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最終回 優勝決定戦 大座談会
入場行進

 一年半にわたって繰り広げられた「麺の甲子園」。全国あちこち歩きまわり、いろんな麺を勝手に絶賛、あるいは酷評し、強引に「地方大会」に出場させ、愛したりいたぶったりと好きなようにしてきましたが、いっこうにヒルムことなくとうとう決勝トーナメントまできてしまいました。
 強引に出場させた麺およそ四六○麺。そして全国各地の熾烈なブロック大会を勝ち抜いてきた二十四の代表麺が、いま怒りと苛立ちと不安と不満に胸だの胃袋だのを膨らませてごしゃごしゃと行進してくるところです。
 先頭は前回山形の強豪「酒田ワンタンメン」を破って見事初優勝をとげた香川県代表の「さぬきうどん」です。優勝麺だからそれほど不満や怒りはないようです。
 真紅の優勝旗を掲げて主将の「かまタマ君」(かまあげタマゴかけ)を先頭にさぬきうどんの精鋭選手たちが胸を張って堂々と行進してきます。あまり胸をはりすぎるとおつゆがこぼれます。グラウンドには「麺の甲子園」の歌が浜風に乗ってたからかに流れています。

風さやかなる行列に
耐えて希望の麺の海
いざ奮い立て若者よ
いや老人も
世界の平和を祈りつつ
かがやかなる箸さばき
つゆまで飲み干す熱情に
見よ雲がいく 汗に泣く
すすれ すすれ すすれ
麺の 麺の 甲子園
(くりかえす) 

 満員のグラウンドに大きな拍手が溢れます。
司会「本日はここに全麺協〔全国麺なら何でも食うぞ何時でも行くぞ連絡協議会〕専務理事の鳴門さんと、麺の大食い探検家、鮫腹さんに解説においで願っています。鳴門さん、ついにこの日がやってきましたねえ」
鳴門「ええ、素晴らしいことですねえ。しかしそれにしても各選手落ちついていますね。第二回のときは興奮したのか怒ったのか愛知代表の〔味噌煮込みうどん〕が本部前で転んであつあつの八丁味噌をあたりにぶちまけてしまったんですよねえ。この強烈な日差しと八丁味噌のにおい、愛知からの応援団の悲鳴の凄まじさに卒倒するチームがいました」
司会「どこでしたっけ」
鳴門「すぐ後ろにいた長野県代表の〔信州そば〕です。かれらは普段せいぜい擦り味噌程度しか知りませんからあのにおいに慣れていません。あっという間でしたね。そのためか試合は冴えず、帰宅後寝込んだ選手もいたそうです。週刊誌にそう書いてありました」
司会「気の毒なアクシデントでしたね。さて今年の展開予測はどうでしょう?」
鮫腹「やはり前回の優勝麺〔さぬき〕が練習量その他でひとつ飛び抜けているでしょうね。でも決勝トーナメント常連の〔札幌味噌ラーメン〕もよく走り込んでいてモヤシやニンニクとの連携プレーも完全なものにしています。毎回優勝候補と言われてまだ結果を出していませんから今年こそは、と張り切っていますし楽しみです」
司会「練習量とはどういうことをさすのでしょうか?」
鳴門「数値的にはどれだけ食べられているか、ということですね。専門的には〔食われ量の定理〕といいます。ピタゴラスなんかが論述していますね」
司会「はあそうでしたね。ほかに今年はどういうことに注目したらいいでしょう」
鳴門「今年は蕎麦勢が各地区でブロック優勝して決勝トーナメントに進出してきている、というのが大会前の大きな話題のひとつでした。それから全麺連による規制緩和でトコロテン、イカソーメン、糸コンニャク、キリボシダイコンなどのいわゆる境界部門というか、そういう分野からの出場も活発だった。準麺というか亜麺というか」
鮫腹「アーメンじゃないのね」
司会「(無視して)さあグラウンドでは遠い先島諸島からやってきた〔宮古そば〕の選手宣誓がおわっていよいよトーナメント組み合わせのくじ引きがはじまります。では第一回戦からの戦況を現場からナマナマしく報告してもらいましょう」

強豪さぬきうどん

「エー、こちらは試合の現場です。まあ普通は〔試合の現場〕とはいいませんね。殺人事件じゃないんだから。エート、だからこういうのは困るんですよね。実際に麺同士がぶつかりあって戦えないんだから。しょうがないからこの取材で全国十七ブロックを実際に歩いてきた七人の審議団による冷静な分析と白熱した議論によってひとつひとつ優劣を判定していこう、ということになりました。これは優勝に関係してくるようになると非常に悪質で油断のならない言葉のレトリックも交差してくるでしょうから、読者の皆さんは前号の〔前編〕からご覧になったほうがそのアンフェアかつ専横なる展開がわかり、馬鹿馬鹿しさと、心よりいい加減な内容にとことん苛々できること間違いありません。では抽選がおわって一回戦第一試合が決まったようです」
杉腹「一回戦第一試合は〔福井のおろしそば対神田のまつやのもりそば〕これはもろに本格的なうまい蕎麦対決となりました。しかし両麺への論議は前回の座談会で出つくしました。勝敗は素早く挙手でいきます。ハイ」
 四対三で〔神田まつや〕の勝ち。一回戦でモロに本格蕎麦同士というのはつらい、との声あり。
杉腹「続きまして〔山梨のほうとう対福島の高遠そば〕どちらも公立高校というかんじですね。〔高遠そば〕は箸のかわりに一本のネギで食べるという非常にきわものというかトリッキーな麺でしたが、食べてみたら意外な実力者。東北の未来を感じたという審議団の一員もいました。前回でそのあたりの論議は出つくしたと考えていいでしょう。さあ戦いです。来るか来ないか! 張るか張らないか! 勝負です」
 七対ゼロでほうとうの勝ち。ほうとうの田舎田舎した選手の面々に古きよき高校野球の郷愁を感じたとの声あり。
杉腹「次は〔旭川ラーメン対さぬきうどん〕です」
癖ノ瀬「おお、前回の優勝麺対北の強豪」
砂糖「早くもつぶしあいだ」
杉腹「七対ゼロでさぬきうどんの完封勝ち」
三太夫「勝負が早いのね」
杉腹「手をあげるだけだからね」
癖ノ瀬「足のたくさんあるゲソ天君が一番バッターで毎回塁に出てゆさぶりました」
杉腹「次は大阪の問題児〔肉吸いうどん対宮城のうーめん〕です。茶髪グループと東北の孝行息子とのタタカイです」
 ガンヅケゆさぶり攻撃あって五対二で〔肉吸い〕の圧勝。癖ノ瀬が試合後二回も個人で肉吸いの行列に並んでいた姿が発見され問題にされたが「やってない。並んでいただけだ」と必要以上に叫ぶのが印象に残った。「やってない」とは何をやってないのかも話題になった。
杉腹「次は〔鹿児島ラーメン対沖縄の亀かめそば〕です。これも力の入った対戦で、どちらも地元の応援が強い。とくに沖縄おばあの応援がすごいです。かめかめというのは沖縄のおばあのよくいう“食べろ”という意味の噛め噛めなんですね。灼熱の南国対決」
三太夫「おお。四対三で〔亀かめそば〕の勝ち。甲子園の沖縄勢にはむかしからNHKの判官びいきがなんとなくありましたね。次も注目の対決で〔下仁田シラタキ・糸コン姉妹対酒田のワンタンメン〕。一回戦最後の組み合わせですな」
椎名「おおし。ついに出た。個人的には酒田のワンタンメンにがぜん肩入れしますなあ。前回は決勝で敗れた。そろそろ今年あたり酒田のワンタンメンの年ではないかと思っていたんだ。シラタキ・糸コンニャクも好きだけれどあの人たちはあくまでも糸コンとシラタキですよ」
癖ノ瀬「それを我々のところに運んできたのが年頃の可愛い姉妹だった。そしていろいろ聞いてみるとシラタキと糸コンニャクは血縁、というか兄弟もしくは姉妹の関係にあった。そういうことが強く印象に残った。あろうことか専属カメラマンの砂糖君が撮っていたのはシラタキ・糸コンよりも、それを運んできた姉妹の写真のほうが多かった、という事実が判明しました」
椎名「だあらね、わたしは言いたい。みなさんこのあたりにみなさんの見識というか、人格というか、麺とは何かというか、つまりは麺格というものも関係してくるんです。美しい麺とはなにか、ということです。みなさんそういうことを深く考えながら挙手しなさいね。いまは憲法九条も守らなければならないが酒田のワンタンメンも守らなければならない重要な時に来ているのです」
杉腹「では審議団の皆さん、挙手を」
 六対一で糸コン姉妹の勝ち。
椎名「ギョホエー」

冬の甲子園を

司会「試合はシード対決のある二回戦になりました。鳴門さんどうですか。いままでの展開で」
鳴門「まあくじ引きのあやというか一回戦で優勝を左右する対戦が多くて複雑なものを感じますね」
司会「二回戦第一試合はどちらも東京の下町の名店〔神田まつやと浅草並木藪〕のもりそば対決。沖縄の多くの人はもりそばの食べ方がわからないといいます。蕎麦湯など出てくるとどうしていいか狼狽するそうです。そういう意味では非常に東京ローカルの対決というか」
鳴門「まあね、ある意味ではこのどちらかと、あとで出てきますけど長崎の〔皿うどん〕が対戦しなくてよかったと思うんですよ」
司会「早くも老舗蕎麦対決の決着がついて浅草〔並木藪のもりそば〕が勝ちました」
鳴門「一点差ですからどちらが勝ってもおかしくないわけですよ」
司会「続いて南西諸島宮古島の〔宮古そば対ほうとう〕です。あれ! そう言っているうちにもう勝負がつきました。七対ゼロでほうとうです。強いですね。山梨県。続いて〔札幌味噌ラーメン対さぬきうどん〕です。鳴門さん、これなんかもう決勝の組み合わせといってもおかしくないですよね」
鳴門「そのとおりですね。これは興味深いですねえ。いまや札幌味噌ラーメンは究極の完成域に近づいていると思うんですよ。日本麺類界の代表のひとつ。次はアジアだという声が大きいですからね」
司会「タイのトムヤムクンヌードル、ベトナムのフォー、ミャンマーのモヒンガー。いろいろ楽しみな強豪がいますからねえ。あれ? なんとこの試合は五対二で〔さぬきうどん〕の勝ち。いやあ驚きました。札幌味噌ラーメンにとってさぬきの壁は厚いですねえ」
鮫腹「麺の甲子園は冬の大会をやらないと不公平ですよ。厳寒期だったら札幌味噌ラーメンに勝てるところは少ないっしょ」
鳴門「少ないっしょ、ってあんた道産子?」
鮫腹「バレましたか」
鳴門「バレバレ」
司会「次は〔釧路ラーメン対徳島ラーメン〕あっさりとこってりのガチンコです」
鮫腹「ありぁあ。もう勝負ついてますよ。四対三で〔徳島ラーメン〕の勝ち。だからやっぱり冬の甲子園を」
司会「次は噂の〔沖縄の前田食堂対広島の小鳥系ラーメン〕ここから再び現場からの報告に切り換えましょう。杉腹さーん」
杉腹「はいこちらは試合現場です。このむごたらしい事件も現場検証もおわってようやく町は平静をとりもどしていますじゃなくて現在〔前田食堂〕へむけた熱い応援演説が三太夫によって行われています」
三太夫「だあらね。東京のようにどこへいっても三十秒で隣りのラーメン屋があるところとちがって、那覇から一時間以上もかけてやっと出会うオアシスみたいな店なわけですよ。こういう前田食堂のような地方の麺があって、それが日本の麺文化を支えているわけですよ。そこのところを考えてほしいんですよ」
砂糖「でも小鳥系ラーメンも店主におごるところもなく、無意味に行列を作らせて喜ぶわけでもなく、テレビがときおり騒ぐように達人でもなく、すべてに淡々としていますよね。ああいうところは行列のできる東京の繁盛店にはないですね」
 しかし勝負は四対三で〔前田食堂〕の勝ちとなった。
阿呆木「非常ですね。いや間違えた。非情ですね」
三太夫「お前いたのか。しかし今の間違いは単純に文字変換ミスじゃないの」
阿呆木「高箸ディスポーザー大さんとともに先月号からずっとここにいました」
三太夫「おまえ質問に正確に答えてないな」
 次は大阪の〔肉吸いうどん〕に久留米の〔沖食堂〕のシード対決である。沖食堂は久留米の明善高校のそばにあって博多あたりにまでひそかにここのうまい支那うどんの評判が伝わってきている。でもそれよりも前に地元の人気店で、いつも満員。明善高校の生徒たち、なかんずく運動部の選手たちはこの沖食堂で青春時代を謳歌したと断言していいようです。
杉腹「さあ、〔肉吸いうどん〕一筋できた癖ノ瀬さんどうする? 肉吸いと癖ノ瀬さんの間にはいま逆栄養費疑惑がチラチラしてるようですよ」
 結果は六対一で〔沖食堂〕の勝利!

