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スズキトモユ
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1 2006年 07月 27日
現代社会を、そしてマンガをキーワードで読み解くコミダス。 2つめのキーワードは「非モテ」。 「非モテ」に「ヘタレ」、人生を傍観し続けた者たちの魂の叫びを描く漫画家・花沢健吾さんにいろいろとお話を伺ってきました。 これさえ読めば、非モテについてはもう万全? 花沢健吾インタビューその4(最終回) 非モテは衰退する!? ![]() 花沢健吾: 1974年生まれ。アシスタントを経て、2004年に『ルサンチマン』を発表。バーチャル世界と現実を交錯させながら、非モテ青年の恋愛を描いた本作は話題を呼んだ。2005年、本田透『電波男』の表紙イラストを担当する。同年発表の連載第2作『ボーイズ・オン・ザ・ラン』は非モテ青年・田西が現実世界で抗う話……? ![]() 坂本拓郎(たくろー)、印刷会社勤務、素人童貞。実りのない毎日を鬱々としてすごしていた坂本は、友人・越後のすすめでバーチャルゲーム「アンリアル」を体験する。それは禁断の扉だった……。「本日をもって(現実の)女をあきらめましたっ!!」 たくろーはバーチャル美少女・月子との恋愛にのめりこんでいく。 仮想現実と現実が交錯する、あまりに遅すぎる30代思春期ラブストーリー! 【遅れてきた恋愛】 ――『電波男』の前の『電車男』しかり、十代くらいで経験していてもおかしくない恋愛体験を10年ぐらい上に持ち越してしまってるというのがあります。『ルサンチマン』しかり、『ボーイズ・オン・ザ・ラン』しかり、花沢さんの作品は、そのような状況について描いていると思うのですが。 花沢:ずっと描き続けるかどうかは、自分自身の変化によると思いますが、わりとその、自分自身の十代はどん底、暗ーい人生だったんです。高校時代、共学だったんですが、卒業するまでに女子と喋った時間が合計3分くらい、そんな状況だったので……。 ――クラスでもやっぱり……。 花沢:そうですね、最下層の……いるけど存在しない人間ですね……。そういう人間でいたんで……10年ぐらい時間のズレというのは、ぼく自身がほんとにそういう状態だからです。 ――『ルサンチマン』のアンリアルで学園編もあったんですが、現実パート、印刷所の描写はものすごくリアルだった反面、学園編のリアルじゃないことといったらはなはだしくて……。 花沢:それはもう、なんというか……自分の中から何も出てこなかったですねえ。自分の学園生活があまりにもなさすぎたんで、学園編を描こうと思っても描く事がなくて……。本当にもう、うわべだけのものになっちゃって。現実問題として、何も体験してこなかったんで……。 ――学内恋愛とか、そういうものへの憧れは。 花沢:憧れはあったんですけど、第三者として遠くから見ているだけで、現場で生の体験をしていないから、どうしてもうわべだけのものになってしまう。 ――恋愛に関する夢みたいなものを作品を通して描いている? 花沢:あ、それはもちろん。そうなんですけど……(考えこむ)……うーむ……(考えこむ)……。自分の好みをいうと、きれいな子、世間一般でもてはやされているような女の子がいいかというとそうでもなくて、フィーリングですよね、ふたりっきりで一時間くらいいて、緊張せずに話せるかとか。それをかなりの部分重視してて……。 【三十代の焦り】 ――『ボーイズ・オン・ザ・ラン』の田西ってすごく青臭いですよね。『ルサンチマン』のたくろーの場合は青春回顧というか、バーチャル世界でやり直そうとしています。三十という年齢の区切りで焦りがみえるっていうことを描こうとしているのでしょうか? 花沢:そうですねえ。自分自身、二十代、いや十代からずっと暗黒期を過ごしてきたので……。二十代前半もほとんどアシスタントをやって、ようやくなんというのか、(三十代を迎えて)いろいろ開けてきたというか、自分の考えたものが作品として出せるようになってきて、いろいろと問題はあるにせよ、自信みたいなものが出てきまして、自分の人生の中では明るい時期にいるのかな、青春時代にいるのかな、という気がしてまして……。 ――二十代と三十代だと恋愛に対して使えるパワーが変わってくるというのはあるんでしょうか? 花沢:僕自身は使うべきパワーを使わずに生きてきて、そのパワーも衰えてきてしまってる感じなんですけど……(考えこむ)……自分から積極的にはいかなくて、まず一目ぼれというのがない。まずしばらく話をしてみて、話がしやすいかどうか、会ってしばらくしてそういう感じになるんで、そして自分から押していくこともなく……。 ――それはご自身の作品のキャラに反映されてますか? 花沢:そうですねえ……。『ルサンチマン』に関しては女の人が一方的に来ていたんで、その構図は当てはまるんですが、『ボーイズ・オン・ザ・ラン』の場合は、主人公自身が動いていくという方向になると思うんで……。 ――田西にご自身の恋愛観を投影されてるんですか? 花沢:田西は、恋愛に関しては純情で、ぼくと比較すれば歪みが少ないですよね……。田西にもそれなりに暗い過去はあるはずなんですけど、わりと曲がらずに生きてきたというのがあって……。 ――花沢さんご自身はわりと屈折されている? 花沢:そうですねえ。自分なりに分析してみると、すごく屈折してるといえば屈折しているんですけど、でも単純だったりして、これだという柱が見えてこないんですよね。わりとぼく自身は流されるタイプだと思います。 【非モテは衰退する?】 ――本田透さんの『電波男』で表紙イラストを担当されてますけど、本田さんの提唱する二次元世界への逃避という考えは、花沢さんとしてはいかがですか? 花沢:正直、現実に期待があるわけです、どうしても。そっちが上手くいけば、当然そっちに行きたいわけで、その、なんだろう、本田さんのように現実世界から解脱して、とかそんな領域にはいけない、足りないですね。 今のゲーム技術では単純にまだそこにはいけないな、というのもありまして、現在のギャルゲーの場合、文章が並んでいて、それを選択していくという形式のものなんで、結局作った誰かの顔が浮かんでしまうんですね。そこにのめりこんでいくっていう勇気はそんなになくて……。 ――「非モテ」への注目については。 花沢:残念ながら「非モテ」というのは一時的なブームでしかない。モテない人はやっぱりモテないんで。一時的に脚光は浴びてるけど、いずれは元の場所に戻ります。 ――「非モテ」は衰退する? 花沢:衰退、じゃなくて、そのまま残るだけで。衰退するのはブームです。一瞬だけスポットライトが当たっただけですから、ブーム自体は今年にでも終わってしまうんじゃないでしょうか。まあ、わからないですけど(笑)モテない人はモテないだけの資質を持ってるわけですからね。そこから偶然脱出できる人もほんのわずかいるのかもしれませんけど。 ――「非モテ」は必ず一定の割合いるわけで、彼らに共感される物語を描けば需要があるのでは? 花沢:『ルサンチマン』描いてた時もそこらへんについては考えていたんですね。それで秋葉原とかにも重点的に置いてもらったりして反応を見たんですが、ダメなんですよ。やはりモテない人間が出てくる漫画は読みたくないみたいで。 ――本当にモテない人はリアルでなくファンタジーを好む。非モテの物語ではなく、モテ・ファンタジーを……。 花沢:これは想像でしかないんですけど、やっぱりモテない人はモテない漫画は読みたくないんでしょうねえ……(しみじみ)……鏡を見てる感じになるんでしょうかねえ……。 【非モテにも光明が!?】 ――現在連載中の『ボーイズ・オン・ザ・ラン』、だいたいどんな人が読者なんでしょうか。 花沢:『ルサンチマン』と比べたら『ボーイズ・オン・ザ・ラン』のほうが幅は広いと思っていて、そう想定して描いてはいるんですが。非モテと呼ばれる人たちとモテる人々との中間に位置しているような人たちではないかと……。 ――反応はいかがですか? 花沢:田西が落ちこめば読者も落ちこむし、田西が怒れば読者も怒る。シンクロしている感じです。田西に感情移入している人がほとんどでしょうか。 