Maxとのレコーディング(汗)
誰かが「いつまで音決めやってんだよ?」と言った。
「音決め」とはレコーディング始める前の大事な作業で、要するに各楽器を録音する為のマイクの選定から始まって、マイクを立てる位置、レコーダーに入れる音質などを決める作業だ。
それまでのLOUDNESSレコーディングの「音決め」、遅くとも半日で終わる作業なのだけれど、マックスはその作業が数日かかっていた。
あらゆるマイクやプリアンプ、コンプレッサーを試しているようだった。
「俺たちは世界に出すアルバムを作っているんだ!」エンジニアのビルは呟いた。
音のこだわりは半端ではなかった。
録音作業は楽曲のサイズやテンポを決めて、リズムセクションから仕上げていく。
LOUDNESSの場合リズムセクションレコーディングでドラム以外がOKテイクになることはまず無かった。
ベースはもとよりギターもドラムテイクOKの後で差し替えるの通常だった。
リズムセクション録音時に弾いたギターソロがそのままOKテイクとなることがあったけれど、それはごく稀なことだった。
ヘビーメタルと言うジャンルは一つの楽器ごとに構築していくので、こういう録音の段取りを踏むバンドが多い。
逆に、ソウルやブルース、ジャズ、ヴォーカル物等のレコーディングは、すべての楽器を一斉に同時録音することが多い。
その方が音楽のグルーブが出ると言うのと、録音が早く済んで予算が抑えられると言うことがあるのかもしれない。
いずれにせよ、マックスは音決めでも神経を使い、各パートの録音にも細心の注意を払った。
あらゆるヴァージョン、あらゆるテイクを試すのだ。
マックスの辞書には「妥協」と言う文字が無いようにさえ思えた。

僕はバッキング・リズムレコーディングの間全くやることが無かった。
日本のメタルバンドの曲作りの手順として、まずはバッキングを作り、その音楽にメロディー(ハナモゲラを使って)を考えて、そしてそのメロディーを元に歌詞を考える場合が多い。
アメリカでレコーディングをして始めて知ったのだけれど、英語圏のバンドの多くは歌詞とメロディーを同時に作ることが多いようだ。
歌メロディーと言うか、ヴォーカルアレンジと言うか・・・
そもそも、このハナモゲラと言うのは日本人独自の発想のものかもしれない。
逆に考えても、日本人が日本語もどきのナンセンスな文(音?)を使って曲を作ることが無いのと同じだ。
実は、僕がハナモゲラで歌ったデモテープを一緒に仕事をしたアメリカのシンガー達は日本語の歌だと思っていたのだ!(笑)
「これ格好いいじゃない!ところどころ英語みたいに聞こえるし、これはもう英語にしないでこのまま歌えば?」と言われた。
その時、「いや・・・これはハナモゲラと言って、意味の無い歌詞を歌っていて・・・要するにスキャットみたいなもので・・・」と一生懸命説明するのだけれど理解してもらえなかった。
マックスはヴォーカルパートはバッキングパートが出来たらゼロから考えようとしていた。
僕はリズムセクションレコーディングの最初2~3日はスタジオで見学していたのだけれど、すぐに飽きてしまってホテルで待機することが多くなった。
今から思えば、レコーディングの一部始終を見学しておけば良かったと若干の後悔をしている。
ひぐっつあんは腕が上がらなくなるほどにドラムを叩いた。
マー君もたっかんも相当に厳しいレコーディングを経験したようだった。
ギターのバッキングが殆ど終わったところで、やっとマックスからスタジオに呼ばれた。
「ミック(僕はミックと呼ばれていた)歌詞のアイデアをもう一度見せてくれ、それと、一度音楽と一緒に何かアイデアを歌ってみてくれ」
(ぎぇ!!何か歌えと言っても・・・何も無いのですが・・・・)
取りあえずマイクの前に立って適当に歌ってみた。
数フレーズ歌ったところでマックスが言った
「OKミック・・・分かった・・・」
マックスは「どうすれば良いのか?」と言う表情で少し考え込んでいた。
マックスは日本から持ってきたデモテープを聞き、日本語詞を直訳したノートを眺めて決断をした。
マックスは心当たりのある地元のシンガーや作詞家に電話をして協力を要請。
その日の夜には数人のシンガー達がスタジオに来た。
みんな地元に住むプロのシンガー達だったけれど、僕には誰が誰だか知らない人達だった。
今でも頑張って思い出すのだが、全く思い出せないのだ・・
今から思えば、びっくりするような超有名なシンガーが来ていたかもしれない。
いや・・・多分・・・来ていたような気がする・・・・。
彼等は僕と挨拶も程々に、マックスと話し込んでデモテープと、日本語を訳したノートのコピーを持って帰った。
2~3日すると再び彼等が完成させた歌詞を持ってスタジオに来てくれた。
マックスは少し心配そうに「どうだ?この英語は難しいか?これを一度歌ってみるか?」と聞いてきた。
僕は歌詞を眺めながら興奮した!