ついにベスト四

司会「そういうような展開で早くもベスト四が出そろい、準決勝となりました」
 ええ? 早すぎるう、という声あり。しかし残り試合時間も迫ってきていてすべての対戦を解説している時間はないのよ。
 残ったベスト四は次のような顔ぶれである。

 並木藪のもりそば(東東京代表)
 さぬきうどん(香川県代表)
 沖食堂の支那うどん(福岡県代表)
 シラタキ・糸コン姉妹(群馬県代表)

 ここからは実況中継になります。
「準決勝第一試合は東京の老舗〔並木藪のもりそば〕対香川県代表の強豪です。なにしろ前回の優勝麺〔さぬきうどん〕です。先攻は〔さぬきチーム〕のゲソ天君。ゆるいシュートをカツンと跳ね返して二遊間。ゲソ天君早くも先制の出塁です。二番ぶっかけ君。定石どおり送りバント。一アウトで三番かき揚げ君。得意のふわっとしたかき揚げフライは藪蕎麦チームのライト、おかめ君にゆるりと捕球されました。おかめ君笑っています。続いてさぬきチーム四番のかまタマやま君です。いいですね。さぬきは余裕がありますね」
鳴門「まあさきほど私がもうしあげたようにピタゴラスですからね」
 東京の並木藪蕎麦は四対三で敗れました。
鳴門「まあね。藪蕎麦は悔いることはないですよ。蕎麦対うどん。これからも伝統の一戦になっていくでしょうからね」
 第二会場ではどちらも初出場、福岡県久留米出身二所ノ関部屋じゃなかった明善高校横の〔沖食堂対群馬のシラタキ・糸コン姉妹〕
 両者にらみあっております。最初につっかけたのは姉の糸コン。けっこうからむのは得意です。沖食堂困った顔をしてぐるぐる回っています。その足に素早くとりついた妹のシラタキが巧みに何本も這いのぼっていきます。いやですねえ。だから女はいやですねえ。気持ち悪いですねえ。でも沖食堂辛抱して隙をついてぶちかまし、沖食堂そのままかまわずシュート!
鮫腹「あの……これ甲子園ですよね」
司会「いいの。もうそんなこと言ってられないでしょう。時間がないんです。球はぐんぐんのびていきます。沖食堂やる気になっているのがここからもわかります。球はぐんぐん三遊間。のびてのびて、ああ、麺だけにあまり伸びるといけません。おあとがよろしいようで……などと言っているうちにあああああ、世界陸上の進行係の男みたいにもう騒ぎまくりです。あのひとうるさかったですねえ。あああああああああ。はいったああああああ。ゴオオおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおル!」
杉腹「かくて決勝は〔さぬきうどん対沖食堂〕ということになりました。ではこのあたりで両者の身辺整理をしてみましょう。今世間の目はドーピングとか特待生問題とか事務所経費問題とかいろいろうるさいですからね」
阿呆木「さぬきうどんには“貧しさ疑惑”が出ています。わざと店内の造作や食べるしくみを貧困ふうにして涙を誘うという高等戦術です」
癖ノ瀬「でもそのぶん確実に安くして、ルミばあちゃんの池上製麺所なんて素うどん七○円ですよ。いまどき七○円ですよ」
三太夫「その努力姿勢は高校生として立派です。見習うべきだ」
砂糖「高校生って、ルミばあちゃんですよ」
阿呆木「〔沖食堂〕にだっておばあちゃんがいました」
癖ノ瀬「その意見にどういう意味が?」
杉腹「沖食堂は店のなかがとにかくなごやかでしたね。みんなが嬉しそう」
三太夫「店の人の存在感があまりない。しかし座って待っているととにかく確実においしい支那うどんをはじめとした麺類がやってくる。あそこにあったグリーンピースおにぎりをもう一度食べたい」
癖ノ瀬「それを考えると明善高校を卒業していった生徒は幸せだったろうね。ふるさとの味があんなにおいしいんだ」
椎名「でも卒業して町から出て例えば上京すると、偉そうな店主が三○分も待たせて背アブラギトギトのラーメン出して黙って食え、なんていう現実にでっくわす」
杉腹「では評決です。挙手を願います」
阿呆木「また挙手にもどるんですか?」
杉腹「時間がないんです」
 六対一で〔沖食堂〕が勝ちました。完勝といっていいでしょう。
一同「おお!」
司会「では勝利者インタビューです。沖食堂チーム主将の支那うどん君です。おめでとうございました。緒戦から強豪との戦いが続きました。その一回戦。大阪の〔肉吸い〕は強敵だったんじゃないですか?」
支那うどん「いえ、ああいうのは九州にはないのでよくわかりませんでした」
司会「沖縄の〔前田食堂〕はコショウが強烈でした」
支那うどん「もう目も開けられなくて。対戦したときはグリーンピースのおにぎりを食べるしか何も思いつきませんでした」
司会「この大会のアイドルでもあった〔シラタキ・糸コン姉妹〕とは五対二と厳しい接戦でした」
支那うどん「もう夢中でしたス」
司会「決勝戦は前回優勝の〔さぬきうどん〕でしたが六対一で大勝しました。どんなことに気をつけましたか?」
支那うどん「もう全力をだそうと……」
司会「母校にかえって誰にいちばんにこの喜びを報告したいですか」
支那うどん「毎日うちのスープの基礎を作ってくれて毎日ノックしてくれた店の親父さんに感謝したいです」
司会「おめでとうございました。では再び放送席にマイクを戻します」
杉腹「これで終わります。今まで『麺の甲子園』に声援をおくってくれた皆さん、全国の麺のみなさん。どうもありがとうございました」
(完) 
# by shiina_rensai | 2007-11-06 15:23 | Comments(263)

第19回 各ブロックによる優勝決定戦!!!
ヤキソバは少年野球

解説 日本は美しい国かどうかはわからないけれど「麺の国」であるのは間違いない。どんな田舎に行ってもラーメン屋や日本蕎麦屋がある。都会には行列のできる店もいっぱいある。日本各地にはさまざまなご当地麺があってみんな「おらんとこが一番うまい!」と言ってあとに引かない。
 ではどこの麺が本当に一番うまいのか、全国各地を実際に歩いて食って胃袋で考えてみよう。日本一の麺をそろそろここではっきりさせよう。そういう強い意志っつうか強い食い意地っつうか、まあそういう命題のもとに六人の「麺の甲子園審議団」が結成され、全国を十七エリアにわけ、一年半にわたって巡礼のように歩き、それぞれのブロックの優勝麺を決めてきた。
 今回はいよいよその十七ブロックの各地区優勝麺によるグランド・チャンピオンを決める「麺の甲子園・優勝決定戦」ということになったのである。すべての麺に集まってもらうわけにもいかないので、取材にたちあった関係者全員が、銀座のわりと大衆的な日本蕎麦屋「よし田」の二階の二間を借り、まあ小説雑誌の連載でもあったので、いわゆるひとつの「文学賞選考会」のような気分で、その輝かしい優勝麺を決めよう、ということになった(グラビア参照)。
 開会にさきだち来賓の挨拶はないが、まず一同起立して、大会の歌を高らかに歌うことになった。

 麺の甲子園の歌

詞 椎名誠 

風さやかなる行列に
耐えて希望の麺の海
いざ奮い立て若者よ
いや老人も
世界の平和を祈りつつ
かがやかなる箸さばき
つゆまで飲み干す熱情に
見よ雲がいく 汗に泣く
すすれ すすれ すすれ
麺の 麺の 甲子園
(くりかえす) 

杉腹(司会)一同着席。ではこれより第三回・麺の甲子園の決勝大会を行います。
阿呆木(途中参加の若いカメラマン) 第一回、第二回なんてあったんですか?
癖ノ瀬 椎名さんの三年前の連載「全日本食えば食える図鑑」でいきなり第二回麺の甲子園が開かれてたの! その中で春の選抜がすでに行われていたことがハッキリ記述されているの! だから今回は三回目。
阿呆木 そのときはどこが優勝したんですか。
今泉三太夫(以下、三太夫) 香川県代表の「さぬきうどん」だった。山形県代表の「酒田ワンタンメン」との壮絶な決勝戦は今でも語りぐさだよ。
砂糖(専属カメラマン) 敗退した「酒田ワンタンメン」が泣きながら甲子園の砂を袋に入れていたのが感動的でした。
阿呆木 ワンタンメンがどうやって砂を袋に入れるんですか?
癖ノ瀬 誰だって負けたら甲子園の砂を袋に入れるのに決まっているだろう。場の空気の読めないやつだなあ。
杉腹 スペースが限られているのでもう総括に入ります。
三太夫 時間がないんだ青春は。
癖ノ瀬 そういうことを言ってるからさらにスペースがなくなる。
杉腹 ではまず北海道ブロックから。どこももうブロックの優勝は決まっているから決勝に臨むにあたってそれぞれ検証していく、という意味あいになります。優勝校じゃなかった優勝麺以外にも決勝トーナメントに出場させたい麺なども考慮してください。表にあるように北海道は高校野球に準じて二つのエリアにわけて大会が行われました。
砂糖 ここは前評判の高かった釧路の「仁」のタンメンが準決勝で落ちた。三太夫さんが絶対推していたのに。
三太夫 緊張があったのかあの日は調子がよくなかったよね。冬は断然強かったんだけど。肩がちょっと、というか塩がちょっと強すぎた……。
杉腹 旭川は「蜂屋」が強かった。
癖ノ瀬 和寒の越冬キャベツなんか好感もてたけどねえ。北風の中で頬を真っ赤にしてよく戦ってた。
椎名 東北のソバモヤシと並んで野菜界からの出場というので地元では話題になった。細切りにするとたしかにやるな、と思ったけどなにしろすすりにくい。
杉腹 出場麺の大会規約は①長さ七センチ以上②口から垂れ下がること③すすれること――ですが、この「すすり」に弱かった。
砂糖 雪が多いので練習時間が少ないというハンデがありますね。
阿呆木 でも和寒のキャベツは雪がかぶさっているからうまいんですよね。
癖ノ瀬 だからここは甲子園だろ。場の空気の読めないやつだなあ。
三太夫 釧路ラーメン「まるひら」は朝からタクシーの運転手が並んでました。
杉腹 では北北海道ブロックは「まるひら」と「蜂屋」に決まりと。続いて南北海道。
癖ノ瀬 第二回に準決勝ベスト4に出た「味噌ラーメン」がやっぱり圧倒的だった。
砂糖 イカソーメンにもう少し頑張って欲しかった。
三太夫 思ったよりセンが細かったよな。
癖ノ瀬 むしろ太いんでしょ。あれではイカウドン。
杉腹 次は東北・日本海ブロックです。
阿呆木 もう東北ですか。
杉腹 こうして全国を概観するんだからね。忙しいんだよ。時間が読めないやつだなあお前は。ここは有望とみられた山形の「冷しラーメン」があっさり負けてます。
癖ノ瀬 強豪が多いからね。「稲庭うどん」「麦きり」「酒田のワンタンメン」。
砂糖 秋田の横手は「やきそば」を町ぐるみで売り出している。でも評価は低かったですね。
杉腹「やきそば」はほかにも太田市、富士宮市と町おこしの立役者です。
椎名 でもあのくらいの町に五十店ぐらい「やきそば屋」があって百人ぐらい入れる店があって、そういうひとつの店で百人みんなが「やきそば」食っているっての怖くないか。「やきそば」ってそんなにおいしい?
癖ノ瀬 めちゃくちゃおいしいのとまずいのとの差があまりないような。
三太夫 子供の頃屋台で食べた十五円ぐらいのが一番うまかったような。
椎名 今の意見にとどめをさすな。「やきそば」は少年野球なんだ。三角ベース。
阿呆木 何かみなさんの発言が怖いもの知らずですね。