これまでの人生がよっぽどうまくいきすぎているやつ以外は、なんらかの自分はダメだなあという部分とか、これって田西じゃないか、と思えるような状況をみんないちどは経験あるだろうと思うんですよね。現時点での田西の状況は、まだちょっと闇の中という感じなんですけど、いずれは爽快感を味わえると思うんで。 ――いずれ光明が見えるわけですか? 花沢:自分の中でもそういう方向で行きたいんで。最終段階でどうなっているかはわからないんですけど、なるべく光の当たる場所に立てるように、『ボーイズ・オン・ザ・ラン』というタイトルどおり走っていければ、その様子を読者の方に見ていただけたら、と、そう思います。 花沢健吾インタビューも今回で最終回。次回、第5回は「非モテ」総括と題して、非モテをテーマにしたあんな作品やこんな作品をとりあげてみます。お楽しみに! ▲
by tomoyu_suzuki
| 2006-07-27 11:24
| 非モテ
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2006年 07月 13日
現代社会を、そしてマンガをキーワードで読み解くコミダス。 2つめのキーワードは「非モテ」。 「非モテ」に「ヘタレ」、人生を傍観し続けた者たちの魂の叫びを描く漫画家・花沢健吾さんにいろいろとお話を伺ってきました。 これさえ読めば、非モテについてはもう万全? 花沢健吾インタビューその2 非モテはバーチャルを夢見る『ルサンチマン』 インタビューその1はこちら ![]() 花沢健吾: 1974年生まれ。アシスタントを経て、2004年に『ルサンチマン』を発表。バーチャル世界と現実を交錯させながら、非モテ青年の恋愛を描いた本作は話題を呼んだ。2005年、本田透『電波男』の表紙イラストを担当する。同年発表の連載第2作『ボーイズ・オン・ザ・ラン』は非モテ青年・田西が現実世界で抗う話……? ![]() 坂本拓郎(たくろー)、印刷会社勤務、素人童貞。実りのない毎日を鬱々としてすごしていた坂本は、友人・越後のすすめでバーチャルゲーム「アンリアル」を体験する。それは禁断の扉だった……。「本日をもって(現実の)女をあきらめましたっ!!」 たくろーはバーチャル美少女・月子との恋愛にのめりこんでいく。 仮想現実と現実が交錯する、あまりに遅すぎる30代思春期ラブストーリー! 【現実と仮想現実(アンリアル)のギャップ】 ――前作『ルサンチマン』の連載が始まったとき、花沢さんご自身はおいくつでしたか? 花沢:二十九歳でした。二十九でようやく連載デビューというのは、遅咲きのほうだと思うんですよね。焦りを感じていて、正直三十までに芽が出なかったら何か考えなきゃな、と追い詰められていたところがありました。現実逃避したいという気持ちがあって、『ルサンチマン』はそういうところから出てきた発想なんじゃないかと思います。 ――たくろーはかなり自己投影されたキャラですか? 花沢:中身に関してはかなりそうかなという気がしますけど、完全に自分というわけではありません。(『ルサンチマン』の)設定を考えるとき、オンラインゲームを題材にした漫画なりアニメなりを何点か参考にしたんですが、登場人物が、仮想現実のキャラもカッコよければ、現実のキャラもカッコいい。(外見が)たいして変わらなかったんですね。そこに何の意味があるんだろう? と、反発があったんです。そのギャップを生かすため、たくろーというキャラを用意しました。 仮想現実(アンリアル)で馬を駆るたくろーとラインハルト(越後)。 ![]() 現実ではこうなっている。 ![]() ――仮想現実と現実のギャップが大きくなければ、作品として意味がない? 花沢:そうですね。意味がなかったと思います。それに関してはたぶん、正しいとは思ったんですけどね。ただ、やっぱり……(『ルサンチマン』を読み返しながら)ひどすぎた……。 ――実際にネットゲームなどやられた経験は? 花沢:ネットゲームはほとんどしません。はまり込むまで時間がかかるので飽きてしまうのだと思います。2ちゃんねるは毎日見ていますが、最近は怖くて自分のスレッドについては見られません。100褒められても1けなされるだけで、しばらく凹んでしまうんです。