言語を超えた世界 メッセージ

こんにちは。
皆さんは映画「メッセージ」をご覧になりましたか?



社会学者の宮台真司先生も高評価されていて、私は2回観ましたが何かの折にはまた観ようと思っているシンボリックな深い映画です。

映画の内容は映画評サイトさんにお任せするとして、私が「メッセージ」を鑑賞して感動した「言語」と「非言語」の世界観について書いてみようと思います。

中世のガリシア王国当時、言語は「芸術」だとみられていたそうです。
「言語は文明の基盤だ。人々を結び、対立時には最初の武器となる」

映画「メッセージ」では、円盤を縦にしたような12のオブジェクトが宇宙かどこかからやってきて、12の国の空中や地上に留まって静止しています。
それぞれの国が各々のやり方で、そのオブジェクトなる未知との遭遇で交信・交流しようとするわけですが、何せ言葉が通じないわけです。

そこで言語学者のルイーズは「視覚言語」というビジュアルコミュニケーションに期待をしてトライします。

何度か挑戦しているうちに、彼らの「話す音・声」と環のように描く「文字」には関連がないことがわかり、話す通りに書くという人間の言語はあまり意味がないと思われていることに気がつきます。

それが「表意文字」です。
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映画の後半で、ルイーズはついに1対1で「彼ら(実際には1個体のみ)」と直接コミュニケーションをとることに成功します。
そこで彼女が観たものは・・・!
その先はぜひ映画をご自分の目で観てください♪ 
あ、そうそう!私にとってこの映画はSFのカテゴリーではない派です。106.png

古代マヤ文字の世界も同じように「表意文字」や「象形文字」「象表文字」と呼ばれる類のものです。
マヤ考古学者であるデイヴィット・スチュワート博士は、非言語的で象徴的な発想をマヤ語に見つけたのです。

マヤの書記たちは、様々な記号の中から好きなものを組み合わせて文書を書いていたというのです。
単に言葉を記すだけでなく、遊び心があって芸術性に優れたものを生み出している感覚。

絵文字や芸術的センスこそが、マヤの人々の複雑な精神世界や神話の世界観を現わしていたのだということ。

ブログ記事リンク:高度で神秘な文字体系をもつマヤ文字



映画の中で登場するルイーズの可愛い娘。
名前は「ハンナ」

ルイーズはハンナに伝えます。
「ハンナという名前は特別な名前なのよ。Hannahは前から読んでも後ろから読んでも同じようにハンナって読めるのよ」

ルイーズは彼らに出会って「未来と過去はつながっている」ことを知ります。
「時」の流れは止めることはできない。でも時の流れに縛られないで生きることは出来る!

テトラポッドの中でアボットと名付けた地球外生命体は最後にルイーズにこう伝えます。

「Weapon opens time」
武器は 時を開く

この「Weapon」は「武器」ではなく「言語」でした。

芸術人類学研究所所長で思想家の中沢新一先生は、レヴィ=ストロースの影響を大いに受けたと語っておられますが、彼の著書「芸術人類学」でこのように書いています。

「レヴィ=ストロースは自分のつくりあげている『構造人類学』の中心的な主題は、人類の心の中の『無意識』の領域である、と繰り返し語っています。その領域を探求するために、私たちは言語学の視点からの手助けを借りているのだというのです。ところが私の見るところ、『無意識』は言語の構造そのままではありません。言語は、世界についての合理的理解をもたらすために、論理の仕組みにしたがって作動しています。…私はそういう『無意識』の領域で働いている知性の働きを、精神医学者のマッテ・ブランコから借用した言い方で、『対称的思考』とか『対称性論理』とか呼ぼうとしています。対称性の論理にしたがって動いている『無意識』は、言語のモジュールとはちがって、ものごとのカテゴリーを分離するのではなく結びつけてしまおうとしますから、そこでは言語の合理性が一生懸命取り除こうとしている矛盾した思考などというものも、大手をふって通用しています。…そこでは過去も現在も未来も、同じ『場所』に共存することができます。」 芸術人類学

芸術人類学

中沢 新一/みすず書房

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中沢新一先生が「言葉のある『宇宙のすべての形ある物質である色』の世界」と「言葉のない『実体がなく空虚である空』の世界」を瞬時につなぎ、分断しては繋ぐ「即」なのだよねーと深く感動したのです。

記事リンク:ボンズヴェール「森」の年に向かって



言語と非言語は別のものではなく、実は陰陽のように一対になっているのだと思います。

メソアメリカやマヤの神々の多くには「二元論」があって、一人の神が善神であると同時に人間にとって脅威の存在にもなるとか、相対する別の神格をもつ神の姿として表現されたり、コインの裏表のように別個の神の特性が共存して出現したりします。

言語だけでコミュニケーションするには限界があります。
かといって非言語コミュニケーションが普通にできることはあり得ません。無意識的な領域の現れですからね。

とすると、中沢新一先生の言われるように人間の意識を超えたものを見る、想像や常識を超える体験を脳がする、未開社会や原初の世界に踏み込んでみることで見えてくる時間を超越した世界があるのではないかと深く思えるのです。それが「芸術」に繋がっているのだとすれば、私も「YES!」と感じるのです。


メッセージの言語学者ルイーズが映画の中で書いた「ユニバーサル言語」の素になっている世界観、中沢新一先生が描く「対称性人類学」や「芸術人類学」の世界観、そしてユヴァル・ノア・ハラリ氏のベストセラー「サピエンス全史」に描かれている世界観は皆共通しているように感じます。

サピエンス全史 上下合本版 文明の構造と人類の幸福

ユヴァル・ノア・ハラリ/河出書房新社

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言葉は文字でなくて、絵や記号や点や象やトーテムポールだっていいわけよね!
(^^)/

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