行列という名の共同幻想

杉腹 東太平洋ブロックは優勝候補の声も高かった「盛岡冷麺」が思わぬ敗退。逆にキワモノかと思われた一本ネギで食べる「高遠蕎麦」や知名度のひくい「うーめん」が活躍しました。
癖ノ瀬 畑の真ん中にある「白河ラーメン」とかね。
杉腹 ひき続き新潟・北関東ブロックです。もう試合時間の三分の一にきちゃったから急がないと。
三太夫 ここは驚くべきことに「シラタキ糸コン姉妹」が優勝しちゃった。これはシラタキと糸コンニャクを持って出てきた姉妹に砂糖カメラマンがくらくらして票集めにカネをばらまいたという説がある。
椎名 シラタキ系こんにゃくにまけた麺が怒って熱い汁をばらまいた、という説もある。
癖ノ瀬 あのあと砂糖君は三色シラタキをさらに食いまくって気をひいたというか赤い糸をひいたという説もある。
三太夫 よく大会スキャンダルにならなかったなあという説もある。
阿呆木 なんか「説」ばっかしですねえ。ぼくその大会には行かなかったので何のはなしなんだかよくわからないんですが読者にはわかるんですか?
椎名 わかんないだろうなあという説の方が多いね。
杉腹 じゃ次の飛騨高山・北陸ブロックです。有名な「ブラックラーメン」が一回戦敗退。本当にまっくろで辛くて。
三太夫 いきなり行った東京のものがこれを食べると全国区では通用しないとすぐわかるんだけど地方に根ざした、それなりに生い立ちの歴史や意味があるこういう麺をもっと深く掘り下げたかった。
椎名 三太夫としては信じられないくらいまともなことを言っているぞ。
三太夫 でも福井の「おろし蕎麦」を食ったらもう何も言えなくなった。
椎名 なんで。
三太夫 うまくて。
椎名 なんだ……。
杉腹 神奈川・山梨は「横浜」勢が意外に振るわなかった。どうしてですか。
椎名 この企画で横浜の「家系」という行列のできるラーメン屋にはじめて行ったけれど行列の意味がわからなかった。食い物屋に行列を作っているのを見たのは三十五年ぐらい前の日中国交回復して間もない頃の中国と二十年前のソ連。日本のラーメン屋では当たり前だけど、今回の取材でそのあといろいろ行った行列のできる都会のラーメン屋でうまいと思った店はどこもない。行列は「行列をつくる」という共同幻想の中の価値にすぎない。行列の好きな人にはうまい。それでいいんだと。
癖ノ瀬 このブロックでは山梨の「ほうとう」が活躍した。すごく甲子園っぽい。
三太夫 田舎の高校生カップルが汗だらけになってうまそうに食っている。いい風景だった。ああいう顔をした青少年男女がよく顔を真っ赤にして甲子園のアルプススタンドで応援している。
砂糖 吉田うどんにはまいりました。本当はあんなもんじゃない。あの店しかあいてなかったからあんなことになった。静岡生まれとしては泣いても泣ききれません(注・時間が遅く片手間でやっているようなものすごく汚くてまずい店に行ってしまった)。
杉腹 麺はぐにゃぐにゃ、汁は化学調味料満載でドーピング問題おこしそう。
椎名 まあめぐりあわせの運というものがあるよな。
杉腹 余裕がないのでこのまま東京にいきます。ここは全国の代表麺が集結しているブロックでもあるので大変でした。
癖ノ瀬 トーナメント表をみればわかるように非常にバラエティ豊かですね。
高箸ディスポーザー大(以下、高箸) 本郷「高田屋」、一本うどん、残念(注・この人は最初から出席していたが無口なのでずっと黙っていてここで急に発言。全員の残したものも全部食ってくれるのでこういうミドルネームがついた)。
一同 ん?
高箸 でかい、太い、うまい(注・高田屋の長さ一・五メートル。太さ二センチ四方。一本になったうどんのコトを言っている)。
杉腹 なるほどあれは東京ならではといえるうどんかも知れない。しかし早々に敗退してますね。万人向けではない。
高箸 強い、固い、重い。
三太夫 ねえ。もうすこしつながって話できないの。そういうの単語語法というんでしょう。
椎名 東京はなんでもありの印象だ。ラーメン界は醤油にトン骨を合わせたのが完全にストライクゾーン。ラーメンはそこにカツオ節、煮干し、ジャガイモ、卵の殻となんでも入れてしまう。日本蕎麦はそんなことできないものなあ。
癖ノ瀬 六本木ヒルズの「竹やぶ」の日本で一番高い「せいろそば」一二六○円が話題になりました。計算によるとあのそば一本が六三円になり、それ一本の値段でさぬきうどんのひやあつ一杯が食える。
三太夫 そんななかで荏原中延のラーメン「多賀野」が安定していていいなと思った。
杉腹 煮干し醤油ですね。ここはラーメン評論家の一押しでした。
椎名 東京で心残りだったのは【海苔/の/り】とホウレン草とナルトののった単純醤油系の純正東京ラーメンをもっと食べておきたかった。
癖ノ瀬 東京はいたるところに行列のできるラーメン屋があった。ちょうど梅雨どきで傘をさしてじっと三○分以上も並んでいる行列は異様でもあった。
三太夫 そんななかで神田の「まつや」、雷門の「並木」が東京のふたつの巨大ブロックを制した。言い方は厳しいけど伝統の蕎麦部門で六本木の成り上がり蕎麦に神田や浅草の「粋」が圧勝した。
高箸 東京、激戦区、参議院選。
一同 ん?
阿呆木 東京のタタカイはこのあいだの参議院選挙のようだったと言っているのです。つまり日本蕎麦は民主党のようである、と。
癖ノ瀬 なんでお前が解説できるの?
高箸 ラーメン、自民、乱立自滅。
癖ノ瀬 なるほど。今のお前の解説でいいんだ。

ダーティ味噌煮込みうどん

杉腹 では名古屋です。ここは非常に個性豊かというか、トリッキーな麺がいろいろあって大いに沸かせました。
阿呆木 抹茶小倉スパゲティ対クラゲなんてのがあるんですね。クラゲも麺ですか。
杉腹 七センチ以上あるし、すすれる。
阿呆木 スパゲティがそのクラゲに一回戦で負けてるんですね。
三太夫 名古屋だからねえ。
癖ノ瀬 台湾ラーメンが活躍してました。台湾にはない日本にしかない台湾ラーメン。もの凄く辛いのでそれをマイルドにしたアメリカンというのがある。日本にしかない台湾のアメリカン。
阿呆木 名古屋だからねえ。
杉腹 名古屋も台湾もアメリカもお前にヒトコトでそんなふうに言われたくないだろうなあ。
椎名 伊勢うどんが健闘したね。当初は面妖なるうどんの日本代表かと思っていたけれど、意外に奥が深くておいしいし、何よりも格調というか貫禄というか。
阿呆木 品格というか。
杉腹 伊勢うどんはお前にそう言われても嬉しくないだろうなあ。
三太夫 このブロックだけでしょう。ハルサメがあがってきたのは。
癖ノ瀬 ハルサメの出場はさわやかな風を感じたね。味噌煮込みうどんには常にダーティなイメージがあるからねえ。
三太夫 なぜだろう。
砂糖 まずうどんとしては値段が高いですよね。それから名前がよく似ているというかまぎらわしい「山本屋本店」と「山本屋総本家」の二大勢力のけっこう辛辣なタタカイ。強烈に癖のある沸騰する八丁味噌。
杉腹 でも結局ここが予想どおり勝ちあがって甲子園に出てきた。もうこの「麺の甲子園」では常連です。
高箸 ナイター、金網、栄養。
癖ノ瀬 阿呆木、この意味を説明しろ。
阿呆木 よく金持ちの私立高校でナイター設備があって練習量が半端じゃない甲子園常連校があるでしょう。アレを言ってんじゃないすかね。栄養っていうのは味噌煮込みうどんの栄養じゃなくて「栄養費」ってやつじゃないすかね。
一同 なるほど。
杉腹 関西ブロックも激戦でした。
癖ノ瀬 ここはとにかく難波の「肉吸いうどん」が凄かった。いや強かった。ぼくはあのあと個人的に二回行ったもの。
三太夫 しかし同時に食べる卵かけごはんが強烈にバックアップしてるのは大会規定に影響してこないのかな。
杉腹 和歌山の「井出商店」の一口寿司とか久留米の「沖食堂」のグリーンピースおにぎりとかほかにもいろいろあるからねえ。
砂糖 大阪ではチリトリ鍋のうどんも捨てがたかった。