ダイレクトに遠慮の無い意見が聞ける場所はほかにないので重宝してもいるんですが……。 ――将来的にアンリアル*のようなシステムが実現したとして、その中での恋愛はアリだと思われますか? 花沢:逃げ道のひとつとしてはあってもいいんじゃないでしょうか。僕自身、こういうのがあったら確実に逃げるだろうなと思ってアイデアを考えていたんで。だから……、まあ、本当にそうですね、今後こういうのができたらやってみたいと思うでしょうね。 ――アンリアルというバーチャル世界が完全に悪だとは描かれていないけれど、だからといってそこに逃げ込む事が完全に幸せというわけでもないわけで……。 花沢:自分の中には勧善懲悪という発想はないんです。たとえば一般に悪だと見なされている人も目線を変えればちがうものが見えてくるし、一概に決めつける事はできない。そんな感覚が無意識に出てしまうのだと思います。だから『ルサンチマン』の中には絶対悪と呼べる存在は出てこないんです。 * 『ルサンチマン』の世界で大人気の仮想現実ネットゲーム。大ハマリの挙句、多額の借金をし自己破産に陥るケースや、現実に帰れなくなりそのまま餓死に至るなど、社会問題化している。 【月子と長尾】 左:月子 たくろーが購入したバーチャル彼女。伝説のソフトウェア「ムーン」との噂も……。右:長尾 ウオト印刷営業にして、たくろーの同期。姉御肌だが、じつはツンデレ。 ![]() ――『ルサンチマン』を連載されていた頃は月子が理想のキャラだったんでしょうか? 花沢:そうですね。わりとかなり、当時の自分の理想像だったですね……。バーチャルの典型キャラがちょっとおかしな方向にいっている、いうか……。 ――月子って、女性視点から見ると現実味がない…… 花沢:たぶんそうで、女性から見るとムカつくキャラなんじゃないかと思います。男性というか、僕の中での理想像みたいものを最初は考えていたんです。従順で、みたいのを。 長尾については、こういう女性が現実にいたらいいだろな、っていうのを考えて、どちらがいいか、好きかっていうのは一概にはいえないんですけど。現在の状況では長尾さん的キャラに傾きつつある……ずっとロリコンだったんですけど、やっと卒業できたというか……。 ――現実世界の存在、長尾ですが、どうしてこのようなキャラにしようと思ったんですか? 花沢:当時の担当編集の方と打ち合わせしているうち、現実の世界にも女性を出したほうがいいよね、という話になって、描くんだったらヒロインと対抗できるキャラがいいよね、と。わりと二種類、好きなタイプがいて、本当にばりばりロリコンチックな、ショートカットな、無垢な感じの女の子と、そういう大人っぽい女性と、そのころはどっちも好きで、そのふたりをちょっとこう、出して……(考え込む)。 ――バーチャル世界の月子というキャラに対して、長尾がきちんと張り合うところも面白いですね。バーチャル世界のキャラだといって、現実にいる自分の存在よりも下に見ない。 花沢:長尾はそういった意味ではいちばん現実も仮想現実もなく、バーチャルの住人と接することができたと思うんですよね。 ――女性キャラを描くにあたって、何か気をつけていることはありますか? 花沢:なるべく女性の心理描写は描かないようにしてるんですね。やっぱりわからないんで。行動だけをみせるような感じにして、内面は正直、自分が描けば描くほどたぶん嘘っぽくなってしまうので、そこはちょっと、まあ今もそうなんですけど、注意してやってる感じですね。 【究極キャラ・越後】 ラインハルト・ウォルフガング・シュナウファー: 「アンリアル」における越後。この世界では一目おかれた存在。現在は5人の女性とともに隠遁生活を送っている。 ![]() 越後大作: たくろーの高校時代の友人。無職、真性童貞。この世は悪夢で、早く目が覚めないかなあと思っている。じつはいいやつ。 ![]() ――越後というキャラは結構人気があったんじゃないかと思うのですが。 花沢:そうですね。僕的にはかなり最高のサブキャラクタでした。