と同時に、ひどく落胆した・・・・
何故なら、どう歌って良いのかまったく分からなかったからだ。
歌詞を読むことは出来ても、これを歌うとなると歌詞の譜割りやタイミングが皆目見当もつかなかった。
僕が歌詞を見ながら戸惑っていると、マックスが「ミック、これでは分からないよな!」と言って再びスタジオが凍りついた・・・・。
みんなこの事態にどう対処して良いのか・・・・お手上げ状態だった。
英語圏以外の歌手、英語が大の不得意な日本人ロック歌手による英語のヴォーカル録音・・・
ましてやヘビーメタルのヴォーカルパートなんて前代未聞だったから致し方あるまい。
「ちょっとミックの練習用に歌ってくれないか?」とマックスが歌詞を持ってきたシンガーに提案した。
「勿論だとも!!」幸いなことにシンガー達は気軽に快く引き受けてくれた。
シンガーの一人が言った「考えても見ろよ、俺が日本語で歌えと言われて出来ると思うか?これは偉大なるチャレンジだよ!!Kick Ass man! mick!(頑張れよミック!)」
彼等は一様に僕にとても同情的だった。
「ちょっとこのキーは高いな・・・」とか言いながら、シンガー達はガイドヴォーカルを録音して帰った。
オクターブ下で歌う人、ただリズムに合わせて歌詞を読むだけの人、色々いたけれど僕にはとても助けになった。
そのテープをホテルに持って帰って、部屋で何時間も練習した。
(LOUDNESS以外の人がこんなに力になってくれているんや・・・頑張らあかんな!)
僕はしばらく寝付けない長い夜を過ごした。
「音決め」とはレコーディング始める前の大事な作業で、要するに各楽器を録音する為のマイクの選定から始まって、マイクを立てる位置、レコーダーに入れる音質などを決める作業だ。
それまでのLOUDNESSレコーディングの「音決め」、遅くとも半日で終わる作業なのだけれど、マックスはその作業が数日かかっていた。
あらゆるマイクやプリアンプ、コンプレッサーを試しているようだった。
「俺たちは世界に出すアルバムを作っているんだ!」エンジニアのビルは呟いた。
音のこだわりは半端ではなかった。
録音作業は楽曲のサイズやテンポを決めて、リズムセクションから仕上げていく。
LOUDNESSの場合リズムセクションレコーディングでドラム以外がOKテイクになることはまず無かった。
ベースはもとよりギターもドラムテイクOKの後で差し替えるの通常だった。
リズムセクション録音時に弾いたギターソロがそのままOKテイクとなることがあったけれど、それはごく稀なことだった。
ヘビーメタルと言うジャンルは一つの楽器ごとに構築していくので、こういう録音の段取りを踏むバンドが多い。
逆に、ソウルやブルース、ジャズ、ヴォーカル物等のレコーディングは、すべての楽器を一斉に同時録音することが多い。
その方が音楽のグルーブが出ると言うのと、録音が早く済んで予算が抑えられると言うことがあるのかもしれない。
いずれにせよ、マックスは音決めでも神経を使い、各パートの録音にも細心の注意を払った。
あらゆるヴァージョン、あらゆるテイクを試すのだ。
マックスの辞書には「妥協」と言う文字が無いようにさえ思えた。

僕はバッキング・リズムレコーディングの間全くやることが無かった。
日本のメタルバンドの曲作りの手順として、まずはバッキングを作り、その音楽にメロディー(ハナモゲラを使って)を考えて、そしてそのメロディーを元に歌詞を考える場合が多い。
アメリカでレコーディングをして始めて知ったのだけれど、英語圏のバンドの多くは歌詞とメロディーを同時に作ることが多いようだ。
歌メロディーと言うか、ヴォーカルアレンジと言うか・・・
そもそも、このハナモゲラと言うのは日本人独自の発想のものかもしれない。
逆に考えても、日本人が日本語もどきのナンセンスな文(音?)を使って曲を作ることが無いのと同じだ。
実は、僕がハナモゲラで歌ったデモテープを一緒に仕事をしたアメリカのシンガー達は日本語の歌だと思っていたのだ!(笑)