貧しさがつよい

椎名 にしん蕎麦の奥深さにも驚いたけれどなあ。京都ラーメンも意外にくどいトン骨醤油系で強烈だったんだよね。
杉腹 このブロックは「くずきり」が出場辞退しました。
三太夫 あんな下品なもんに出れへんどすえーっていうわけだろうなあ。結局は「肉吸い」が圧勝だったものね。砂糖君なんかは「肉吸い」という名称を聞いただけですでにくらくらしてたもの。
杉腹 次は四国です。ここは特殊地帯で「讃岐」は独立したブロック。それを囲むかたちで四国ブロックが開催された。
三太夫 讃岐というエリアそのものがシードされているってコトですかね。
椎名 ここは「徳島ラーメン」できまりだね。それより問題は強豪揃いの讃岐だなあ。
杉腹 椎名大会委員長が日本縦断全日程を通じて讃岐の「山越」の「釜あげ」を我を忘れておかわりしていた。
三太夫 卵、山芋とろろのひやあつうどん「かまたまやま」ですね。実はあれはワタシも……。
癖ノ瀬 なみいる強豪のルツボならではというブロックでしたがぼくはもう一麺「るみばあちゃんの池上製麺所」を推したい。
椎名 あそこもおいしいけれどあまりにも貧しさを演出しすぎていないかい。テーブルは中古のスチール製の、不燃ゴミ捨て場にあるようなやつだし椅子はブロックを積んで板を渡してある。あれじゃ戦後間もなくの風景だよ。行列のできる店なんだから何もあそこまで。
杉腹 でも安いんですよ。
癖ノ瀬 あそこの麺が空港なんかでパック入りで売り出された。一パック一二○円だけど店で食うと七○円。
三太夫 例の六本木の「竹やぶ」のせいろそば一本でこの店のドンブリ一杯ぶん。
砂糖 貧しさが負けた。
阿呆木 いいえ、世間が支持してます。
高箸 畑、ネギ、うどん御殿。
三太夫 説明して。
阿呆木 さぬきうどんは畑の中のトタン小屋でとか、道端でウンコずわりして食うとか、ネギは自分で畑から抜いてくるとか貧しさがひとつの人気のキーワードになってます。でもそのむこうにその店の御殿のような立派な母屋が見えていたりしている、ということですね。
杉腹 それでいいの。
高箸(うなずく)
杉腹 では広島・北九州ブロックです。ここは久留米の「沖食堂」が優勝してますが広島の「小鳥系ラーメン」も強敵だった。
椎名 小鳥系の「すずめ」にはオレそのあともう一度行ってしまった。
三太夫 ここもトン骨醤油系だけれどあっさりしていて量も軽い。的確にコンコン打って守備もそつないってかんじですな。
癖ノ瀬「沖食堂」の「支那うどん」には感動したなあ。あそこのグリーンピースのおにぎりを食って卒業していった隣りの明善高校の生徒諸君が羨ましい。
阿呆木 わが高校の裏にあんな食堂があったらなあ。
砂糖 男女共学だし。
三太夫 放課後、沖食堂であおう。なるべく隅のほうでな――なんていうメモを。
杉腹 続いて西九州ブロック。
癖ノ瀬 急に展開が早くなった。
杉腹 ちょっと試合時間の変更のサインが入ったの。今回で決勝までいくんじゃなくて今月と来月の二回にわけて決勝の記事を載せることになった。
椎名 早く言ってよ。
三太夫 ここは五島列島まで渡ったのに、長崎の「皿うどん」が優勝なんだ。しかも五島の「椿うどん」は優勝候補の一角になっていたのに。
椎名 そう。おれんち年に何回か取り寄せているもの。
癖ノ瀬 ぼくは熊本ラーメンの「黒亭」ですね。ニーチェの言葉が店内に貼ってある。
椎名 しかし優勝は「皿うどん」で意外性はあったけど筋はとおっている。努力もしてるし地域住民の応援も大きかった。
杉腹 本命と言われた「長崎ちゃんぽん」はどうしちゃったんだろう。
高箸 イカに野菜、夕焼け。
杉腹 阿呆木君。いまの高箸のコトバの意味を説明して。
阿呆木 もともと長崎ちゃんぽんはイカとか野菜とか余ったものを投入しておいしく食べようと努力して生まれた。そういう貧しい夕焼け野球少年時代のハングリー精神を失ってしまって今は観光客のための観光麺になってしまった、ということですね。
癖ノ瀬 えー? いま、そんな複雑なこと言ってたの?
阿呆木 まあそうですね。いまはチャンポンビルまで作ってしまったし。
杉腹 次は南九州と和歌山という苦し紛れの変則ブロックです。「黒潮逆流リーグ」などと強引な名がついていた。
三太夫 シリーズも最後のほうになると地域の消化試合みたいになってくる。
砂糖 でも内容は豊富なんですよ。なんといっても強豪中の強豪、テレビチャンピオンにもなったことのある和歌山の「井出商店」が一回戦で敗退しちゃった。
癖ノ瀬 もう大変なことがおきたわけだよなあ。新聞にも出たもんね。
阿呆木 えっ? どの新聞ですか。
杉腹 どこの新聞でもいいの。まったく空気が読めない奴だなあ。
三太夫 結局このブロックは同じ体質というか、同じ戦法の「くろいわ」と「こむらさき」の激突になった。豪速球、豪打でどっちが優勝してもおかしくない。
杉腹 いよいよ最後は沖縄・八重山ブロックです。ここも参加麺多数で強豪ぞろい。大変な展開でした。
三太夫 ここで一番期待してたのは「前田食堂」の「牛肉そば」だった。正確には牛肉と山盛りもやしそばですが。
杉腹 それちょっと味覚がおかしいよ。だってあれコショウの味しかしないじゃない。
椎名 ぼくも何回食ってもいいな。
杉腹 え? 信じられない。
三太夫 まあ、沖縄の歴史的苦悩と憂鬱がああいうところにあると。
砂糖 強引だなあ。
阿呆木 でもこのブロック「亀かめそば」が優勝したんですよね。ここは地元の人の絶大な人気がある。
高箸 噛め!
阿呆木 沖縄の人は「たべろ」ということを「かめ」と言うんです。
杉腹 各ブロックからの代表麺の紹介がすんだところで、いよいよ次号はトーナメントによる優勝決定戦です。
 
# by shiina_rensai | 2007-10-26 14:58 | Comments(194)

第18回 西東京ブロック篇
第18回 西東京ブロック

怪異飲食店行列

 一年半にわたって全国で展開してきた「麺の甲子園」は今回の西・東京ブロックが地方大会最終戦である。
 地元であるからいつもの審議団というか、麺の巡礼団というか、胃袋麻痺団というか、まあとにかくこの取材の関係者五人、それぞれの家から第一試合の現場に直接集合、ということになった。
 集合時間は午前十一時だがいつものとおり全員朝食抜きである。梅雨のさなかであった。しかし空腹であるから第一試合有利説は雨模様でもゆるがないだろう。
 まずは青山の「武蔵」。東京で今一番人気のあるラーメン屋「武蔵」の新宿店は毎日大行列なのでスケジュールを作る杉原は同じ味である筈の青山店を選んだのである。
 それにしても「ラーメンと行列」はつきものになってしまった。
 そこで今回はまず「行列」について最初に考察しておきたい。こういう取材でなければ絶対に自分は並ぶことはなかっただろうから考えること多々であった。
 食い物屋に並ぶ行列はきわめて日本的なものだろう。外国で食い物屋に並ぶ行列の記憶をさぐる。日本と国交回復した直後の中国と、まだソ連といっていた頃のロシアぐらいだろうか。これは人間の数に対して店の数が極端に少ない、ということが単純な理由だった。アメリカのハンバーガーショップに行列がないように、交通便利な大都市でのファストフードに近いラーメン屋で行列を作る国というのは極めて奇異なことなのだ。ラオスやベトナムにもビーフン系のフォーやフーとよぶ麺の繁盛店はあるが、店がいっぱいだと別のところに行ってしまう。暑い国だから路上に並んで待つなんて想像したこともないのだろう。もともとうまさの味の差なんて「あるかなきか」のものだから隣の空いている店にさっさと行ってしまって当たり前なのだ。
 この「麺の甲子園」シリーズで全国あちこちの麺の現場を見てきたけれど、地方よりも圧倒的に東京に行列が多いということがわかった。さらに行列を作る店はラーメン屋が多い。日本そば屋での行列というのは今回の全国取材でただの一度も見たことはなかった。これだけおびただしい数の「食い物屋」があり、なかんずく、そこそこにうまいラーメン屋がひしめく東京で、なぜ特定の店に行列ができるのだろうか。行列ができる店は「びっくりするほど」うまい、ということなのだろうか。それを身をもって確かめてみる、というのが東京大会の注目点のひとつなのであった。
 で、まずは「武蔵」である。十人前後しか入れないカウンターだけの店の厨房に店員は男二人。動作、言葉てきぱきとして気持ちがいい。その日カウンターに座っている客は全員男だった。丼飯を合わせて食っているガテン系もいて「がしがし」というかんじ。
 注文したのはあじ玉ら~麺八○○円。スープにはなるほど深いものを感じたが、意外なのは麺が太いからなのか全体にごわついていて調和がない。「麺の甲子園」などというルポをやっていながら恥ずかしいのだがぼくはそれほど味がよくわかるというわけではない。強いていえば直感や印象に頼っているところがある。その程度の判断なのだがいきなり「ん?」というかんじだった。新宿と青山ではこのあたりに違いがあるのかも知れないが、行列を作って食べても別にびっくりするほどうまいとは思わなかった。まああえていえばこのくらいのラーメンは一年半体験してきた全国のうまい店平均レベルをいくかいかないかというところである。いい店だけれどこの程度で行列を作ることへの疑問があった。三分の一だけ食って外へ。
 次は、なんと六本木ヒルズであるという。自宅からタクシーで一○分ぐらいのところにある有名な場所ながら、ここに来るのはその日が初めてだった。ぼくを初めとしてコーモリ傘を持った我々五人の男たちの「風景との不適合」ぶりが見事である。全員お上りさん状態でおしゃれな現代建築のかたわらをゴキブリのようにシャカシャカ移動。
 めざすは「竹やぶ」という高級蕎麦屋である。千葉の柏に本店があるという。うーむ千葉か。ぼくは世田谷の三軒茶屋で生まれたが下町の本所を経由して五歳のときに千葉に行き、十九歳までそこで過ごしてまた東京に戻ってきた。だから千葉には愛着がある。今回は取材最終回(次号が全国決勝大会)なので書いておきたいが、人生最初の麺体験は千葉の幕張の「タンメン」であった。世の中にこんなにうまいものがあるのか! と驚いたものだ。以来しばらくタンメンに呪縛されていた記憶があるが、その後あちこちの旅をしてタンメンは案外関東ローカルな存在であったということを知った。
 で、まあ今は六本木ヒルズの「竹やぶ」である。六本木ヒルズといえども千葉県柏出身のこの店には親近感があるなあ、と思ったのだが、入り口からぜんぜん蕎麦屋っぽくないので果して本当にここなのか、と我々はややヒルミ焦ったのであった。
 入り口の店名を指差し確認してなんとか息を殺すようにして入り込み、そっとテーブルを囲んだ。ドロボウネコの集団みたいだ。店の中は静かで西洋風でとても蕎麦屋という雰囲気ではない。
 テーブルに置いてあるメニューがやたら凝っていて、そこに書いてある肉筆文字も凝っており「相田みつを」がやや入っている。
「琴の音がなくてよかったね」
 杉原が囁くように言う。でも笑ったりしてはいけないよ。と低い声で言おうとしたら今泉三太夫がすでに笑っていた。あまりにもインテリアがハイソすぎて三太夫の許容能力を超え、頭がバカになってしまったのだ。
 蕎麦関係で一番安い「せいろそば」一二六○円を注文した。ほかの連中もそれに倣う。だってそれ以上いくとどんどん高くなるのだ。たとえばとろろそばは一五七五円、天せいろは二六二四円である。高知出身の楠瀬は「せいろうどん」一二六○円を注文した。酒も飲める店だからいろいろ肴もあるのだがどうもこっちのほうも焼き味噌は七三五円、わさび漬は六三○円とみんなたいそうなお値段だ。一番安いのが焼のりで五二五円であった。うーむ。何をどう原価計算したらそういう値段になるのだろうか。一同言葉少なになる。義理でやってきたお通夜のようだ。こういう都市新名所のようなところにやってくる人は「いなかもん」がけっこう多く「いなかもん」は一生に一度、などと思っているから高くないと喜ばない、という消費性向がある、という話をニューヨークのアナリストにきいたことがある。
 やがて上品そうな女性が盆にのせた蕎麦とうどんをしずしずと持ってあらわれた。
 上品でタレもおいしく気取ったセイロの上の蕎麦もおいしいような気がしたがなにしろ仏さまにあげるくらいの量しかないので箸を五回上下しただけでもうなくなってしまい確かめようがなかった。
 楠瀬のせいろうどんもいっけん沢山あるように見えたがうつわに板が張ってあってつまりは底上げ方式であった。
 我々は今回のこの一連の取材でうどんの本場高知へ行って一○箇所ぐらいの人気店を取材してきた。どんぶり一杯七五円の、それはそれはうますぎて脳髄が溶けて頭がくらくらするような打ちたて釜揚げの「ひやあつ」なんてのを食ってきた。ではこの店のうどん一杯一二六○円で「ひやあつ」は何杯食えるのだろうか。
「と、いうよりもいまのはセイロの上には大体二○本ぐらいうどんがあったから計算するとうどん一本六三円ですよ。そのうどん一本にあと一二円足すと『ひやあつ』が一杯食えますよ」
 メンバーで一番の大食いの高橋大がのたうつようにしていう。それを聞いてあの賑やかで感動的だった「さぬきうどん黄金街道」を思いだし、一同さらにひっそりとお通夜状態になる。
 次は東急池上線荏原中延駅近くの「多賀野」に行った。ここも男十四人、カップル一組の行列があった。でもピーク時から比べるとこの行列の数はたいへん少ないそうである。その行列のなかにはメタボレベルの人が二人含まれている。一人は【頬/ほお】が首と完全につながっていて腹回りは一・五メートルはあるだろう。この店の常連としたら逆宣伝になるかも知れない。
 この店はラーメン通で有名な小野員裕さんが「東京で一番うまい」と評価しているところです、と杉原が教えてくれた。
 繁盛店らしく厨房に活気がある。店先で入店客の注文をとる若い人のテキパキぶりが素晴らしい。けれどこういう繁盛店にいる客にやや問題があるような気がした。とくにカップルと家族連れというのが問題だ。カウンターにいるカップルの両隣の席があいた。まだ料理が出る前だから二人がちょっと片方にズレてあげれば次の二人連れが座れるのだがカップルにそんな対応神経は微塵もないようだ。カップルの左右の席はあいたまま客はいまだ並んで待っている。状況判断とか隣人との人づきあいの基本といったものが東京の人は希薄のようだ。地方の繁盛店ではそういうことはあまりない。客はどんどん自主的に店に協力しているからだ。家族連れは小さな子供がなかなか食べるのが遅くずっと奥のテーブル席を占領したままだ。幼年にはコクのある味などわからないのだから今の段階ではもっと別な店を選んだほうがいいんじゃないかなあと思うのだがこれもメタボ両親が食いたいからなのだろうなあ。
「中華そば」六○○円。バランスのとれたスープと麺だ。普通に盛られたドンブリ全体が堂々としている印象。厨房は一緒に入ってきたグループの数にあわせて作っているようでその気づかいが嬉しい。カップルは自分らが席をふさいでいることにまったく気づく様子なくずっといちゃいちゃしている。家族連れの子供はもう食べたくない、と泣いている。「食べなさい」と母親が怒っている。
 次は赤坂の「砂場」に行った。何度か来ている有名繁盛店だが店の前に行列はなく中は満員。これが不思議なのだ。ラーメン屋の前には行列を作っていいが蕎麦屋の前は禁止、というキマリがある――わけないよな。蕎麦屋は客に常連が多く、混雑時間のタイミングを知っていて各自コントロールしている。というわけでもないだろう。常連という意味ではラーメンだって同じだ。日本蕎麦のほうができあがるのが早く、すこぶる回転がいいのだろうか。
 繁盛店は愛想がいいか愛想がないかのどちらか――という法則もある。
 この店の従業員は若い女性が多く、コンビニ的無機質対応。「もりそば」五五○円を注文したが作るのが早い、という説は通用するようだ。
「砂場」も量が少ないということで昔から有名だがこれに比べると六本木ヒルズの「竹やぶ」はまったく冗談こきました的に量が少なかった。六本木の料金だと「砂場」では二倍分以上食べられる。そう考えると「砂場」の「もりそば」はけっこう安いのである。
 六本木の「竹やぶ」は量が少ないのを上品と思っているのかもしれない。でも蕎麦はもともと痩せた土地の救済的食物であり、上品とは無関係の食い物である。むしろ要求されるのは「粋」というやつだろう。「粋」に量は関係ないからなあ。
 量ばかり気にするぼくはつくづく野暮な客なのだろうが、ここにはもう一組野暮な客がいた。ぼくの隣の席にいる初老の男と三十代ぐらいの連れの女性はテーブルの上の状態からもうだいぶ前に食べ終わっているらしいのだが、ずっと席を立たず何か熱心に話しこんでいる。会社の上役とその秘書という関係にもとれるが、我々が来てその二人の前の相席の客が二人変わってもまだ話が続いている。繁盛店には迷惑な客だろうなあ。蕎麦屋で話しこむな。下町ではこういうのを「イモ」とよぶ。東京の店は客にもだいぶ問題がありそうである。