モデルにした人間がとくにいるわけじゃなくて、なんというか、その……自分の中で勝手に妄想している、現実にこんなヤツがいたらヤダな、っていうそういうキャラです(笑) ――作品の中でいちばん一貫しているのは越後ですね。 花沢:うーん……確かに、これだけ貫き通している人間ですし、こいつが現実で普通に、普通の顔を持ってたら本当にモテたんじゃないか。だから、外見で判断する女性憎し、みたいな(笑)そういう暗い思いも越後には込められているんですよね。 越後の最期に関しては、不幸なのか、幸福なのかわからないですけど、どちらにしても破滅の方向にいかざるを得ないだろう、いわば越後にとっては最高の晴れ舞台だったわけで、『ルサンチマン』の中でいちばんカッコいいのは越後だったと思っています。 ――主人公のたくろーについては揺れまくりブレまくりのキャラで、月子ひとすじかと思えば、あっさり長尾に流れたりとか。 花沢:(嘆息)……なんか、こう、ダメなんだよね……。 【物語ラストの意味】 ![]() ――『ルサンチマン』4巻の表紙の意味なんですが、現実世界で生まれた月子がたくろーの弁当屋で働いているというのはどういうことなんでしょうか。 花沢:それはもう本当に、そのままでとってもらってかまわないです。 ――彼女は、自分がどんな存在だかわからないままにかかわるんでしょうか。 花沢:かなりハッピーエンドで考えてしまったんですけど、詳しくはご想像にお任せしますという感じで。自分としては最終的には、くっつくのかなあ、と思ってたんですけど、それはちょっと出来すぎかな。 長尾が月子の生まれ変わりをたくろーのお弁当屋さんに連れて行ったのも、とりあえず、約束を果たそうということであったかな、と思います。 ――最後に、デビュー作である『ルサンチマン』をいま振り返ってみて、いかがですか? 花沢:そうですねえ……まあ……完全とはいえないですけど、当時の自分についてはある程度出せていると思うんですけど、まあ、いろいろとまた……技術的な問題もあるし……いろいろな問題もあって……まだちょっと自分でも冷静に読めないというか、振り返っては読めないところがあります。 次回、インタビュー第3回は、花沢健吾さんが漫画家としてデビューするまでの軌跡にスポットを当てていろいろお話を伺います。お楽しみに! ▲
by tomoyu_suzuki
| 2006-07-13 10:13
| 非モテ
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2006年 07月 06日
現代社会を、そしてマンガをキーワードで読み解くコミダス。 2つめのキーワードは「非モテ」。 「非モテ」に「ヘタレ」、人生を傍観し続けた者たちの魂の叫びを描く漫画家・花沢健吾さんにいろいろとお話を伺ってきました。 これさえ読めば、非モテについてはもう万全? 花沢健吾インタビューその1 非モテよ立ち上がれ!『ボーイズ・オン・ザ・ラン』 ![]() 花沢健吾: 1974年生まれ。アシスタントを経て、2004年に『ルサンチマン』を発表。バーチャル世界と現実を交錯させながら、非モテ青年の恋愛を描いた本作は話題を呼んだ。2005年、本田透『電波男』の表紙イラストを担当する。同年発表の連載第2作『ボーイズ・オン・ザ・ラン』は非モテ青年・田西が現実世界で抗う話……? ![]() 弱小ガチャガチャメーカーの営業マン・田西は一世一代の恋愛チャンスを迎えていた。27歳の誕生日、憧れの後輩・植村ちはるとはじめて話せたのだ。メール交換も始まって、ふたりの仲は進展していくはずだった……のだが? 立ち上がれ! 拳を振り上げろ! 空回るダメ男・田西の遅咲き青春ストーリー。 【第1話は実体験?】 ――いきなりですが、この第1話、ヒドいですよね……。 花沢:ああ、でも現実にいたんですよね……(暗い表情)。これはほとんど、8割くらい実話なんですわ。実際もっとヒドい話なんですけど、本当に引く話なんで……。実際にこういう女性がいたのは確かなんですね。 27歳の誕生日、テレクラの待ち合わせにやってきたのは……。 ![]() 田西、満面の微妙な笑顔。 ![]() ――花沢さんの場合は田西と比べて、どのような……? 花沢:ええと、この女性にではないんですが、眼鏡を割られるのは確かなんですよ。