおかしくない。
杉腹 いよいよ最後は沖縄・八重山ブロックです。ここも参加麺多数で強豪ぞろい。大変な展開でした。
三太夫 ここで一番期待してたのは「前田食堂」の「牛肉そば」だった。正確には牛肉と山盛りもやしそばですが。
杉腹 それちょっと味覚がおかしいよ。だってあれコショウの味しかしないじゃない。
椎名 ぼくも何回食ってもいいな。
杉腹 え? 信じられない。
三太夫 まあ、沖縄の歴史的苦悩と憂鬱がああいうところにあると。
砂糖 強引だなあ。
阿呆木 でもこのブロック「亀かめそば」が優勝したんですよね。ここは地元の人の絶大な人気がある。
高箸 噛め!
阿呆木 沖縄の人は「たべろ」ということを「かめ」と言うんです。
杉腹 各ブロックからの代表麺の紹介がすんだところで、いよいよ次号はトーナメントによる優勝決定戦です。