神田川のゾンビたち

 西・東京大会は二日に分かれておこなわれた。翌日はまた十一時に集合してやはり大行列店の「べんてん」に行った。「つけめん」が有名だった東池袋の「大勝軒」なきあとその客も吸収したという噂だ。神田川ぞいにきっぱり“熱い”行列があった。若いサラリーマン風が多いがみんな小太り暗め、無言のラーメンゾンビの気配もある。待つこと三十分。食い物屋の行列を異常に思うのは「さもしい」というイメージがあるからだろうか。武士は食わねど――の逆だものなあ。でもこれだけの行列ができるということはやはり「びっくり」するほどうまいからだろうか。
 嫌になるころやっと座れた。店内は席の後ろに何か入ったダンボールがかさなっていて全体に倉庫のように汚い。カウンターだけの席と厨房には二人の男。チーフらしき男に行列のできる繁盛店にありがちな驕りの気配がある。度をこすとえばりまくるタイプだ。「つけめん」を頼んだ。「大盛り」を頼んだ客は却下されていた。量が多いから初心者は無理だという親切心だろうが、その官吏的拒否にやはりこの店を囲むゾンビのような行列がこの店の驕りを作っているとみた。
 やがてびっくりするほど大量のめんが出てきた。つゆはぬるく脂っこくメリハリがない。めんは小麦粉の味が強く炭水化物の固まり、という文字がうかぶ。なんだこれは。こんなところに嬉しそうにゾンビが並ぶからこんなものが崇められるのだろう。
 驚きつつ荻窪にむかった。このコース。むかしよく移動したもんだ。荻窪は東京ラーメンの一時代を作ったところだろう。むかし駅前に立ち食いに近い恰好の店で「丸信」があった。今は四面道のほうの本店だけ。「丸福」はガランとしていた。荻窪はもう進化から止まってしまった、という説もある。
「春木屋」に行った。行列はなかったがほぼ満席。むかしよりいくらか甘くあぶらっこくなった感じがしたがこれは間違いなく懐かしい荻窪の「東京ラーメン」だ。
 つづいて初台の新国立劇場横の立ち食いそば「加賀」へ。このあたりタクシーでよく通るのだが、杉原に教えてもらうまで知らなかった。立ち食い蕎麦界の東京代表であるという。沢山のメニューがあるがタマネギいっぱいのかき揚げを目の前で揚げてくれる。厚さ四センチはありそうなかき揚げをのせた「かき揚げそば」が四○○円。安くてたっぷり。蕎麦なんてこれでいいのだ。本日のこの経過ではとても全部食べられないので、店の貫禄親父に残してしまう非礼を詫びた。かんじのいい親父さんであった。
 ここでインターバル。自宅に帰って今度は夕方浅草の雷門前で再集合ということになった。東京大会はこれができるからいい。

江戸の底力

 今回は同時に懐かしの東京名所巡りの様相にもなってきた。雷門そのものは変わらないが回りの風景が記憶からは随分変わっていた。その日の後半戦はまず「並木 藪蕎麦」から。満員だがここも行列はなく「繁盛蕎麦屋行列なしの法則」にかなっている。
 いかにも筋金入りの老舗、という感じでおばさんの客あしらいもてきぱきとしていて隙がなくこれぞ江戸っ子である。「ざるそば」六五○円を注文。つゆは濃くちょっと蕎麦につけるだけでいい。最後に濃いめの蕎麦湯で素早くしめる。早いうまい安い。こういう店で遅い午後にイタわさぐらいで熱燗の一本も飲んでぱっと蕎麦食って出ていくというのがいいんだろうなあ。
 これで東京の三大蕎麦といわれる神田の「まつや」赤坂の「砂場」そしてこの浅草の店を味わった。東京はやはり蕎麦が強いようだ。
 次はアキハバラへ。ここに来るのも二十年ぶりぐらいだろうか。今は秋葉原とは書かないみたいだな。
 ここにはラーメンの缶詰の自動販売機があるという。アキハバラも久しぶりだ。通りには本当に若いオタク系の男ばかり歩いているので驚いた。気持ちわりー。ラーメンの缶詰というのもやや気持ちわりー。それがアキハバラにだけあるというのも面白い。何人かに聞いて探しあてた自動販売機には三種類あるラーメン缶のすべてが売り切れなのだった。なんかやっぱり気持ちわりー。
 続いて京橋へ突進。旧電通通りに面した銀座インズ3にあるスパゲティスタンドともいうべき流行り店「ジャポネ」に行った。おお! ここもやはり行列である。建物の中であり、カウンターは全部うまっていて、みんな熱心にわしわし食っていて、一人食い終わると行列の先頭の人がそこに座るという仕組み。まあ当然だろうけれど。なんとなく国際空港のイミグレーション、あるいは混んでいるときのみどりの窓口の気分である。
 ならんでいるあいだに行列問題について再び考えていた。ここで初めてラーメン以外の行列に出会ったわけである。しかしこの店はスパゲティといってもその店名があらわしているようにかなり日本特化されていて、ラーメン繁盛店と行列の構造は変わらないような気がする。
 まだこの店は分からないがこの一年半の取材とこの二日間で、行列を作って食った店のすべてがそんなに特別うまいわけではない、ということがわかってきた。さらにラーメン店に並んでいる客にはかなりオタク系の特徴があるということもわかってきた。今回の取材で感じたようにどう考えてもたいしてうまくもない店なのに辛抱強く並んでいる客は、その店の味に取り込まれているか、自主的な価値判断のできない、氾濫するうまいもの情報の中でうろついているだけ、というような簡単な構造もあるようだ。その店の味に刷り込まれている人は並ぶことによって体の内側に精神のドーパミンのようなものが抽出され麻薬に似た陶酔感にひたっている、ということも考えられる。長い行列を耐えた先にその人にとってはささやかながらもかけがえのない、欲求充足の興奮と安らぎがあるからなのかもしれない。行列の人々は個人が多く、あきらかに同好の士である筈なのに彼らの会話がまるでない、というのも不思議ではあった。行列をつくるのは「いなかもん」という図式もあるという。
 東池袋の「大勝軒」が閉店する日、その店のまわりを四○○人の行列ができたというが、その折りにも彼らの会話はなかったのだろうか。
「やめないでくれえええええ」と叫びあう涙の連呼連帯はなかったのだろうか。シュプレヒコールはないのか! ただ静かにだまって「大勝軒」への別れを告げる沈黙の四○○人の行列というのだったらこの国の若者の未来はあまりにも不気味ではないのか。
 エドワール・ホールの『かくれた次元』(みすず書房)の論旨でいえば同一生物の同一行動による安泰、安堵の行動様式も関係しているような気もする。魔境都市に蔓延しがちな共同幻想のセンも考えられる。
「次のかた」と呼ばれてハッとしてカウンターに座った。座ったとたんに「シーナさんですね」と店の人に言われてしまった。明るいところに並ぶからここの行列は目立つ。
 本日それぞれの店をコントロールして食ってきたとはいえもういささか満腹である。ここでは少し食べてあとは残してしまおうと思っていたのだがメンが割れてしまうとどうも残しづらい。醤油味の「ジャポネ」五○○円を頼んだ。それでなくてもここは量が多いので「少なめに」とお願い。隣のカップルの男のほうは大盛りの上をいく「横綱」八○○円という通常の四人前はありそうなのを食っている。杉原情報ではさらにその上に「理事長」というのがあって、これは「横綱」を食べた人でないと注文できないという。本当かよ。ここは相撲協会か。
 ぼくの頼んだ「ジャポネ」は学生アパートのヤケクソ独身スパゲティを彷彿させてなかなかおいしかった。隣のカップルの女のほうはナポリにない「ナポリタン」を食べている。みんな若いサラリーマン風だ。
 新宿三丁目に行って我が常駐居酒屋「池林房」で生ビール。ついでに「ビーフン辛味炒め」を注文し同行のメンバーに食ってもらった。ぼくはときどき食っているから味はよく知っている。七八○円はさっきの「ジャポネ」の大盛り七○○円、横綱八○○円と比べると実に高いんだなあ、ということに気がついた。
 新宿のこのあたりにくるとよく行く煮干し味の「大海ラーメン」を同行メンバーを代表して高橋大に食ってきて貰った。写真が必要だったからだ。東京地区の優勝は難しいだろうがその店は通年一番通っているラーメンかも知れない。いつ行っても空席のほうが多く、従業員の中国系の娘が「いらさませー」と気のない声でそっぽをむいて言う。あまり客がこなくて潰れてしまわないかといつも心配だ。まあとにかく長い道のりをへて漸くわが本拠地に帰ってきた、というところである。
 本拠地といったら新宿駅南口近くの「石の家」のタンメンを忘れてはいけないのだった。二○年前にジャズピアニストの山下洋輔さんに教えてもらってから時々思い出したように食いにいく。
 ぼくが千葉の幕張で初めて「うまい」と思ったタンメンはまだこういう店で命脈をつないでいたのだった。むかし中華料理店であった「石の家」はいまはほぼ居酒屋に変質した。何時いっても酔っぱらいの新宿ガキ女どもがギャーギャーとアヒルのような声で大騒ぎしているから今はあまり長居できず、ぼくはここでは酒類は飲まず憧憬の「タンメン」だけたべて帰る。ひさしぶりのそれはむかし感心したようなうまさはもうなかった。やっぱり年月は居酒屋の「ついでの麺」に身をやつしてしまったのだろうか。
 付記。買えなかったラーメン缶が編集部から送られてきた。缶ビールを一回り小さくした感じで「札幌らーめん缶」(二九○グラム)と書いてある。プラスチックの折り畳み式フォークがついていてその場で食べられる。熱い醤油味と冷し麺。蒟蒻を使った麺スタイル。小さなメンマが四、五キレ入っていた。スープは確かにラーメン。この自動販売機の前にアキハバラのオタク青年たちが沈黙の行列をつくっているのだとしたらやだな。
# by shiina_rensai | 2007-10-25 16:40 | Comments(1763)