眼鏡を割られて、ちょっと軽く、美人局ティックな……。恐喝、ですね。 ――なんか出てきちゃった、みたいな。 花沢:出てきはしなかったんですけど、脅しですね。いるよ、って言われて、下にいるからね、って言われて、ちょっとお金出して、みたいな。呼ぶようなことを言われて、ちょっと……。まあ、そんなことがあって……。それが去年の春ごろ、ネームを切る前段階で。いやあ、怖いなあ、と思いましたね……。恐ろしいなあ……と思って……。 ――場所は、新宿? 花沢:池袋です。まんまです。走ったルートから何から……。 ――その体験がきっかけになって『ボーイズ・オン・ザ・ラン』が生み出された? 花沢:物語の骨格みたいなものはあったんですが、導入部のネタをどうしよう、と考えてたところでした。……せっかくそういう体験したんで、これはぜひ入れていこうと。 【真のヒロインはちはるじゃなかった!】 ――最新の3巻ですが、まさに激動の展開で、田西とちはるはこの先どうなってしまうんだ? とビックリしたんですが。 花沢:えーと……、実はちはるはヒロインではないんです。これはもうちょっと早い段階でハッキリさせる予定だったんですが。物語の真のヒロインというべきキャラは、第1話のラストに登場した格闘少女なんです。 第1話ラストに登場する格闘少女。彼女を追っ手と勘違いして襲いかかる田西を反射的にノックアウトさせる。 ![]() 田西の後輩社員・植村ちはる。当初は田西と彼女の不器用な恋愛話になるのかと思われたが……。 ![]() ――えっ、そうなんですか! ほとんどの読者が田西とちはるの不器用な恋愛話だと思ってるのでは。たしかに、ヒロインにしてはちはるの扱いはヒドすぎると思ってましたが……。 花沢:なんでだろう。なんでだろうなあ……。可愛さ余って憎さ百倍というか、最近この手のタイプの女性がすごく嫌いなんですよ。以前はすごく好きだったんですけど……。それでですねえ、そういう女をやっつけたいと。 ――やっつけたい? 花沢:苛めたい。できればもうちょっと追い込んでいきたいなとは思うんですが……。まだまだ甘いな、と。 ――ちはるをこういうキャラにすることは連載前の時点で決めていたんでしょうか? 花沢:嫌なキャラというか……。勘違いさせる女性がいたんですね。それはまあ、自分の、本当、単純な勘違いなんで、その女性にはまったく罪はないんですけど、それでも、なんか……なんだろうなあ、まあ……悔しいというか……。 ――無自覚に周囲をかき回す、みたいな? 花沢:まあその、八方美人というか。誰にでも好感を持たれるような、人が……いまして……(無言)……(無言)……。 ――ちはるって女の子はそれまでに男性経験がなくて、恋愛の経験値でいえば低いわけですよね。 花沢:それがねえ……なんでしょう、だから……どういうのが経験値が高いっていうかわからないんですけど、なんだかなあ、無自覚なんですけど、うーん……、男を自在に振り回せるというか……。 ――ここまで激動の展開になるとは予想できる人はいなかったと思うのですが……。 花沢:(小声で)いやあ、実はですねえ……。これぐらいまでの話が1巻まで、の予定だったんですけど、まだまだページの読みが甘いっちゅうか……。甘さがあるというか……。ずるずるといってしまって……。 【やっつけたいのは女?】 ――(初登場の青山を見て)あ、なんだか、いいやつっぽいですね。 花沢:青山は基本的には悪いやつじゃないと思ってますね。男友達としてならそうとう面白いやつなんじゃないかと。ただ、女性に対してはドライに、冷酷に、とかそんな接し方しかできない。そういう男はいるんじゃないでしょうか。 ――青山って、わかりやすく敵役、悪役だと思うんですが。 花沢:たしかに悪役というポジションにいるキャラではありますが、物語全体を通してみて、たとえば田西の生涯のライバルになるとか、そんな感じではないと思っています。 わりと俺的には、敵は女であるというか。なんだろう、なんていうかな……、都合がいい女性をやっつけたいというものすごい暗ーいものがまず根底にあったんですね。 ――女性に対する不信が根底にあるんですか? 