「これ格好いいじゃない!ところどころ英語みたいに聞こえるし、これはもう英語にしないでこのまま歌えば?」と言われた。
その時、「いや・・・これはハナモゲラと言って、意味の無い歌詞を歌っていて・・・要するにスキャットみたいなもので・・・」と一生懸命説明するのだけれど理解してもらえなかった。
マックスはヴォーカルパートはバッキングパートが出来たらゼロから考えようとしていた。
僕はリズムセクションレコーディングの最初2~3日はスタジオで見学していたのだけれど、すぐに飽きてしまってホテルで待機することが多くなった。
今から思えば、レコーディングの一部始終を見学しておけば良かったと若干の後悔をしている。
ひぐっつあんは腕が上がらなくなるほどにドラムを叩いた。
マー君もたっかんも相当に厳しいレコーディングを経験したようだった。
ギターのバッキングが殆ど終わったところで、やっとマックスからスタジオに呼ばれた。
「ミック(僕はミックと呼ばれていた)歌詞のアイデアをもう一度見せてくれ、それと、一度音楽と一緒に何かアイデアを歌ってみてくれ」
(ぎぇ!!何か歌えと言っても・・・何も無いのですが・・・・)
取りあえずマイクの前に立って適当に歌ってみた。
数フレーズ歌ったところでマックスが言った
「OKミック・・・分かった・・・」
マックスは「どうすれば良いのか?」と言う表情で少し考え込んでいた。
マックスは日本から持ってきたデモテープを聞き、日本語詞を直訳したノートを眺めて決断をした。
マックスは心当たりのある地元のシンガーや作詞家に電話をして協力を要請。
その日の夜には数人のシンガー達がスタジオに来た。
みんな地元に住むプロのシンガー達だったけれど、僕には誰が誰だか知らない人達だった。
今でも頑張って思い出すのだが、全く思い出せないのだ・・
今から思えば、びっくりするような超有名なシンガーが来ていたかもしれない。
いや・・・多分・・・来ていたような気がする・・・・。
彼等は僕と挨拶も程々に、マックスと話し込んでデモテープと、日本語を訳したノートのコピーを持って帰った。
2~3日すると再び彼等が完成させた歌詞を持ってスタジオに来てくれた。
マックスは少し心配そうに「どうだ?この英語は難しいか?これを一度歌ってみるか?」と聞いてきた。
僕は歌詞を眺めながら興奮した!
と同時に、ひどく落胆した・・・・
何故なら、どう歌って良いのかまったく分からなかったからだ。
歌詞を読むことは出来ても、これを歌うとなると歌詞の譜割りやタイミングが皆目見当もつかなかった。
僕が歌詞を見ながら戸惑っていると、マックスが「ミック、これでは分からないよな!」と言って再びスタジオが凍りついた・・・・。
みんなこの事態にどう対処して良いのか・・・・お手上げ状態だった。
英語圏以外の歌手、英語が大の不得意な日本人ロック歌手による英語のヴォーカル録音・・・
ましてやヘビーメタルのヴォーカルパートなんて前代未聞だったから致し方あるまい。
「ちょっとミックの練習用に歌ってくれないか?」とマックスが歌詞を持ってきたシンガーに提案した。
「勿論だとも!!」幸いなことにシンガー達は気軽に快く引き受けてくれた。
シンガーの一人が言った「考えても見ろよ、俺が日本語で歌えと言われて出来ると思うか?これは偉大なるチャレンジだよ!!Kick Ass man! mick!(頑張れよミック!)」
彼等は一様に僕にとても同情的だった。
「ちょっとこのキーは高いな・・・」とか言いながら、シンガー達はガイドヴォーカルを録音して帰った。
オクターブ下で歌う人、ただリズムに合わせて歌詞を読むだけの人、色々いたけれど僕にはとても助けになった。
そのテープをホテルに持って帰って、部屋で何時間も練習した。
(LOUDNESS以外の人がこんなに力になってくれているんや・・・頑張らあかんな!)
僕はしばらく寝付けない長い夜を過ごした。
by loudness_ex
| 2010-03-21 15:54