第17回 和歌山、鹿児島篇
最後のずるずる巡礼旅

 このシリーズの地方大会は今回が最後である。足かけ二年、全国の主だったうまい麺のある土地を巡り、長いものをススリまくってきたがついに残った主要エリアが和歌山と鹿児島ということになった。
 誰がつけたか「黒潮逆流シリーズ」。別名和歌山鹿児島ずるずる最終章。相変わらずたいして取材日数はない。というより一泊旅程なのでまず関西空港から和歌山界隈を取材してまた関西空港に戻り、その日のうちに鹿児島にワッセワッセと南下していくという慌ただしいことになった。
 メンバーはいつもの顔ぶれだが今泉三太夫は翌日参加。かわりに高橋大がきた。何でもいくらでも食えるーを豪語するだけあって守備範囲が広く攻撃力のある頼れる助っ人だ。
 和歌山は蒸し暑かった。まずは「丸京」へ。和歌山ラーメンは県の北部で共通する豚骨醤油味系をいい、一九九八年にテレビ東京で放映された「日本一うまいラーメン決定戦」でここの「井出商店」のラーメンが優勝した。横浜の「ラーメン博物館」にも期間限定出店し、連日長蛇の列にかこまれて一躍超有名店になった。
 つまり今回、我々の「麺の甲子園」でもここはシード校じゃなかったシード麺に近い強豪というわけである。ぼくは他の取材で和歌山に行ったおりにすでに二回食べておりその実力度合いはよく知っている。
 今回杉原が選んだ和歌山かけあしコースの対象は三店でいずれも濃厚豚骨醤油味であるからそのまま濃厚背脂三連戦の試練ということになる。
 最初の「丸京」はあらかじめ手にしていた資料にある写真と店がまえがまるでちがっていて、一瞬これは間違えたか、と思ったが店舗を建て替えたようであった。白と黒を基調にしたたいへんすっきりしたデザインで、強豪「井出商店」のすっきりしてない店がまえを知っているから興味はつのる。
 我々が本日最初の客のようで、すっかり準備整えました、さあどうぞ! という臨戦態勢が見えてこちらも「さあ食うぞ」とヤル気になる。
 いかにも人気店らしく我々が注文をしおわる頃にはもう何組かの客が入ってきた。中、高年が多い。時間は十一時。
「うぅぅぅぅぅぅぅ――――」(サイレンの音)なのだ。意味わかりますね。しかしときおり思い出したように語られるが、なぜ甲子園は「サイレン」なのだ。あらゆるスポーツでサイレンによって試合がはじまるのは高校野球だけであろう。そのことをみんなであらためて討論しようかと思っているうちに早くも我々の注文したものが出てきた。
 サイレン問題はたちまち放棄されペシペシといっせいにワリバシを割る音だけとなる。全員朝飯ぬきで来ているから宿命の第一試合有利説は今回もゆるがない。
 和歌山ラーメンはとにかく濃厚である。そのなかでも比較的「丸京」はすっきり、というがこれがすっきりなら東京ラーメンなどはすまし汁レベルになってしまう。すなわちその朝、我々の目の前には黄色いストレート麺が脂に光る茶色のスープの中で【蠱惑/こ/わく】的に身をくねらせている。朝はやいけど何してもいいのよ、というやつだ。
 正直に書くと、若い同行四名とはちがってさすがにぼくの場合は朝十一時から豚骨醤油ラーメンは少々きつい。麺の本場中国だって朝は「お粥」にザーサイかピータンだ。中国のお粥は「コメのスープ」という位置にある。ぼくは「麺の甲子園」よりもそろそろ「お粥の甲子園」にしてもらいたい。でもそれだと力入らないかなあ。
 思えばこのシリーズは関西ブロックからはじまった。うさみ亭マツバヤの「おじやうどん」であった。あの頃はぼくもまだ若く、朝だろうが深夜だろうがなんでもこいという気分だった。
 真の仏典のココロを求めて西域からインドを行った玄奘三蔵のように、ぼくもチョハッカイ、サゴジョウ、ソンゴクウを連れて「真のうまい麺」を求めて日本中をジグザグ歩いた。雨の日も風の日も旅を続けた。風雪にむかっておろおろ歩いた日もあった。君たちがいてぼくもいた。そういう巡礼のような旅も幾星霜。あれからすでに二十年は流れる雲を見ただろうか。いやそんなには経っていなかったな。足かけ二年だからまだ一年と少しだった。
 この店の麺はのびればのびるほどおいしい、という説がある。味が麺にしみ込むということだろうか。もっともネット情報は誰か一人の意見だったりするからあまりあてにはならない。

アブラで光る和歌山城

 このあとすぐに第二戦があるのでぼくはドンブリ三分の一でやめておいた。醤油豚骨はラーメンスープのストライクゾーンで、これの配分が上手にできたら絶対うまい、という見本のような味であった。しかも第一試合絶対有利説はここでも有効でぼく以外の「オトモ」の者たちはたちまち唸るようにして全部食べてしまった。これでは麺ののびる暇もない。高橋大などはおかわりがほしい顔をしている。困った奴だ。厨房のほうを見てシッポをふるんじゃない。
「ワン!」
「こら吠えるでない」
 高橋犬の首に紐をつけて次の店にむかった。十五分程度の距離だというので歩いていくことにする。
 次の店は地元のタクシーの運転手が異口同音に「いちばん!」とコーフンして言う「山為食堂」。ここに来るあいだに正午をすぎていたのでもう店の前には行列ができていた。東京のラーメン屋では行列に並びたくないが、こういう土地はどんな人が食べにくるか観察できて面白い。みんな地元の常連というかんじだった。
 待つことしばし。店の中は思いがけないほど暗く、相席多く、テレビのうるさい音もなくフロアをきりもりするお姉さんもテキパキとプロの身のこなしだ。いいではないか。繁盛店の典型だ。
 メニューの品目が多い。しかし価格は四百円、五百円、六百円ゾーンに大きく分けられドンブリものは「きつね丼」「玉子丼」「肉丼」「他人丼」「親子丼」と全部きっぱり六百円だ。
「んなもの作るのも食うのもたいして差はないんやから同じ値段にしとけばええやん」とたぶんこの店の太っ腹の親父が言ったのであろう。いや違うかな、親父さんが「いや玉子丼と親子丼が値段一緒やのはちょっと内容がちゃうから親子丼は六三○円ぐらいにしておいたらええじゃろか」などと言ったのだが太っ腹なのは奥さんで「計算が面倒やからそれでええんや」などと一喝したのかもしれない。以上はあくまでもラーメンがテーブルにくるまでのまったくの我が妄想だからね。
 まわりを見回すと多くの客はラーメンにごはんを頼んでいる。この店のスープは県下で一、二位を争うほど濃厚なのであるという。ひえええ。「覚悟せなあかんで」われらのサゴジョウがいんちき和歌山弁で言う。
 やがてテーブルの上にそれらがやってきた。見ただけで尋常ならざる濃厚ぶりがわかる。焦げ茶色のスープはゲル状になって少しぐらいドンブリを傾けても水位のかたむきがドンブリに追いついていかない。ヨウジを刺したらそのまま直立しているだろう。麺のスープというよりとろみをたっぷりつけた具のないカレー状態にも近い。その上に脂に光る大量のギタギタチャーシューが乗せられている。ワリバシを適当に差し込んで麺をすくうなどという初期基本動作がむずかしい。はっきり「麺をとりだすぞ!」という意志と方針を持ち、箸を突き刺す目標地点を定め、勇気と信念をもって埋没している麺を採掘しなければならない。引き上げられた麺には濃厚スープが複雑にからみついている。他の多くの客が白いドンブリごはんを頼んでいるのはこの麺をおかずにしているからである。作法どおりごはんを頼んだ高橋大が幸せそうに吠えている。
「ワンワン!」
 ぼくはラーメンひとすくいとスープをスプーンで三口ほどでこの店の威力を十分堪能した。客のなかにはおばさんもお姉さんもいるから驚きである。ひと足さきに外に出てオトモの者たちがきっぱり勝負するのを待っていた。まだあとからあとからクルマの客がいっぱいやってくる。
 最後は本命「井出商店」である。
 せっかくだから和歌山城を越えていくことにした。今の濃厚ギタギタラーメンをそっくり全部食った「オトモ」の者は全員顔がアブラでテラテラしている。アブラ顔四人の反射で城壁が明るい。
 このあと夕方まで“試合”はないのでぼくは「井出商店」で全力勝負だ。なぜかやたらに仏壇屋の多い道をすすんで蒸し暑さにいやになる頃ようやく店に着いた。かなり【辺鄙/へん/ぴ】なところにある。行列がないのがよかったが狭い店の中は満員である。
臭いはうまい
 入って驚いたのだが店の臭いが以前より強烈になっている。豚骨そのほかいろいろ試練と挑戦の歴史のなかでつくり出されてきた“濃厚な歴史”が堆積されこびりついた強烈臭だろう。この店に来るのは今回三度目だったがその日が一番強烈だった。二日酔いだったらちょっと入れないだろう。
 この「麺の甲子園」で全国で取材した日本のラーメン屋のなかで一番臭かったかもしれない。臭さとうまさは紙一重なのだろうか。