花沢:これもまた表裏一体で……、どこかこう、信用できないんじゃなくて、理不尽なものを感じることがあるんですよね。なんだろな……女性……専用車両とかね。最近、北海道で女性専用スパゲッティ店ができたって話があって*、男性は何時から何時まで入店できません、って……。なんかねえ、そういうのを、すごく……。 ――理由がわからない。女性専用車両ならば、痴漢防止かな、と思うんですけれども。スパゲッティを食べる男を見るのが不快なんでしょうか。 花沢:そういうこととしか思えないですよね。ものすごく理不尽なものを感じてしまって……。 ――『ボーイズ・オン・ザ・ラン』が闘う対象は女性なんでしょうか? 花沢:(考えこむ)なんだろうなあ……。あからさまにそうなっていくかはまだわからないですけど、せっかくなので女性批判はしていきたいと思っています。自分の中にいろいろな憎しみとか、暴力衝動とか、そういうものが、あるんですよね。そういうのをまず描いていこう、その対象になるものは何かと考えると、いろいろとあるんですけど、身近に何があるかと考えると、そういう不条理だったり理不尽だったりするんですよね。 * JR函館駅にオープンした女性専用パスタ店「ブォン・ヴィアッジョ」のこと。午前11時~午後8時までの営業時間のうち、午後4時までは女性専用。午後4時以降は女性同伴の場合に限り男性も入れる。(→参考URL) 【『ルサンチマン』と『ボーイズ・オン・ザ・ラン』】 ――前作『ルサンチマン』はカルト要素の強い作品だと感じましたが、この『ボーイズ・オン・ザ・ラン』はメジャーに向けてという意識はあったんでしょうか? 花沢:多少それは……ありましたね。画に関してもそうですし、『ルサンチマン』についてはブサイクキャラでいって、それが読者には引かれてしまったし…… ――もう尻は描かないようにしようとか。あ、描いてるか。 花沢:いや、やっぱりそういうの好きなんで(笑)なかなかキレイには描けないんですけど。一般の商業誌で連載するからには単純に自己満足だけではダメなんだというのは、『ルサンチマン』の連載終了後に自分でも考えて、読者をまず満足させることを優先しつつ、その中でさらに自分でも納得ができるもの、両方を求めていかないとダメなんだろうな、と思いました。 ――物語の最終地点は見えているのでしょうか? 花沢:前作『ルサンチマン』については描く前からはっきりとラストを決めていたんですが、この作品については、自分でも正直まだはっきりとは決まっていません。 『ボーイズ・オン・ザ・ラン』は成長物語で、僕自身が成長していければ、それなりにストーリーも変わっていくはず……、なんですが、正直、1年後にどうなってるのか、自分がどうなってるのかわからないし、漫画のほうもどうなっているのかわからない(笑)かなりもう、漠然としています。 ――二十代を漠然とすごしてきてしまった人間が、バーチャル世界で失われてきたものを取り戻そうとする物語が『ルサンチマン』で、現実世界で抗う物語が『ボーイズ・オン・ザ・ラン』なのかな、とぼくは感じました。 花沢:『ルサンチマン』の場合、きわめて短絡的なアンリアルという逃げ道が用意されていて、そこでどうなるかって話なんですけど、『ボーイズ・オンザ・ラン』については現実の中でしか存在できない、要は逃げ場がない状態ですね。自分が変わらざるを得ない、逃げ道はもうないんで、そういうことを考えたんですね。 ――受身のまま終わってるのが『ルサンチマン』で、そこから先に行くのが『ボーイズ・オン・ザ・ラン』。 花沢:そうですね。自分自身で変化していくって方向ですね。そこではっきりと違いを出したいな、と。田西は空回りキャラなんですが、いつかは空回りじゃなく、きちんと回り始めればいいな、そう思ってます。 次回、花沢健吾インタビューその2は、花沢健吾の名を世に知らしめた前作『ルサンチマン』について、いろいろお訊きしてみます。お楽しみに! ▲
by tomoyu_suzuki
| 2006-07-06 10:13
| 非モテ
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