「臭いはうまい!」

 和歌山ラーメンのもうひとつの特徴はどこもドンブリが小さく量が少なめであることだ。「井出商店」などは小盛りの感覚。またどの店も約束ごとのように「早なれずし」もしくは「あせ巻き寿司」とよばれる押しずしの包みが小さなヨウカンのような包装状態で置かれている。ラーメンを食べながらこれをつまむというのが和歌山ラーメンの定番スタイルらしい。
「井出商店」の従業員のテキパキぶりは迫力と貫禄がある。TVチャンピオンになったということなどを大袈裟に看板や店内の張り紙などに誇示していないのもいい。
 今回は最終取材なので敢えて書くが「テレビでお馴染みの〇〇〇店」などという手書きポスターをベタベタ貼ってある店がけっこう多いのに気がついた。テレビといっても地元ローカル局ぐらいのがきてアホなタレントが大袈裟にさわいでいるような写真が出ていて「お馴染み」は誇大表示でおかしい。
 それにしても「井出商店」のあの強烈な臭いは、店の従業員や慣れている地元の人には至福だろうが、濃厚脂臭に弱い人は接近さえ難しいかも知れない。ご当地麺の強さと弱さのブラックボックスがそこにあるような気がする。
 アブラ人(アラブ人じゃないのね)と化した我々麺の巡礼団は関西空港にむかい、そこから鹿児島空港へ。
 薩摩の国は雨だった。時間があるのでまずホテルにはいって一休み。ぼくは大相撲夏場所をテレビで見ていた。夜はまあビールで体内のアブラを流す必要がある。しかし杉原がここでマッチメークしたのは黒豚シャブシャブに連続する仕上げのラーメンであった。つまり黒豚だしのラーメン。アブラはまだまだ追加されるのである。
 立派な店であった。薩摩は黒牛、黒豚、黒鶏と「トリプル黒」の国である。「臭いもうまい」が「黒いもうまい」というわけなのだろう。おねえさんが上手にしゃぶしゃぶの下ごしらえをしてくれる。豚だしラーメンはなかなかであった。昼の三連戦に較べるとさわやかでさえある。
 店をでるとまだ雨であった。予定は明日になっていたがこのまま鹿児島名物豚骨ラーメンに突入してしまうか、ということになった。濃厚アブラに浸されてしまった我々は今程度のアブラではもう満足できない体になってしまったのだった。もうわたし体ほてってほてって。
 閉店まぎわの「こむらさき」に駆け込んだ。他に客はおらずまさにもうじき店じまい、という様子だったが、すぐにテキパキと作ってくれた。大勢いる従業員の役割が決まっていて動作にゆるぎがない。無駄話いっさいなし。
 この店にもすでに何度か来ている。鹿児島ラーメンは豚骨をベースに鶏ガラや野菜なども使う半濁スープで、和歌山ラーメン的濃厚味とちがって深いというか。どの店も漬物が小皿に箸やすめのように出されるのが面白い。「こむらさき」は甘酢大根の千枚漬けである。こいつをツマミに芋焼酎のお湯割りをくいと軽く一杯やっているうちにカウンターにテキパキと注文のものが並んだ。刻み葱と小ぶりに切ったチャーシューがまんべんなくドンブリの上に展開している。もうこれだけで相当な説得力だ。うまいラーメンは見た目にすでにきれいである。「きれいはうまい」。
 フッハフッハと静かに食べはじめる。みんな黙って食べているのはおいしいからである。「黙るはうまい」。
 夜更けにこんなに濃厚なラーメンを全部食べてしまうのはカラダにはヨクナイのだろうなあ、と思いながらも全部食べてしまう。
スギハラは叫んだ!
 翌日もホテルの朝食は抜き。店が開くのは昼近い時間なので全員寝坊する。この日から今泉三太夫が参加した。彼はつまり鹿児島日帰り、ということになるのである。しかしこれで地方取材最終回にふさわしくチームの全員が揃った。
 本日の第一試合は「くろいわ」である。昨日の強豪「こむらさき」と近接していてがっぷり四つのライバル店というのが目で見てわかる。両店のまんなかへんに味噌ラーメンでブレイクした「和田屋」があり、このトライアングルを食べくらべする強者がけっこういるらしい。まさにラーメン大国日本らしい話だ。
「くろいわ」はドンブリいっぱいに乗せられた大量のもやしが特徴で、このシャキシャキ感もまたすばらしい。和歌山ラーメンほど濃厚ではないので朝からでもじゅうぶんイケル。
 イキオイというものがあるからこのあとすぐに「鷹」という店に行った。鹿児島では珍しく透明なスープであっさり味。麺はいくらか太めでスープによくからみ、杉原は鹿児島ではここが一番! と叫ぶ。
「麺の甲子園」であるから食いつつみんなそれぞれの主張するところを述べ優劣判定をする。いや優劣というのは実際にはなく、単なる個人の好みをほざくだけである。
 杉原が早々にこんなにきっぱり自分の意見を述べるのは珍しい。しかしぼくはまだそこまでは断定できない。
「和田屋」の味噌ラーメンは十種類の味噌をブレンドした特製味噌が売り物だが、基本は豚骨に鶏ガラにカツオブシにシイタケとオーソドックスであった。鹿児島には郊外まで入れると人気のある有名店が三十店以上あるというから札幌ラーメンの群雄割拠と似たようなところがある。

ぐるぐるの意味

 杉原情報によると鹿児島はいま「ソーメン流し」に燃えているという。「流しソーメン」ではなくあくまでも「ソーメン流し」である。川に行ってソーメンを流し、手をあわせてみんなで拝むのである。ああそれは「ショーリョー流し」だった。精霊流しね。おおさぶい。
 この「麺の甲子園」においてソーメンはときおり出場してきた。日本の麺一族のなかでソーメンは全国区である。たいていどの家も夏になるとソーメンを作る。むかしぼくの家も家族というものが構成されていたころ時々「ソーメン大会」をやった。なぜか「大会」とよばれた。具にものすごく凝って二十種類ぐらいつくり、そのバリエーションが楽しかった。いま子供らはみんなアメリカに住んでいて、このあいだ聞いたら「ソーメン」は十年以上食べていないという。アメリカにはソーメンを出す店はめったにない。あっても化学調味料をつかっためちゃくちゃな茹でかたのどうにもハナシにならない絶望ソーメンだという。
 そう考えるとソーメンは「日本人の麺」としてきわめて重要な位置にあるのだ。しかしこの「麺の甲子園」ではこれまでことごとく敗退してきた。ソーメンファンとしてはやるせなかった。ソーメンが勝ちあがれない理由は簡単である。
 ・店が真剣に取り組んでいない。・量が少ない。・上にサクランボが乗っている。
 これではこのすさまじい麺の戦国時代、勝ち上がっていくことはできない(まあ勝ち上がる必要もないんだったけど)。
 しかしその不遇のソーメンがこの取材シリーズの最後に「もしかすると」という期待をこめて堂々この鹿児島の地でエントリーされたのだ。なにしろ「ソーメン流し」の店は鹿児島界隈で二十店はあるというのだからタダゴトではない。
「dancyu」という雑誌に市内の主だった「ソーメン流し」の店の訪問ルポが載っている。指宿の唐船峡という市営のソーメン流し専門食堂みたいなところの写真があり、広大なデッキの全面にたくさんの丸いテーブルと椅子があって大勢の「ソーメン者」がぐるぐる回るソーメンをおいしそうに食っているのである。なんだなんだ何事がおきたのか、と目を見張るくらいの不思議な風景で、実は日本人はこんなにソーメンが好きだったのか、すまなかった、と思わず合掌したくなった。ここには年間二十万人もの人が来るという。しかし、ただソーメンが食べられるというだけではそんな人気を得られる筈はなく、つまりぐるぐる回っているからなのだという。
 ソーメンは回るとうまくなるのか? などと野暮なことは言ってはいけないのだった。鹿児島には伝統的な「青竹ソーメン流し」から「回転式」があり、時代はいまや「桜島型噴流式」であるという。
 市内から三十分ぐらい離れた郊外の「慈眼寺」にあるソーメン流しの店に行った。和田川という清流のそばには露天にテーブルが並びどのテーブルの真ん中にもソーメン流しの装置がある。それが「桜島型噴流式」なのであった。
 仕組みは簡単で、高いところにあげた水を各テーブルの装置に取り込み、そこから水が火山の噴火のように涌きだしてその水流にソーメンを投入するとぐるぐる回るというわけである。水は一回りすると排出されるからいつも新鮮。冷たい水にぐるぐる回るソーメンは見た目も味も冷たくて涼しくて……。
 けっこう沢山の客がいて嬉しそうに食べている。年代別にグループができているようで会社のサラリーマンふうもいる。この場合は上役が上流にいるのであろう。上司の箸からこぼれたソーメンを部下のエライモン順ですくっていく。
 よくわからないのがじいさま二人組である。ぐるぐるソーメンをおぼつかない手つきで箸ですくいその殆どが逃げられる。「このごろまた血圧があがいもしてなあ」「糖尿はもうなおいもはんな」(鹿児島弁に)そんな話し声が聞こえてくる。
 恋人同士はいちど箸でつかんだソーメンをわざと放して「これもみいちゃんにあげるう」なんか言っている。ぐるぐる回るソーメンはうれしそうに見えるけれど仕方なさそうにも見える。「だからなんなんだ」と虚無的に呟いているソーメンもある。追加するとおばさんがザルにいれた茹でてあるのを「あいよ」と言って持ってくる。今泉三太夫に七本ほど流してあげた。
# by shiina_rensai | 2007-10-10 15:36 | Comments(2066)

第16回 沖縄大会後編
「うりずん」とか「ぶちくん」とか

 那覇に着いた。
 いつも思うけれど、このナハという響きが好きですなあ。でも漢字で書こうとすると一瞬戸惑うのはなぜなのだろう。「覇」の字がうまく頭に浮かばないのだね。
 いやこれは作家といいつつあまり文字を知らないぼくだけの問題なのだろう。
 とはいえ沖縄各地の地名は、琉球の頃の名称に強引に漢字をあてはめてしまっている例が多くその違和感がいつもどこかにあるからではないのかな。
 この違和感はアイヌ語に強引に漢字をあてはめている北海道も同じだ。倶知安(くつちやん)とか納沙布(のさつぷ)とかね。でもこれなどわりあいきれいにあてはめてあるほうだ。茶志骨(ちやしこつ)とか計露岳(けろだけ)などワープロの漢字変換失敗みたいな地名がいっぱいある。ときどきあまりにも語感が違っていてどうにも漢字が当てはめられなかったようでそのままの読み方になっているところもあります。ペンケメグンナイとかね。
 強引な役人もこれにはどう当て字していいかわからなくてギブアップしたかんじ。なんとなくザマミロですね。
 いけねえ。いまは那覇に来ているのであった。
 ここにも難しい呼び名のところがいっぱいある。内地の人で「金武」をすぐにキャンと読める人はあまりいないだろう。喜如嘉(きじよか)も難しい。照首山(てるくびやま)はいかにも暑そうだ。慶留間島はゲルマ島と読む。名前の響きがいいので座間味島で知り合った少年たちと「ゲルマ島探検隊」というのを作ってひとまわりしようとしたが集落以外に道がなかった。
 今回の我々の取材の案内役をしてくれる写真家の垂見健吾さんは東京から恩納(おんな)という土地に移住した。島の人から当初「あんたの奥さんはおんなかね」と聞かれてレレレ化したことがあるという。恩納の出身か、と聞いているだけなのだったが。
 で、まあ前回に続いて「麺の甲子園」南島ブロック大会だ。沖縄のほかに石垣島、宮古島、大東島などの先島諸島の大会と二回にわけて報告している。今回は本島大会。
 着いた初日まずは「ぱやお」という沖縄居酒屋に行った。パヤオは漁礁のこと。効率的な漁をするために沖にケーソン(大きなコンクリートなどの建造物)をいくつも入れてそこに魚たちの住処を作ってやる。
 町の居酒屋も、肴や酒を用意して飲み助を集める陸上のパヤオみたいなものだ。
 その店は居酒屋「うりずん」の姉妹店で、「うりずん」とは「早夏」という意味。本格的な夏がやってくる前のちょっと夏めいて暑くなってきた梅雨前の頃のことらしい。
 なんという綺麗なことばなのだろうと感心したものだ。琉球にはそういう人の心にやわらかく入ってくる言葉がいっぱいある。
 梅雨があけて本格的に「カーーーッ!」と暑い激夏がやってきてあまりの暑さにひっくりかえるのを「ぶちくん」という。この言葉もいかにも「ぶちくん!」と言ってひっくり返ってしまうようでおかしくて好きだ。暑くて気がぬけたようにひっそり気だるくなることを「ちるだい」というそうだ。これも心にじんわりつたわってくる南島のいい言葉だなあ、と思う。
「ぱやお」で飲んでいると昨年の夏にぼくの家にホームステイしていた那覇在住の高校生の翔太郎君がやってきた。翔太郎君に「麺の甲子園」の神奈川・静岡・山梨ブロックの取材につきあわせたので、沖縄大会ではうまい沖縄そばの店の案内を頼もうかと思ったが、彼は来年大学受験で、国立の理工系を受けるという。今が大事なときだから顔をあわせるだけにした。本人は一緒にあちこちの沖縄そばを食えないのが残念、という顔をしていた。

のっけから強豪三枚肉と

 翌日の初日第一回戦は糸満にある「淡すい」であった。有名な店で、この店を紹介する本にはたいてい「経営者は三五年かけて沖縄そばの研究をした後、満を持して開店した」と書いてある。うーむ。ずいぶん長い時間をかけて研究したのだなあ。
 有名店らしくないプレハブ造りのそっけない構え。まだ時間は早かったので客の姿はあまりなかったがテキパキした従業員の動き、活気のある厨房などいずれも繁盛店の基本だ。テレビもなく静かに流れるショパンのBGMも厭味がない。
 三枚肉のそばを注文。麺も肉も上等で、のっけから優勝経験豊富な強豪に出会ってしまった気分だ。うーむ。三十五年間の成果を感じるではないか。
 沖縄そばはラーメンと内容が同じ、と前号に書いたが、風合いがラーメンとは全然違っているのはダシにカツオブシという堂々たる「和」とトンコツという「南アジア」が完全合体していることによるのではないかと見ている。
 我々はいつもの杉原、楠瀬、今泉、カメラの佐藤。今回はそれに垂見さんという六人編成。これだけいると評価の意見もいろいろでたいへん参考になる。
 続いて首里に戻り「首里そば」。
 観光地にある有名店だから店構えもそれなりに贅をこらしており客で賑わっていた。
 しゃれた内装の店の横に切り縁のあるちょっとした野外席があって我々はそこに案内された。
 こぢんまりとした中庭の風情などに「うう」とか「ああ」などとあまり意味のない感想というか、感嘆符などを述べているうちに注文した「手打ちそば」が出てきた。
 この店はカツオの一番だしのみを使っていて手打ち麺は七時間がかりでつくっているという。こだわりの沖縄そばで、ずいぶん長いこと沖縄に来ているけれど、こういうハイクラスの沖縄そばをいただくのは初めてである。客の半分以上は観光客のようだ。手打ちは一日約六○~七○食しか出せない。
 日本蕎麦にも老舗の洗練された手打ちというのがある。一人前の量が最初の箸のひとかきでもうあらかた無くなってしまうような、おめえ客をバカにしてんのか! と言いたくなるような店がときおりあるかと思うと、駅の立ち食いのような雑な蕎麦屋があって、これは量がたっぷり。アツアツ、ヒヤヒヤのメリハリもいい。ただし慌ただしく終始立ったままだ。どっちがいいか好みは二分される。
 ぼくは那覇というと長いことアサトの交差点近くの路上に面した二十四時間営業のスタンド店を愛用していた。(もう立ち退きにあって無いけれど)そこは安い早い多い。おまけにおばあのどんぶり指めりこみスープであったがそれがまたよかった。
 したがってこういう高級沖縄そばとの対比がむずかしい。
「どっちもうまい!」
 まあ、大人の感想だ。

百キロ(推定)もやしに圧殺

 二台のクルマに分乗して高速道路に入り、それからずんずんいって終点まで進む。途中道の端に大きな看板があって「グリーンベレー訓練中」「流れ弾注意」などと書いてある。
「流れ弾注意」と言われてもなあ。そっちで高速道路にまで飛んでくるような危険な弾を撃たないようにしろ。下手な奴に訓練させるな。
 海ぞいの一般道をおりるとさらにずんずん一時間くらい行った大宜味村にある「前田食堂」に到着した。ここは何度も来ている店だ。
 道路の横に唐突に一軒だけというかんじでこの店があり、知っている人でないと通り過ぎてしまいそうだ。
 名物は「牛肉そば」。沖縄そばの上にどおーんと炒めた大量のもやしと牛肉が載っており、その量が半端ではない。一皿一皿山盛り。ここに来る客の殆どがこれを注文しているようなのでこの店のもやしの消費量は想像を絶していると思う。いつか厨房の奥のもやし置き場を覗かせてもらいたい。百キロぐらいは軽くあるのではないか。いやもやしは軽いから百キロなわけはないか。アシが早いし。まあそんなことを本気で考えてしまうくらい太っ腹なもやしの量だ。
 出される大量のもやしはヒゲも根もいっさい切っていないので、たぶんざっと洗ってそのまま大きなフライパンでばしばし炒めてしまうのだろう。
 上品で格調の高いさっきの「首里そば」の店から直行したのでその格差に「ガック!」となるが、ガックとなったぶん、挑戦意欲がむくむくとわき上がる。このどんぶりの上にどおーんと載せられたもやしと肉が「どうだ!」と言っているのが聞こえてくる。こういうものを攻めていかなければなにが「麺の甲子園だ!」と一同互いに言い合い鼓舞しながら、わしわし食っていったのだった。
 まさに無骨な田舎の高校生のイブクロがイメージされる熱き存在感。食うほう、食われるほう双方イキオイで勝負、というところであった。
 今回、もし「麺の甲子園」に沖縄代表の麺が出てくるならばその代表麺は何か? ということは我々取材当事者も秘かなる期待を抱いていた。
 高校野球でも毎年沖縄出身のチームには特別な思いをこめた声援がおくられ、ヤマトの強豪チームと沖縄のチームが対戦するときは、いつのまにかマスコミそのものが判官びいきで沖縄に熱いエールを送ったりしているケースが結構ある。この麺の甲子園も、あの感覚に近いものを感じる。
「この前田そばなどは、いかにも沖縄代表っていう雰囲気を感じるなあ」
 誰かがそう言うと全員が頷いた。
「選手層がひろく厚いっていう感じがするよ。でもみんな無骨なんだ。でもって団結の心は熱く身は軽く」
「言っている意味がよくわからないけれどなんか褒めすぎじゃないの。あっ、あんたもやし好きなんでしょ。もやしっていつも団体でかたまっているからもやし好きな人はどうしても団結なんてことばにココロふるわせたりするよな」
「沖縄にはソーミン(そうめん)チャンプルーってあるでしょう。ソーメンは全国各ブロックでけっこう参戦していたけれど結局予選落ちがほとんどだった。なんか基本的に家庭料理っていうイメージがあるからかなあ」
「ところがこの沖縄のソーミンチャンプルーは全県的にポピュラーな存在で日本には沖縄、先島諸島のみというオリジナリティもあるし信奉者層も厚い。これにマーミナー(もやし)チャンプルーをどさっと載せたマーミナー・ソーミンチャンプルーにしたら相当ヤルと思うけどなあ」
「だけど、そういうメニューのある店をあまり見ないんだよなあ」
「実力はあるのに向上心がない」
「向上心って何よ」
「そういうメニューをつくろうという冒険心、イノベーションがないんだ」
「なんかムズカシクきましたね」
「ここに『どえりゃー名古屋モーニング』というムックがあるんだけど、名古屋のあの喫茶店モーニング過激競争の最近情報が満載なんだ。それみると『焼きキシメン』とか『塩ヤキソバ』とか『味噌スパゲッティ』とかヤキソバとヤキウドンとカレーライスがセットになった『病気ライス』なんていうのがある」
「何で『病気』なの?」
「もの凄い量でざっと四人前、こんなの毎日食ってたら確実に病気になるから、ということらしい」
「なんか全体がめちゃくちゃな気がする」
「こういうめちゃくちゃで名古屋は活気が出ているからね」
「つまり沖縄にはそのくらいハメを外すエネルギーが欲しいということだね……」
 ゆうがた那覇の公設市場二階にある「きらく」でそのソーミンチャンプルーとイカ墨スープ。ここには無かったが「イカスミ沖縄そば」があってもいいではないか、というさっきの話の延長になった。
 夜は「うりずん」にてイッパイ飲んだあと近くにある「酒でもそばでもなんでもあるさあ系」の店「栄町ボトルネック」がなかなかうまいという噂を聞いて行った。
 どんぶりに無造作にそばだけ入ったのがどしんどしんと出てきて、続いて熱くわかした汁がヤカンのまま出てくんのよ。あんたら勝手にすきなようにやんな、という態度だ。ソウルの人気激辛冷麺屋にこういうのあったな。辛くて死の危険かんじたら勝手にスープたして蘇生しなさいという救命装置だ。それの沖縄そば版。はじめてだったけどこれがいやはやうまいんだ。具もなにもない「やかん汁ぶっかけそば」だけどこれいいねえ。

かめかめ攻撃

 翌日は一日ぐらいなら、ということで翔太郎君が参加した。第一試合は那覇の天久にある「てぃあんだー」。
 ガラス張りの店は沖縄そばのイメージとやや異なるおしゃれ店。といって沖縄そばがけっして野暮と言っているわけではないですよ。しかしそのためかカップルや家族連れの客が多い。つまりうるさい。ここの麺は仕込みに二日かけているという。太麺と細麺と選べどちらも固く名古屋の「味噌煮込みうどん」を思いだした。しっかり噛んでいると顎が疲れるくらい。スープはなかなか奥が深くて立派なものであった。
 続いて「守礼そば」へ。ファミリーレストランタイプの店で中は大きく、店の奥まったところで三線を弾くきれいなお姉さんがライブでずっと民謡をうたっている。
 ここはメニューが多く、軽く三十種類以上あるという。では全員いろんなものを頼みましょう、ということになった。
 ゴーヤーそば、もずくそば、ミミガーそば、マーボーそば、カレーそば。まあラーメンでも日本の蕎麦でも、上に何かいろいろのせていけばのせたものだけ新しい種類のそばになるというわけなのだけれど。
 さあ残り試合時間が少なくなってきた。いそげいそげといってやってきたのは西町。ちょっとわかりにくいところにある「亀かめそば」。ここは知る人ぞ知る安くてうまい店。人気の製麺所の麺を使い、いまどき三五○円は偉い! 二重になったような入り口を抜けるとモロにアジアっぽい雨よけブルーシートの中庭ゾーンがいい。ラオス人気のフー屋(ビーフン屋)のイメージだ。沖縄の田舎などではオバアなどに「かめ、かめ」とよく言われる。「食べろ、食べろ」ということなのだ。その「かめかめそば」。よくかみかみしましょう。
 中庭に大きく窓を開放した厨房にオバアとネエネエとニイニイがいっときも動きを止めずに忙しくたち働いていて、客に当たり前に見せる笑顔がマニュアルでもサービスでもなくきれいなホンモノでこれがまっこと感じいいんだなあ。まいりました。
 こういうのが沖縄の底力のど真ん中! と見た。軟骨そばにフーチバー(よもぎ)そばがここの二大スターだった。軟骨そばを頼み、別にフーチバーを頼むとザルに山盛り入って出てくる。おおこういう注文の仕方があったのか。名古屋に負けていないぞ。しかもこれ名古屋の「病気ライス」の対極にある「健康そば」っぽいぞ。沖縄、先島諸島ブロック、思いがけず熱戦に次ぐ熱戦。実際わしらもう汗だらだらなのね。勝敗は混沌としてきた。
(次回は和歌山VS鹿児島篇)


名店「亀かめそば」(写真・筆者)
# by shiina_rensai | 2007-08-08 15:45 | Comments(2402)

<椎名誠プロフィール>
1944年東京生まれ。東京写真大学中退。流通業界誌「ストアーズレポート」編集長を経て、現在は作家、「本の雑誌」編集長、映画監督など幅広い分野で活躍。著書は『さらば国分寺書店のオババ』『哀愁の町に霧が降るのだ』『新橋烏森口青春篇』『アド・バード』『武装島田倉庫』『岳物語』『犬の系譜』『黄金時代』『ぱいかじ南海作戦』など多数。紀行エッセイに『波のむこうのかくれ島』『風のかなたのひみつ島』などがある。近作の『全日本食えばわかる図鑑』には第一回≪全日本麺の甲子園大会≫の模様を収録。ブンダンでも随一の麺好き作家として知られ、世界中どこでも「一日一麺」を実践する、敬虔な地麺教信者でヌードリストである。

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